私は空気人形。空っぽな、誰かの「代用品」。
10月5日、京都シネマにて鑑賞。是枝監督作品7作目の劇映画となります。実は私は5作を鑑賞していました。95年の「幻の光」が、監督の初めての作品とは知らず鑑賞していたんですよね。
本作は大人向けのファンタジー。結構リアルなSEI描写もあり、何とも言えない独特な世界に、観客を導いてくれます。ローケションは美しい街並とはほど遠く・・・。でもノスタルジックな雰囲気もあります。都会で生きる人たちの現実の風景がかなり詳細に描かれているところがまた何ともいえないです。
さてSTORY
川沿いの寂しい小さな町の古びたアパートで“持ち主”である秀雄(板尾創路)と暮らす空気人形(ペ・ドゥナ)は型遅れで空っぽの「代用品」。
ファミレスで働く秀雄は、いつも食事を2人分用意し、夜になると人形と風呂に入り、ベッドでプラネタリウムを見ながら語りかけ、SETUKUSUをする。
雨上がりのある朝、身支度する傍らで、人形は一度瞬きをした・・・・。
秀雄が出かけると、人形はゆっくりと立ち上がり、少しづつ歩いて窓際へと。
アパートの軒から垂れる雫を指先で触れると、「キ・・・レ・・・イ・・・」と呟いた。
初めて見る外の世界は美しく、人形に笑みがこぼれる。
誰もいない部屋でクローゼットを開け、鏡に映る自分の姿を不思議そうに見る。秀雄の買った洋服を次々と着てみる。そして選んだのはメイド服。服を着て、空気人形は、色々な人に出会う。
◎戻らぬ母を待つ小学生・萌(奈良木未羽)とその父・真治(丸山智己)
〇警察に名乗り出る未亡人・千代子富司純子
◎毎日毎日、千代子の相手をする交番のおまわりさん・轟(寺島進)
●フラフラと町出ればに出ては、大量の食材を買いこむ過食症のOL・美紀(星野真里)
◇老いを受け入れられず、執拗に若さを求め続ける会社の受付嬢・佳子(余貴美子)
◆迫りくる死の訪れを感じている、元高校国語教師の敬一(高橋昌也)
皆どこかに心に空虚を持つ、東京の住人たち。
その日、人形が最後に出会ったのは、レンタルビデオ店で働く純一(ARATA)だった。カウンター越しに目が合う。
レンタルビデオ店でアルバイトを始めた空気人形は、純一の心の中にどこか自分と同じ空虚感を感じつつ、日に日に惹かれていく・・・・。
店長鮫州(岩松了)はリストラされ、家族から見放された寂しい中年男だが、憎めない人柄。
常連客の浪人生・透(柄本佑)はDVDを探すふりをしてメイド姿の人形を目で追っている。普通に見えて、何処か空っぽな人間たちがここにも集まっていた。
そんなある日、店長は人形に質問した。「彼氏とかいるの?好きな男・・・・いるんでしょう?」
「いいえ・・・」人形が生まれて初めてついた嘘。心を持ったから、ついた嘘だった。
天気の良い日の公園のベンチ、敬一が空気人形に話しかける。
「カゲロウって知っているか?」身体の中は空っぽで、ただ産まれ死んでいくだけの生き物の“カゲロウ”の話。
空気人形は、神妙そうに自分も身体の中は空っぽで空気だけだと告白する。
「他にもいるのかしら?」 「私も同じだ、いまどきは、皆そうだろう。君だけじゃない」
誰もが空っぽな「代用品」ーーーー。
自分と同じ人形もたくさんいるのだと感じる人形。
純一から映画の知識を得て、仕事にも慣れてきたある日、人形はバランスを崩して棚から飛び出た釘に手を引っ掛けてしまう。手首が裂け、人形の身体から勢いよく吹き出す空気に驚いた純一。「見ないで・・・・」という人形の言葉を遮るように、お腹の空気穴から何度も息を吹き込んだ。
