わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物の着物(色彩)21 無彩色20(須恵器2)

2014-02-27 21:38:54 | 陶磁器と色彩

4) 須恵器を作る環境。

 ① 須恵器の生産には、高温に耐える粘土と燃料の薪(まき)が多量に必要になります。

  ) 従来の土器制作では、極端な話加工し易い粘土質であれば、余り土質を選ぶ必要も無く、

    手近な土を利用すれば良かったのですが、須恵器の様に1000℃以上の高温(?)で焼成する

    となると、土質を選ぶ必要があります。

  ) 海成粘土と水性粘土。

    粘土には海成粘土と水性粘土の二種類に分類されます。

    a) 海成粘土は耐火性が劣り、1000℃を超えると形が崩れ、表面がケロイド状に熔解し

      海綿状になりますので、土師器の焼き物として使う事が出来ません。

      原因は、粘土に塩分が含まれている為です。

    b) 水性粘土は、淡水(真水)の湖や川の底に溜まった粘土層などで、1000℃以上でも

      変形や熔解現象は起きません。それ故、須恵器にはこの粘土が使われます。

    c) 海成粘土と水性粘土の区別。

     イ) 粘土の色の違い。 

       海成粘土層は黒灰色~暗灰青色をしています。淡水成粘土層は緑青色をしています。  

       但し、地表の空気に長く晒された場合には、いずれも表面が白っぽくなっています。

     ロ) 海成粘土は酸性で、淡水成粘土はアルカリ性になっています。

       粘土を水に溶かし、pH(ペーハー=酸性、アルカリ性の度合い)や電気伝導度を測定

       すると判明します。

     ハ) 海成粘土層のあるところは、塩分を含む為、中々雑草が生えないとの事です。

    d) 粘土の採掘。

      須恵器に適する粘土は、必ずしも容易に手に出来た訳では有りません。

      須恵器を焼いた窯跡近くには、粘土採掘坑や粘土土坑跡が数多く存在しています。

      粘土の採掘には、土木工事の様に、山肌に道具を用いて横穴を掘った跡が見られます。

      又、採掘場所の近くに、水簸(すいひ)したと思われる場所(設備)の存在する場合も有り

      ます。但し、須恵器に使われた粘土が、全て水簸されていたと言う証拠は無いとの事です。

     イ) 粘土を採掘する専業職人も存在していた可能性もあります。

        即ち、粘土の選定が出来る経験者が先頭に立ち、採取可能の粘土層を見付けだし、

        更に、採取の可能性を検討した後に採掘に取り掛かる事になります。

     ロ) 横穴の坑道の長さは5~10m程度で、入り口の幅は約1.5mの物が多いようです。

        坑道の奥は円形に広がりを持ちます。 更に、坑道から垂直方向に直径2~3m深さ

        0.5m程度の竪穴が掘り下げられた状態が確認できます。

     ハ) 上記の様な採掘場所は、同じ山に十数個存在する場所も有ります。

        それだけ粘土の需要があり、又粘土の層が薄い事になります。

  ② 窯は半地下式の窖窯(あながま)が使われています。完全な地下式の窯は少ないです。

    窖窯は良い土の出る所に窯を築く事になります。又水性粘土の上に窯を築く必要があります。

    窯の温度が1200℃を超える場合もありますので、熱に強くなければなりません。

   ) 半地下式とは、斜面の傾斜角度を10~30度位にし、窯の底面部を船底風に掘り込み

     窯の断面を蒲鉾状にし、両側の土を盛り上げた側壁、更に粘土で天井を付けた構造に

     なっています。 窯の奥行き(長さ)は5~10m程度の物が多い様です。

     風雨を避ける為、屋根があったはずです。

   ) 窯の構造。

     基本的な構造は、焚口(たきぐち)、燃焼部、焼成部、煙道部で、特に煙突はありません。

     当然スペース的には、焼成部が一番広いです。天井部には煙出しの小穴が空けられていま

     した。 焚口は風が入る方向に開けられ、特に強い季節風が吹く方向に向いています。

     7世紀以降の窯では、底面が階段状に作られた窯もありました。

   ・  尚、現在でも窖窯は、無釉の焼締陶器を焼く窯として圧倒的人気を博しています。

     その構造は須恵器を焼く窯とほぼ同じですが、現在では壁材に耐火レンガを使用し、煙突を

     付け、ダンパーやドラフトの機能を持たせ、自然の風では無く煙突の引きの強さで、燃焼を

     コントロールしています。

   ) 燃料に付いて。

以下次回に続きます。

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