1) 瀬戸黒とは。
室町時代以降美濃では、瀬戸と同様に天目茶碗が多く焼かれていました。
瀬戸黒は主に抹茶々碗の釉として使われる事が多いです。
瀬戸黒とは、瀬戸で焼かれた黒茶碗の事ですが、実際には美濃の窯で焼かれた物です。
① 引出黒(ひきだしくろ)。
) 窯の中の釉の熔け具合を確認する方法に、色見用の茶碗や陶片を鋏(はさみ)などで
挟み出すやり方があります。熱い窯から急に冷たい外気に晒されると、釉の中の鉄分が光沢の
ある黒色に変化します。この事を利用したのが、瀬戸黒の始まりです。
尚、窯の中で冷やす「置き冷まし」の方法でも、黒く発色しますが、引出す方がより鮮やかな
黒に成ります。それ故「引出黒」と呼ばれる事もあります。この方法は黒楽焼の技法にも
使われています。
) 色見で不要になった陶片や焼き損じた作品などは、窯の側(そば)にある「もの原」
と呼ばれる捨て場に捨てられます。桃山期に美濃で焼かれた無傷の完品は極く少なく、多くは
「もの原」で拾った物が多い様で、ここから「掘り出し物」の言葉が生まれたそうですが、
現在ではその「もの原」も掘り尽されてしまっています。
② 本格的に引出黒で、茶碗を焼き出すのは、室町時代後期から永禄年間頃と言われています。
天正(1573~1592年)の頃に盛んに焼かれた為、「引出黒」と同様に「天正黒」とも呼ば
れる事もあります。
)瀬戸黒の釉について。
鉄釉である天目釉より、鉄分を大目に調合しますが、大切な成分は「マグネシア」です。
「マグネシア」が少ないと、茶色に発色します。
・ 注:「マグネシア」は、タルク(滑石)から取ります。滑石を使う場合には焼滑石を
使います。
) 瀬戸黒の特徴。
a) 初期の頃は、「すっぽん口」の特徴のある天目茶碗が作られます。
b) 一般に瀬戸黒茶碗は、筒型の茶碗が多いです。高台は低く竹(又は木)箆(へら)を
使って、手で小さ目に仕上げています。
c) 「引出黒」の場合、鋏(はさみ)で挟んだ痕が付いています。これも見所(景色)の
一つになっています。
d) 土はややざんぐりした鉄分を含み、焼き上がりもくすんだ焦げ茶色をしています。
) 瀬戸黒の名品。
瀬戸黒茶碗は、美濃の小名田で焼かれ始まり、浅間(せんげん)、大萱の窯へと移ってい
きます。最も優れた作品は大萱で焼かれた物です。
a) 瀬戸黒茶碗 銘 小原木: 大萱、桃山時代、瀬戸黒を代表する、筒型の茶碗です。
高さ 8.8cm、口径 10.2cm、高台径 5.0cm
千利休の所持していた物と、伝えられています。
b) 瀬戸黒半筒茶碗 銘 小原女: 牟田洞窯又は窯下窯、桃山時代、
作為の少ない、大振りな作品です。
高さ 8.7cm、口径 13.3cm、高台径 5.8cm
c) 瀬戸黒筒茶碗 銘 冬の夜: 17世紀始め。
高さ 10.0cm、口径 10.0cm、高台径 5.0cm
裾(すそ)がやや張った筒茶碗です。素直に轆轤挽きされ、箆目はほとんどありません。
瀬戸黒と同じ様に引出黒の茶碗に、織部黒があります。但し、器の形に大きな違いがあります。
制作年代は瀬戸黒よりも後世の、慶長、元和の時代で、久尻の元屋敷で作られています。
以下次回(織部)に続きます。
室町時代以降美濃では、瀬戸と同様に天目茶碗が多く焼かれていました。
瀬戸黒は主に抹茶々碗の釉として使われる事が多いです。
瀬戸黒とは、瀬戸で焼かれた黒茶碗の事ですが、実際には美濃の窯で焼かれた物です。
① 引出黒(ひきだしくろ)。
) 窯の中の釉の熔け具合を確認する方法に、色見用の茶碗や陶片を鋏(はさみ)などで
挟み出すやり方があります。熱い窯から急に冷たい外気に晒されると、釉の中の鉄分が光沢の
ある黒色に変化します。この事を利用したのが、瀬戸黒の始まりです。
尚、窯の中で冷やす「置き冷まし」の方法でも、黒く発色しますが、引出す方がより鮮やかな
黒に成ります。それ故「引出黒」と呼ばれる事もあります。この方法は黒楽焼の技法にも
使われています。
) 色見で不要になった陶片や焼き損じた作品などは、窯の側(そば)にある「もの原」
と呼ばれる捨て場に捨てられます。桃山期に美濃で焼かれた無傷の完品は極く少なく、多くは
「もの原」で拾った物が多い様で、ここから「掘り出し物」の言葉が生まれたそうですが、
現在ではその「もの原」も掘り尽されてしまっています。
② 本格的に引出黒で、茶碗を焼き出すのは、室町時代後期から永禄年間頃と言われています。
天正(1573~1592年)の頃に盛んに焼かれた為、「引出黒」と同様に「天正黒」とも呼ば
れる事もあります。
)瀬戸黒の釉について。
鉄釉である天目釉より、鉄分を大目に調合しますが、大切な成分は「マグネシア」です。
「マグネシア」が少ないと、茶色に発色します。
・ 注:「マグネシア」は、タルク(滑石)から取ります。滑石を使う場合には焼滑石を
使います。
) 瀬戸黒の特徴。
a) 初期の頃は、「すっぽん口」の特徴のある天目茶碗が作られます。
b) 一般に瀬戸黒茶碗は、筒型の茶碗が多いです。高台は低く竹(又は木)箆(へら)を
使って、手で小さ目に仕上げています。
c) 「引出黒」の場合、鋏(はさみ)で挟んだ痕が付いています。これも見所(景色)の
一つになっています。
d) 土はややざんぐりした鉄分を含み、焼き上がりもくすんだ焦げ茶色をしています。
) 瀬戸黒の名品。
瀬戸黒茶碗は、美濃の小名田で焼かれ始まり、浅間(せんげん)、大萱の窯へと移ってい
きます。最も優れた作品は大萱で焼かれた物です。
a) 瀬戸黒茶碗 銘 小原木: 大萱、桃山時代、瀬戸黒を代表する、筒型の茶碗です。
高さ 8.8cm、口径 10.2cm、高台径 5.0cm
千利休の所持していた物と、伝えられています。
b) 瀬戸黒半筒茶碗 銘 小原女: 牟田洞窯又は窯下窯、桃山時代、
作為の少ない、大振りな作品です。
高さ 8.7cm、口径 13.3cm、高台径 5.8cm
c) 瀬戸黒筒茶碗 銘 冬の夜: 17世紀始め。
高さ 10.0cm、口径 10.0cm、高台径 5.0cm
裾(すそ)がやや張った筒茶碗です。素直に轆轤挽きされ、箆目はほとんどありません。
瀬戸黒と同じ様に引出黒の茶碗に、織部黒があります。但し、器の形に大きな違いがあります。
制作年代は瀬戸黒よりも後世の、慶長、元和の時代で、久尻の元屋敷で作られています。
以下次回(織部)に続きます。