2) 「景色」はどの様にして起こるか?。
景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を
使用中に起こる「景色」に分類できます。
③ 使用中に起こる「景色」。(前回の続きです)
完成した作品を使っていると、事件や事故、経年変化などにより、色々な現象が起こります。
これを逆手にとって「景色」として認める事もあります。
) 萩の七化け。
萩焼きは毛利家の藩窯として、桃山時代に開窯しました。主に茶陶を作っています。
茶碗、水指、花入などの他、茶の湯の懐石料理の食器として、各種の「向付」や「酒器」が
多く作られています。萩焼の焼き物は、使用するに従い、味わい深い表情を表す様になります
a) 貫入(かんにゅう)による「景色」。
・ 萩焼きの代表的な土は、防府市大道(だいどう)産の大道土が使われています。
小砂混じりの白い粘土で「ざんぐり」した柔らかい土です。その為やや焼き締まりが弱く
柔らかい焼き上がりと成っています。
・ 釉は長石に土灰や藁(わら)灰を混ぜた物が基本に成っています。その為、透明又は
白っぽい釉肌になります。
・ 素地に塗る化粧土や釉の掛け具合によって、白萩や強い赤味のある赤萩手になります。
・ 焼成時に素地と釉の収縮率の違いで、貫入(小さなひび)が入り易いです。
この「ひび」に茶渋などの汚れが付くと、より貫入は浮き出てき、趣ある「景色」となります。
特に湯飲み茶碗などに多く見られます。
b) 雨漏りによる「景色」。
萩焼は素地の焼き締まりが弱い為、内側に入れたお茶や酒などが長い年月を経て徐々に
表面に滲み出る事もあります。悪く言えば「汚れ」が付く事になります。全体に滲み出る
訳ではなく、部分的に現れますので、作品によって染み出す模様も変化します。
特に、抹茶々碗や向付などに多いです。勿論、汚れですので、嫌う人もいます。
) 割れや「ひび」の入った作品を補修する事で、「景色」が出来る場合があります。
使用中に割れや大きな「ひび」の入った焼き物は、廃棄処分になります。但し、著名な
焼き物や、二度と手に入らないと思われる焼き物は、補修(修理)して生き返らせる事が
あります。この補修の仕方によっては、むしろ補修前よりも良くなる場合があります。
焼き物が割れた場合、漆(うるし)を用いて接着します。漆のみで接着が済む場合も多い
ですが、更に他の材料で補強する物も多いです。
a) 重文 銘「馬蝗絆(ばこうはん)」茶碗、中国(南宋時代) 東京博物館蔵。
砧(きぬた)青磁の極上の名品です。高台周りに「ひび」があり、接着後更に鉄製の鎹
(かすがい)で数箇所留めてあります。この鎹が大きなバッタ(馬蝗)に見える事からこの
銘があります。この「留め金具」が大切な「景色」と成っています。
尚、この作品には次の様な逸話が残っています。
平安時代の平重盛が、中国の宋の育王山に黄金を寄進した返礼に、住持仏照禅師からこの
茶碗が送られてきます。後世、足利義政公の所持になりますが、「ひび割れ」を起こした
ので、中国に送り返し、同様の物と交換を依頼しますが、「もはや、この様な名器は得る
事ができず、鎹を打って送り返された」との事です。
尚鎹とは「コの字」型になった釘で、木材同士を繋げる働きをします。
b) 金継ぎ(きんつぎ)
漆で補修した部分に金粉を振掛け、「割れやひび」の跡を隠すと共に、金で補修した筋又は
帯状の金線が「景色」となり、補修前より良く見える場合があります。
尚、金粉は高価ですので、真鍮(しんちゅう)の粉等を使う事もあります。
こんな笑い話もあります。金継を補修しょうとして、取り除いた処、作品に「割れやひび」が
なかったとの事です。わざと金継ぎを行う事で、新たな「景色」を作り出す事で価値ある
物にする目的かも知れません。
・ 著名な金継ぎの作品。 重文 楽茶碗 銘「雪峰(せっぽう)」光悦作 畠山美術館蔵。
)その他
a) 火間(ひま)のある「景色」
火間とは、化粧土を柄杓で流し掛けした際、意図的に掛け残す方法で、主に楔(くさび)型
こ残します。これが「景色」になります。 上手の粉引(こひき)では、一つの約束事に
成っています。
・ 著名な火間のある茶碗: 粉引茶碗 銘「三好(みよし)」朝鮮
b) わざと口縁を欠き、「景色」を作る。古色付けによる「景色」
意図的に「景色」を作り出す、一つの方法です。完全な形のものより、不完全な形の方が
趣ある作品になる事もあります。焼成した物を歪ませる事は出来ませんが、部分的に破壊
する事は可能です。又、古い時代のものに見せ、掘り出し物の様な感じにする事もあります。
又、人為的に古色を付け「景色」を作り出している作品もあります。いずれも、偽者で偽作
ですので、騙されない様に注意する事です。
