銅版画制作の日々

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この自由な世界で●it`s a free World・・・・

2009-02-08 | 映画:ミニシアター

 名匠ケン・ローチが、久々にロンドンの片隅で描くのは、心震え、笑い、涙し、いつしか声なき者たちの声が聞こえる物語。

カンヌ映画祭でパルムドール大賞「麦の穂をゆらす風」から2年。久々のケン・ローチ監督の作品が公開されました。2月6日、京都シネマにて鑑賞してきました。

何と今回のキャストはほとんど無名の方ばかりです。主役のアンジー役のキルストン・ウェアリングは役者10年続けてきた人ですが、芽が出なかったらしいです。もう役者になるのをあきらめようと思っていたときに、この話がきたそうです。エージェントから電話をもらったときは、ただただ驚き!“本当なんですか!”と言うのがやっとだったそうです。

しかしそんな風には見えない堂々とした感じで、強くてたくましいシングルマザーを演じていました。

物語

場所はポーランド。イギリスの職業紹介会社が、移住希望の人たちを面接。面接官をしている女性はてきぱきした女性、彼女の名前はアンジー。その夜同僚や上司とバーに出かけたアンジーは昼間面接をした青年カルロに偶然出会う。2人は話が弾む。ところが途中で、同僚から呼ばれる。テーブルに移動したアンジーのお尻を上司の一人が触った。怒るアンジーはコップの水を浴びせた!日頃から彼らに辟易していたアンジーはキレてしまったのだ。

ロンドンに戻ったアンジーを待っていたのは、突然の解雇!仕事は完璧にこなしたのに何故?ちくしょう!あいつらだ。

ということで、彼女は自分で職業紹介所を立ち上げることを決意ルームメイトのローズを共同経営に誘う。ライセンスや税金のことをローズは心配したが、すべては軌道に乗れば何とかなるとアンジーは説き伏せた。

馴染みのパブのアンディにパブの裏庭を借りる。ここに移民労働者たちの集合場所にする段取りをつけ、“アンジー&ローズ職業紹介所”を開設した。

ローズ(ジュリエット・エリス)左 シェフィールド生まれ、マンチェスターのアーデンスクールで演劇を学ぶ。ここ数年テレビドラマへの出演が多い。

アンジー(キルストン・ウェアリング) 英国リー・オン・シー出身 31歳 女優

アンジーはシングルマザー。11歳になる一人息子ジェイミーがいた。今は両親に預けているが、いつか一緒に暮らしたいと思っている。そのジェイミーが学校で問題を起した!同級生の顎の骨を折った。同級生がアンジーの悪口を言ったことが原因らしい。母キャシーはジェイミーの問題はお前のせいだとアンジーを責めるが、父のジェフはアンジーに理解を見せながら、もっと息子のことを気にかけるように優しく諭す。

ジェイミー(ジョー・シフリート) ハートフォードシャー州出身 12歳、本作でデビュー

 

アンジーの父 ジェフ(コリン・コフリン)

イーストロンドン、カニングダウン出身 61歳 役者としての経験はまったくない。港湾作業員の第4世代。労組の組合員。

そんなある日。シャツ工場のトニーが、興味深い話をする。ある工場ではわざわざ偽造パスポートの不法移民を雇っているというのだ。理由は安上がりで従順で使いやすいからだと。しかも不法移民を何百人も入国させ仕事を斡旋したマフィアのボスが受けたお咎めは、ただの警告だけだったというのだ。やらない損はない。アンジーの気持ちは揺れる。

アンジーは、ポーランドの青年カルロに再会する。カルロはイギリスに来たものの、今は失業中。移民たちが集まるトレーラーハウスで暮らしている。この国も君も嘘つきだ!とアンジーを批難するが、彼女もクビになったことを知ると、心を許した。そして二人はカルロの部屋で愛し合う。

カロル(レズワフ・ジュリック) ポーランド出身、若手俳優 

アンジーとローズは、さらなる儲け話を思いつく。昼夜シフトの工場労働者に部屋を借りる際、ベッドも昼夜シフトにすれば、彼らの部屋代で月3000ポンドも儲かるのだ。最初はローズも喜ぶが、すぐに尻込みする。しかしアンジーはローズの心配も気にかけない。

ところが、アンジーたちの仕事にトラブルが出始めた。今日はもらう金が少ないと、移民たちがローズに食ってかかった!居合わせたカルロが通訳をしてことは落ち着いたものの、ローズの不安は大きくなる。そんなとき、いつもならアンジーは不法移民に仕事はないと追い返していたイラン人男性マフムードが気になり、彼の家を訪れた。火の気のない部屋には妻と2人の娘がいた。政治的迫害で国を追われ、またこのイギリスからも退去命令を受けているため、隠れ家に住んでいる。アンジーは自分のアパートに彼らを連れていく。彼女の気まぐれな行動にいっそう不安を募らせるローズ。アンジーはマフムードに、偽造パスポートで働く違法行為を教えるのである。

一方アンジーはジェイミーと暮らすために、地域の青少年委員会の面接を受ける。アンジーに息子を養育できるのか?ジェイミーは母アンジーと暮らしたいのか?結果は母親失格の烙印を押されず、ほっとしたアンジー。

ところがそんなアンジー、ついに大きなトラブルに遭遇・・・・。労働者を斡旋したデレクがマフィアに金を搾り取られ、アンジーに金が払えなくなったのである。給料をもらえない移民たちの怒りが爆発!!

