雇用システムの変化は日本の少子化に大きな影響を与えたが、その中でも注目すべきは、「若壮年の無業者が急激に増加した」ことである。
完全失業者は「仕事についておらず、仕事があればすぐつくことができる者で、仕事を探す活動をしていた者」(総務省統計局)を示す。
しかしながら、この時期は、失業者のみならず、「就意欲そのものを喪失して無業者となるケース」も増大した。
若年層において、就職難から就業をあきらめて無業となってしまうケースや、非正規雇用で職場に勤めたものの、短期間で辞めたり解雇に追い込まれたりして、無業者となるケースが増えたことが、非労働力人口比率の上昇の要因となった。
参考書籍:城 繁幸著 若者はなぜ3年で辞めるのか?~年功序列が奪う日本の未来~ (光文社新書)
一時的に「求職意欲を喪失」した人々も、その後雇用情勢が改善すると労働市場に参加していくことが多かった。2012年以降の景気回復期においても、45歳以上の男性や25~44歳の女性にはそのような傾向が見られたが、「25~44歳の男性」の場合は労働市場へ戻ってくる動きが弱く、この年代の男性は無業者にとどまり続けている状況にある。
全国で約26万世帯と推計されている「ひきこもり」の中にも、こうした人々がかなり含まれていると考えられる。「ひきこもり」とは、様々な要因の結果、就学や就労など社会的参加を回避し、6ヵ月以上にわたって家庭にとどまり続けている状態を指している。まさに、25~44歳の「ひきこもり」は、雇用システムの変化が生んだ結果の一つでもあった。
さらに、非正規雇用や無業者においては、未婚のまま親と同居し、親の被扶養者となる親同居未婚者(パラサイトシングル)が増加している。こうした親同居未婚者は、総務省統計研修所の調査分析によると、2000年代の初めは若年層(20~34歳) で増加したが、その後、壮年層 (35~44歳)において増加している。
2016年には親同居未婚者(パラサイトシングル) は288万人にのぼり、同世代の13%を占めており、これは、団塊ジュニア年代が若年層から壮年層に移行してきたことが要因とされている。このような動きは、 未婚率上昇リンクする動きであり、出生率の低下に深く関係している。
少子化2022(5) あまり目立たないパラサイトシングルの影響
少子化2022(5) あまり目立たないパラサイトシングルの影響