「もう・・・・大丈夫だから・・・・」息を荒げた純一は空気人形を抱き寄せる。高揚する空気人形。誰もいないビデオ店の床で、いつまでも抱き合う2人。人形は感じたことのない気持ちで満たされる
愛する人の息で満たされ、幸福感に包まれる空気人形は空気入れを捨てて一回限りの人生を生きる決意をする。歳をとることに迷いはない。
美しく見える世界。ボートに乗って風を感じ、水からの反射する光を浴び、太陽に手をすかしてみせる。喜びに満ち溢れる空気人形だったが・・・・。
家に戻ると秀雄とのSETUKUSUが待ち受けている・・・・。彼に抱かれた後、彼の横を抜け出して一人身体を洗い流すのだった。
板尾のキャラは苦手ですが・・・・。でもこの秀雄役はばっちりハマっていました。
私はSEI欲処理の「代用品」----。
そんなある日、新型の人形を見つけた!空気人形は秀雄に秘密を吐露する。「私、心を持ってしまったの。何で私なの?私、代用品なのよね?」
秀雄は驚き、動けなくなる。そしてこう言った。
「元の人形に戻ってくれへんか?ただの人形に。俺こういうの面倒くさいんや」
秀雄の言葉に深く傷つき、人形は家を飛び出す。秀雄が後を追ったが、人形は戻らなかった。
なぜ心を持ってしまったのだろう?誰が本当に自分を愛してくれるのだろう?人形は自問自答を繰り返す。
心を持ってしまった答えを探して、人形は自らの生みの親とも言える人形師・園田(オダギリジョー)に会いに行く。
園田は、傷ついた人形に何も聞かず「おかえり」と暖かく迎えてくれた。
園田は人形に回収された人形たちを見せた。それらの人形の表情が一体一体異なることを指摘する。そしてこの子たちにもきっと心があるはずだったと語る。
オダジョーの人形師、何かいいです。出番はわずかでしたが、インパクトがありました。
「君が見た世界は・・・・綺麗なものもあった?」
「うん」 空気人形は小さく頷いた。
「生んでくれてありがとう」 園田にそう言うと、人形は再び純一の元へ向かうのだったーーーー。
ラストがどうなるのか?気になっていましたが・・・・。それにしても人形と人間の恋の結末があまりにも悲しい(涙)
素顔のぺ・ドゥナは、ナチュラルな感じですね。
限りなく空気人形に近付けるために、メイクをしたような・・・。
「誰も知らない」「歩いても 歩いても」の是枝裕和監督が、「リンダ リンダ リンダ」のペ・ドゥナを主演に迎えて贈る官能と感動のヒューマン・ラブ・ファンタジー。業田良家の短編コミックを基に、ひょんなことから心を持ってしまった“空気人形”が様々な出会いを通して味わう感情の移ろいと、対照的に浮き彫りとなる現代人の孤独と空虚感を、ユーモアと赤裸々なEROTESIZUMUを織り交ぜつつ、切なくも繊細に描き出してゆく。
是枝監督
※印象的なシーンは空気人形のぞみが棚から落っこちて空気が抜け、純一が息を吹き込むところですね。ちょっとEROTISIZUMUな雰囲気ですが、良かった。「見ないで」と言うセリフも良いですね。
大人のファンタジーだけれど、男のファンタジーと言った方がいいかも・・・・?
(追記:他のブロガーさんの記事を読み、ちょっと違うような気がしました。)
メディア | 映画 |
上映時間 | 116分 |
製作国 | 日本 |
公開情報 | 劇場公開(アスミック・エース) |
初公開年月 | 2009/09/26 |
ジャンル | ドラマ/ロマンス/エロティック |
映倫 | R15+ |
私は「心」を持ってしまいました。
持ってはいけない「心」を持ってしまいました。
あなたの息で、私の カラダを 満たして…
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