あたしの前に突然(とつぜん)現(あらわ)れた友人(ゆうじん)…。あたしは、その彼を見て凍(こお)りついた。だって…彼、死(し)んだはずよ。三日前にお葬式(そうしき)に行ったんだから…。それが、どうしてここに? なんであたしの前に現れたのよ!
死んだはずの彼は、あたしに向(む)かって言ったわ。
「わるいんだけどさぁ。君(きみ)にちょっと頼(たの)みたいことがあって…」
ちょ、ちょっと待(ま)ってよ。何なのよ。あたしは背筋(せすじ)に悪寒(おかん)が走(はし)った。あたしはいったん落(お)ち着(つ)こうと目を閉(と)じた。そして心の中で呟(つぶや)いた。これは、きっと夢(ゆめ)よ。悪(わる)い夢を見てるんだわ。だって、あたし…、彼とはそんなに親(した)しくないし…。むしろ、ただの顔見知(かおみし)りていどなんだから。頼みごとされるような関係(かんけい)じゃないはずよ。
あたしは呼吸(こきゅう)を整(ととの)えて目を開(あ)ける。そして…、ギャーッ!と悲鳴(ひめい)をあげてしまった。
「なんでいんのよ。あたしに付(つ)きまとわないで!」
「ごめんっ…」彼は優(やさ)しそうな笑顔(えがお)で言った。「君だけなんだ。僕(ぼく)が見えてるのは…」
そんな…。あたしは後悔(こうかい)した。最初(さいしょ)から見えないことにすればよかったのよ。あたしはため息(いき)をついた。あたしっていつもこうなんだ。面倒(めんどう)なことに巻(ま)き込(こ)まれて…。
「もう、落ち着いた? あのね、僕の彼女に伝(つた)えてもらいたいんだ。彼女、僕がこんなことになってるの知らなくて。きっと、僕のこと待ってると思うんだ」
「えーっ? それは…、重(おも)すぎるよ。それに、あなたの彼女なんて知らないし…」
<つぶやき>ここは一肌脱(ひとはだぬ)いであげましょうよ。あなたしかいないんだから。がんばって。
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