カルロは母国に帰るとアンジーに告げる。イギリスはきつい場所だ・・・・。アンジーはカルロにこれまでのお礼とお金を渡そうとするも、彼は「お金がすべてじゃない」と断る。カルロは、最後に一緒の時間を過ごしたいと誘うが、アンジーは断る。

ある日アンジーは、突然通りすがりの男に殴りつけられる。金をもらっていない移民たちだった。ローズは労働者の部屋代の儲けでお金を払うべきだというが、アンジーは拒否。結局ローズは従う。2人で貯めた資金を元手に事務所を借りる。

そんな矢先、45人の移民労働者の調達という大きな仕事が舞い込む。「ウクライナで集める」と自信満々のアンジーだったが、その不法移民の宿泊場所をどうするかだった。思い余ったアンジー、1本の電話をかける。かけた先は、何と入国管理局。不法移民の居住を通報し、強制退去させるように仕組んだ。トレーラーハウスにはあのマフムードの家族が暮らしているというのに・・・・。アンジーの酷薄な行為、自分の幸福のためなら、この国で何をしても自由なの?ついにローズは彼女に訣別。

そしてある夜、ジェイミーが誘拐された・・・・・・。

解説

 英国の名匠ケン・ローチ監督が、自由化が進みますます追いつめられていくロンドンの労働者事情と移民問題をテーマに描く社会派ドラマ。労働者として使われることに限界を感じ、自ら職業斡旋のビジネスを始めたシングルマザーのヒロインが、一生懸命ゆえに次第にモラルを踏み外していく姿をシニカルに描き出す。(allcinemaより)

映画の背景を使って、ちょっとお勉強です。

国よって違う移民の就労と居住の権利

イギリスに入国する際、どんなときにビザが必要で、イギリスで働くにはどんな許可が必要か?

◎居住権を有する英国市民、およびEEA(欧州経済地域の加盟国民)は居住と就労には制限がない。

◎ポーランドの場合は2004年5月1日にEUに加盟した10カ国に含まれ、EUに新規加盟する国はEEAにも加盟しなければならないと定められているので制限なし。

●ウクライナはEEA加盟国ではなく、入国にはビザが必要な国に定められている。

●イランもウクライナと同じです。

ちなみに現在では、EEA以外の国民が6ヶ月以上イギリスに滞在するには、事前に入国及び滞在の許可を与えるエントリークリアランスを取得しなくてはならない。日本人の場合はこれにあたる。

移民労働者の受け入れ制度

イギリスは、2004年5月のEU拡大に際して、東欧の新規加盟国からの労働者に労働市場を開放した数少ない国の一つ。

ただ2004年以前のEEA加盟国には就労の制限がないが、新規加盟8カ国(10カ国中キプロス、マルタを除く)からの労働者に対しては労働者登録計画により管理が行われている。ポーランドはこれにあたる。

2004~2005のイギリス内務省の統計によると、2004年5月~2005年12月の登録者数は約32万9000人。政府が当初見積もっていた年間1万3000人という数字をはるかに上回っていた。ポーランドは全体の59%を占め、その数は群を抜いている。

この映画にも登場するイラン人のマフムードの場合は、ビザでの正規入国をしていないので、居住の時点から違法となる。そのため、アンジーは居住や就労に制限のないEEA加盟国であるイタリアやスペインのパスポートを用意したわけだ。

ウクライナ移民の場合はビザでの入国ではあっても、就労ビザでないという点ではやはり違法行為となる。

以上、少し居住や就労について、少しふれてみました。ややこしい話です。しかし制度や法をかいくぐってでも、働かなければならない人たちにとっては、イギリスのような国は必要なんですよね。その弱みにつけ込んだアンジーのおかれている状況も分からなくはないけど・・・・・。ここまでやるか!と思いました。生きるためには手段も選ばない。そんなアンジーのずるさやしたたかさにう~ん・・・・?

女ひとり生きていくのは一筋縄では行かないね。でも金をごまかして払わないのはちょっとどうかとは思いましたが・・・・・。

自由って言葉は魅力的だけど、その裏には大きなリスクもある。自由だから何をしてもかまわないという意識を持つのは危ない・・・・・。だから自由ほど怖いものはないと感じる。自己責任を持って生きなきゃいけないね。

 

撮影の合間。ケン・ローチ監督(左)

ポール・ラヴァーティ(脚本)中央

 

オフィシャル・サイト
http://www.kono-jiyu.com/

メディア 映画
上映時間 96分
製作国 イギリス/イタリア/ドイツ/スペイン
公開情報 劇場公開(シネカノン)
 

 

 

Comment (1)
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