以上で「景色」の話を終わります。
景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を
使用中に起こる「景色」に分類できます。
③ 使用中に起こる「景色」。(前回の続きです)
完成した作品を使っていると、事件や事故、経年変化などにより、色々な現象が起こります。
これを逆手にとって「景色」として認める事もあります。
) 萩の七化け。
萩焼きは毛利家の藩窯として、桃山時代に開窯しました。主に茶陶を作っています。
茶碗、水指、花入などの他、茶の湯の懐石料理の食器として、各種の「向付」や「酒器」が
多く作られています。萩焼の焼き物は、使用するに従い、味わい深い表情を表す様になります
a) 貫入(かんにゅう)による「景色」。
・ 萩焼きの代表的な土は、防府市大道(だいどう)産の大道土が使われています。
小砂混じりの白い粘土で「ざんぐり」した柔らかい土です。その為やや焼き締まりが弱く
柔らかい焼き上がりと成っています。
・ 釉は長石に土灰や藁(わら)灰を混ぜた物が基本に成っています。その為、透明又は
白っぽい釉肌になります。
・ 素地に塗る化粧土や釉の掛け具合によって、白萩や強い赤味のある赤萩手になります。
・ 焼成時に素地と釉の収縮率の違いで、貫入(小さなひび)が入り易いです。
この「ひび」に茶渋などの汚れが付くと、より貫入は浮き出てき、趣ある「景色」となります。
特に湯飲み茶碗などに多く見られます。
b) 雨漏りによる「景色」。
萩焼は素地の焼き締まりが弱い為、内側に入れたお茶や酒などが長い年月を経て徐々に
表面に滲み出る事もあります。悪く言えば「汚れ」が付く事になります。全体に滲み出る
訳ではなく、部分的に現れますので、作品によって染み出す模様も変化します。
特に、抹茶々碗や向付などに多いです。勿論、汚れですので、嫌う人もいます。
) 割れや「ひび」の入った作品を補修する事で、「景色」が出来る場合があります。
使用中に割れや大きな「ひび」の入った焼き物は、廃棄処分になります。但し、著名な
焼き物や、二度と手に入らないと思われる焼き物は、補修(修理)して生き返らせる事が
あります。この補修の仕方によっては、むしろ補修前よりも良くなる場合があります。
焼き物が割れた場合、漆(うるし)を用いて接着します。漆のみで接着が済む場合も多い
ですが、更に他の材料で補強する物も多いです。
a) 重文 銘「馬蝗絆(ばこうはん)」茶碗、中国(南宋時代) 東京博物館蔵。
砧(きぬた)青磁の極上の名品です。高台周りに「ひび」があり、接着後更に鉄製の鎹
(かすがい)で数箇所留めてあります。この鎹が大きなバッタ(馬蝗)に見える事からこの
銘があります。この「留め金具」が大切な「景色」と成っています。
尚、この作品には次の様な逸話が残っています。
平安時代の平重盛が、中国の宋の育王山に黄金を寄進した返礼に、住持仏照禅師からこの
茶碗が送られてきます。後世、足利義政公の所持になりますが、「ひび割れ」を起こした
ので、中国に送り返し、同様の物と交換を依頼しますが、「もはや、この様な名器は得る
事ができず、鎹を打って送り返された」との事です。
尚鎹とは「コの字」型になった釘で、木材同士を繋げる働きをします。
b) 金継ぎ(きんつぎ)
漆で補修した部分に金粉を振掛け、「割れやひび」の跡を隠すと共に、金で補修した筋又は
帯状の金線が「景色」となり、補修前より良く見える場合があります。
尚、金粉は高価ですので、真鍮(しんちゅう)の粉等を使う事もあります。
こんな笑い話もあります。金継を補修しょうとして、取り除いた処、作品に「割れやひび」が
なかったとの事です。わざと金継ぎを行う事で、新たな「景色」を作り出す事で価値ある
物にする目的かも知れません。
・ 著名な金継ぎの作品。 重文 楽茶碗 銘「雪峰(せっぽう)」光悦作 畠山美術館蔵。
)その他
a) 火間(ひま)のある「景色」
火間とは、化粧土を柄杓で流し掛けした際、意図的に掛け残す方法で、主に楔(くさび)型
こ残します。これが「景色」になります。 上手の粉引(こひき)では、一つの約束事に
成っています。
・ 著名な火間のある茶碗: 粉引茶碗 銘「三好(みよし)」朝鮮
b) わざと口縁を欠き、「景色」を作る。古色付けによる「景色」
意図的に「景色」を作り出す、一つの方法です。完全な形のものより、不完全な形の方が
趣ある作品になる事もあります。焼成した物を歪ませる事は出来ませんが、部分的に破壊
する事は可能です。又、古い時代のものに見せ、掘り出し物の様な感じにする事もあります。
又、人為的に古色を付け「景色」を作り出している作品もあります。いずれも、偽者で偽作
ですので、騙されない様に注意する事です。
以上で「景色」の話を終わります。