2) 釉とは何か?
③ 釉が流れ落ちない理由(条件)。
作品に施釉する際、窯の棚板に接する部分の釉は落とす必要がありますが、底から上部に
掛けての数mmも落とす事になります。釉が流れ棚板まで落ちない様にする予防の為です。
落とす寸法は2~5mm程度が一般的ですが、釉の種類によっては、それ以上にする必要が
あります。なるべく底近辺まで、施釉したいのはやまやまですが・・・。
但し、釉に適度の流動性があるからこそ、作品全体に均等の釉が掛かる(広がる)事に
なります。又、素地が滑らか過ぎない事も大切で、釉が引っ掛かる面が必要です。
) 釉を落とす寸法は、釉の流動性と、釉の厚み、焼成温度、更には作品の形に左右されます
) 高温に成れば、どんな釉でも、粘性のある軟らかな液体状になります。
それ故、重力の作用により、大なり小なり流れ落ちます。
) 一番大な要素は釉の流動性です。流れ易い釉は、結晶釉や海鼠(ナマコ釉)と呼ばれる
釉などです。又、あえて流動性を持たせる為に、特殊な成分(酸化リチウム等)を釉に入れる
事もあります。棚板まで流れ落ちるのは、失敗ですが、ぎりぎりの処で止まり、雫(しずく)状
に垂れている抹茶茶碗などは珍重されます。逆に、流動性が乏しいと、施釉した状態のままの
表面が凸凹のガラス状になり、施釉時の指痕も残ります。
) 焼成温度も大きな要素です。所定の温度以上に成ると釉は流れ易くなります。
それで適度の焼成温度(範囲)が設定される訳です。
) 厚く施釉すると、流れ落ちる量は増え、結果的に流れる寸法も長くなります。
厚い釉は熔けると、大量の液体と成ります。それ故重力も強く働きます。
) 垂直の面が長い程、流れる寸法が長くなります。途中に堰き止める要素が無い為です。
即ち、流れ落ちない様にする為には、上記の事柄に注意する事です。
上記条件の詳細は、後日述べる予定です。
3) 釉に良し悪はあるか?
① 釉として失格なのは、鉛を含んだ釉です。現在では陶磁器に使用する事は、一部楽焼の
場合を除いて禁止されています。鉛が酸(酢酸=食酢)などで、溶け出し鉛中毒を起こす恐れが
あるからです。
② 基本的には、釉の良し悪しはありません。特に市販されている釉には、様々の色釉があり、
色々な結晶釉や光沢の有無、更には焼成温度にもバリエーショが存在します。
③ ご自分で調合した釉でも、色々な条件を変える事により、好みの釉に改良する事も可能です。
その為の解説本もある程です。
④ 欠陥のある釉であっても、釉の個性として適所に使う事で、生かせる事も稀ではありません。
むしろ、欠陥のある釉が今までに無い、表現効果を出すかも知れません。
・ 「窯変」と言われる現象は、釉が一定しない結果起こります。又、一定しない原因が中々解明
出来ない場合が多く、再現性に乏しい釉と言えます。
常に一定の品質を保つ必要がある、工業的製品には使用できませんが、陶芸家や陶芸
愛好家にとっては、楽しみの釉となります。
⑤ 但し、一窯を同じ釉で焼成する場合は、問題ありませんが、色々な釉を一緒に焼成する
場合は、かなり問題が発生すると思われます。そう言う意味では、他の釉と比較して取り
扱いの悪い釉であると言えます。
以上の様に、釉の良し悪しは一概に判断できませんが、単体の釉での善悪は存在しませんが、
最終的には釉の良し悪しは、使用する人の判断により決るとも言えます。
次回より、釉の各論を述べたいと思います。