かつては秋田県内の美術館を、といっても秋田市にある県立美術館、秋田市立千秋美術館、横手市にある県立近代美術館程度である。前二者は年間パスポートを購入して頻回に観にいったが、COVID-19の蔓延で企画自体が後退したようで訪れる機会も少なくなった。今年は年間パスポートを購入しておらず、その都度入館料を払っている。県立近代美術館には今年はまだ訪れていない。
(1)木村伊兵衛写真展(県立美術館) 木村伊兵衛回顧展
昭和を代表する写真家・木村伊兵衛(1901~74年)の作品を集めた「生誕120年 木
村伊兵衛回顧展」。木村氏は昭和初期から、東京・下町を中心に、街角の人々を写真に収め続け、50歳のころからは秋田の農村で撮影を重ねた。現在の大仙市、旧大曲市で撮影した「秋田おばこ」(33年)は近年、本県のPRポスターに使われた。

(確かに美しい しかしこれは農作業の姿ではなかろう)
本展では、氏が残した133点を撮影地や時代、テーマなどで区分して展示。庶民の日常を記録した「昭和の列島風景」や、「秋田の民俗」などの六つの章があった。
古い写真展であり歴史の記録には良いが文献や写真集で確認できるからわざわざ出かけてみる値はそれほど大きくない、と思った。
(2)嶋田 忠 野生の瞬間展(千秋美術館)
嶋田忠氏 (1949- )は、カワセミ類を中心に鳥獣の写真家として知られている。神々しいまでの生命力をもつカワセミやアカショウビンを力強く捉えた作品から、「自然から学ぶ」意識と感性に裏打ちされた繊細な作品まで、その多彩な表現は高く評価されている。


本展では、鳥ごとの魅力が凝縮された一瞬を切り取り、野鳥の魅力を多くの人に伝え続けている嶋田作品の数々を見ることができた。
家内は野鳥の会会員である。その機関紙を通じ私も鳥の生態に興味が高まった。それを受けての観覧で、略満足した。
(3)川瀬 巴水展(県立美術館)
川瀬巴水(1883年- 1957年)は、浮世絵師、版画家。新しい浮世絵版画である新版画を確立した人物として知られる。近代風景版画の第一人者。日本各地を旅行し旅先で写生した絵を原画にした作品を数多く発表、「昭和の広重」などと呼ばれる。欧米で広く知られ、葛飾北斎・歌川広重等と並び称される。展示会には略満足した。

(4)松本明鏡展(秋田西武百貨店)
松本明鏡氏(1945-)は平成の大仏師と呼ばれる。氏の展示会には11年前にも開催されその時の印象が大きく今回も鑑賞した。
11年前、同氏が会場で語った「資材をじっと観察しているとその中に鎮座されている仏像が見えてきます。私はその像をノミで具現化しているに過ぎません」、と語った言葉が忘れられない。信仰心を背景にしているのだろうが実に謙虚に語られた。私などパソコン上の原稿用紙をいかに眺めても何も見えないし、アイデアも浮かんでこない。
今回は250点ほどの作品を見ることができ、略満足した。