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わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物の着物(色彩)51 中世の美濃窯 5(瀬戸黒)

2014-04-07 22:23:55 | 陶磁器と色彩
1) 瀬戸黒とは。

 室町時代以降美濃では、瀬戸と同様に天目茶碗が多く焼かれていました。

 瀬戸黒は主に抹茶々碗の釉として使われる事が多いです。

 瀬戸黒とは、瀬戸で焼かれた黒茶碗の事ですが、実際には美濃の窯で焼かれた物です。

 ① 引出黒(ひきだしくろ)。

  ) 窯の中の釉の熔け具合を確認する方法に、色見用の茶碗や陶片を鋏(はさみ)などで

   挟み出すやり方があります。熱い窯から急に冷たい外気に晒されると、釉の中の鉄分が光沢の

   ある黒色に変化します。この事を利用したのが、瀬戸黒の始まりです。

   尚、窯の中で冷やす「置き冷まし」の方法でも、黒く発色しますが、引出す方がより鮮やかな

   黒に成ります。それ故「引出黒」と呼ばれる事もあります。この方法は黒楽焼の技法にも

   使われています。

  ) 色見で不要になった陶片や焼き損じた作品などは、窯の側(そば)にある「もの原」

   と呼ばれる捨て場に捨てられます。桃山期に美濃で焼かれた無傷の完品は極く少なく、多くは

   「もの原」で拾った物が多い様で、ここから「掘り出し物」の言葉が生まれたそうですが、

   現在ではその「もの原」も掘り尽されてしまっています。 

 ② 本格的に引出黒で、茶碗を焼き出すのは、室町時代後期から永禄年間頃と言われています。

   天正(1573~1592年)の頃に盛んに焼かれた為、「引出黒」と同様に「天正黒」とも呼ば

   れる事もあります。

  )瀬戸黒の釉について。

    鉄釉である天目釉より、鉄分を大目に調合しますが、大切な成分は「マグネシア」です。

    「マグネシア」が少ないと、茶色に発色します。

   ・ 注:「マグネシア」は、タルク(滑石)から取ります。滑石を使う場合には焼滑石を

     使います。   

  ) 瀬戸黒の特徴。

   a) 初期の頃は、「すっぽん口」の特徴のある天目茶碗が作られます。

   b) 一般に瀬戸黒茶碗は、筒型の茶碗が多いです。高台は低く竹(又は木)箆(へら)を

     使って、手で小さ目に仕上げています。

   c) 「引出黒」の場合、鋏(はさみ)で挟んだ痕が付いています。これも見所(景色)の

     一つになっています。

   d) 土はややざんぐりした鉄分を含み、焼き上がりもくすんだ焦げ茶色をしています。

  ) 瀬戸黒の名品。

   瀬戸黒茶碗は、美濃の小名田で焼かれ始まり、浅間(せんげん)、大萱の窯へと移ってい

   きます。最も優れた作品は大萱で焼かれた物です。

  a) 瀬戸黒茶碗 銘 小原木: 大萱、桃山時代、瀬戸黒を代表する、筒型の茶碗です。

   高さ 8.8cm、口径 10.2cm、高台径 5.0cm

   千利休の所持していた物と、伝えられています。

  b) 瀬戸黒半筒茶碗 銘 小原女: 牟田洞窯又は窯下窯、桃山時代、

   作為の少ない、大振りな作品です。

   高さ 8.7cm、口径 13.3cm、高台径 5.8cm

  c) 瀬戸黒筒茶碗 銘 冬の夜: 17世紀始め。

   高さ 10.0cm、口径 10.0cm、高台径 5.0cm

   裾(すそ)がやや張った筒茶碗です。素直に轆轤挽きされ、箆目はほとんどありません。

 瀬戸黒と同じ様に引出黒の茶碗に、織部黒があります。但し、器の形に大きな違いがあります。

 制作年代は瀬戸黒よりも後世の、慶長、元和の時代で、久尻の元屋敷で作られています。

 以下次回(織部)に続きます。  
  
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