3) 化粧土の使い方。
② 粉引(こひき)について。 粉引については、以前にも取り上げていますので、話が重複するかも
知れませんが、ご了承して下さい。
色の付いた素地の表面に化粧土を掛ける場合、刷毛塗りや流し掛けでは、丁寧に仕上げたと
しても、塗った痕が刷毛目や流れと成って残ってしまいます。
作品全体に同じ厚みの化粧土を掛けたり、塗った痕を残さない方法に粉引(こひき)の技法が
あります。
) 粉引とは。
器の表面に化粧土を均一に塗る方法ですが、泥漿(でいしょう)した化粧土が入っている容器の
中に、作品を漬け込み(ずぶ漬け)化粧を施す方法で、作品(器)の内側は柄杓などで流し
込んで化粧します。古来から用いられている技法で、粉を引いた様に見える事から、この名前が
付けられたと言われています。
) 粉引の問題点。
素焼き後に施す粉引は、素焼き用の化粧土を使えば、問題は起こりませんが、素焼き後と生の
状態での粉引では、断然生の状態に施す方が見た目にも優れいます。
但し、生(半乾燥)の状態で、粉引を行うと何らかの問題を起こし、その予防に苦心します。
a) 粉引の一番の問題は、化粧土を付けた直後、又は数分後から作品が徐々に崩壊する事です
原因は、素地が水分を含み膨張して、亀裂を起こし破壊するからと言われています。
b) 化粧土を塗る場所や範囲、更には塗る順序によって壊れ方が変わりますので、その判断が
重要に成ります。
c) 作品の崩れが無くとも、化粧土の「剥がれ」の問題が発生し易いです。
) 問題の解決方法。
素地の種類と素地の乾燥度合い、漬ける時間、化粧土を掛けた後の処理(環境)など多くの
要素が関係しています。
a) 粗めの素地は水分吸収量が大きく、肌理(きめ)細かい素地では、掛けた後の乾燥が
遅くなります。水分吸収量が多いと、壊れる確立が高くなります。
b) 素地の乾燥が進んだ作品は、水分の吸収量が多くなり化粧土は厚くなり易いです。
厚く掛かった化粧土は中々乾燥しませんので、素地中に水分が滞る事になります。
それ故、素地の乾燥が遅くなり作品が壊れ易くなります。
c) 化粧土を塗る範囲と順序も大切です。
作品の全体、外側のみ、内側のみの三通りの方法が考えられます。
イ) 器の外側のみに塗るのが一番安全です。
化粧土を塗った所は水分を吸収し膨張しますが、外側が膨張する場合には、内側への
力は素地を圧縮する(内径を小さくする)方向に働く為、影響は少なくなります。
・ 高台部分を持ち、口縁を下にして容器に「ずぶ漬け」します。化粧土の濃さと漬ける秒数が
多くなれば、化粧土は厚くなりますが、厚い事も問題になります。
理想的には、やや薄めの土で2~3秒程度漬けて引き上げる事です。
ロ) 内側にのみ塗る場合が一番危険です。
内側を塗ると素地が膨張して外側に圧力が掛り、外側表面が広がる力で、亀裂が入り、
結果的には作品を破壊する事に成ります。
・ 内側のみに塗りたい時には、外側も水刷毛で濡らし、やや弾力性を持たせておくのも一つの
予防方法です。
ハ) 内外の両方に化粧土を塗りたい場合には、外側から先に塗り、その後内側を塗ります。
又は内外を同時に塗りますが、水分吸収が多くなり、乾燥も遅くなりますので、短時間で
塗る必要があります。更に乾燥を早くする為に、ドライヤーなどで強制的に乾燥させる
事です。天気の良い日、空気が乾燥した日を選ぶのも良い方法です。
d) その他の解決方法。
以下次回に続きます。