現代では、陶芸家と呼ばれる人々は、数千とも数万人とも言われる程です。
従来ですと、昔より続く限られた窯場を中心に活躍していましたが、現在では、雪の降る極寒の北海道
や東北、北陸などに千人単位の陶芸家が住み着き、活動しています。
冬季でも暖房が行き届いている為、以前なら不向きな場所での、陶芸活動も可能に成っています。
現在では、我が国の何処の地でも陶芸活動は可能です。
このシリーズを終わるに当たり、現在の陶芸事情を考えて見たいと思います。
1) 土が自由に手に入る様に成った事。
昔ならば、地元の土を使う事が必要で、良い土の産出する場所に窯を築き、作陶する必要が
ありましたが、現在では好みの土を遠方より取り寄せる事が可能に成っています。
勿論、地元の土を見出しその土(又はブレンドした土)を使って活動している人も多いです。
2) 作る作品について。
) 陶芸を趣味にしている方ならば、自分の好きな様な作品を作れば良いのですが、焼き物で
生計を立てるとなると、自分の好みの物のみを作っている訳にはいきません。
勿論、超売れっ子作家ならば、ある程度自分好みの作品で、生計を立てる事も可能でしょうが
その様な方は、ほんの一握りの作家に限られます。
) 一般的には日常使用する食器類が多く作られます。この分野には量産された安価な
焼き物が「ひしめいて」います。手造りの特徴を生かした、ある程度の特色ある絵柄、文様、
色(釉)で勝負する事に成ります。
茶道が盛んな我が国では、茶道具やそれに伴う懐石料理用の器も、一定の需要がある様で
茶道具を専門に作っている方も多いです。
) 日用品の中でも、酒気類や花入(花瓶)なども、ある程度の需要が有りますが、それらは、
薪による焼成、即ち登窯や窖窯(あながま)で焼成した、焼き締め陶器です。
焼き締め陶器は、施釉した陶器より人気も高く(作る者も使う人も)、より高値を付ける事が
可能です。 特に備前焼などは、人気がある有名作家では、ぐい呑みでも数万円~数十万円
の値が付く事も稀では有りません。更に壷などの大物に成ると数百万の値さえ付きます。
) 現在主流に成っているのは、窖窯による焼成で、以前主流であった登窯は、共同窯と
して使われた場合が多く、個人の窯として使用するには容積が大き過ぎる為、ほとんど
使用されなくなっています。但し、薪で焼成する為には、環境問題も有って、ある程度設置
場所が制限される為、人里離れた山の中や、山里に築く事に成ります。
注: 窖窯(あながま)とは、トンネル状の地下式又は半地下式の窯で、斜面を利用して、焔の
引きを強くし、高温を得る窯です。主に古代から中世にかけて作られ、土中を堀抜くか、
斜面に溝を堀り、天井を被せた構造になっていますが、現在では、耐火レンガを利用して
築いています。自然釉が掛り、灰被りや胡麻(ごま)などの景色や窯変などが発生し、
予想だにしない良い景色の作品が、出来上がるの事が多いです。
3) オブジェ的な作品や、展覧会用の作品について。
) オブジェ的な作品は、一部美術館などでお買い上げに成ったとしても、一般的には商品的
価値が認められる事は稀です。即ち、作品が大き過ぎて一般家庭で設置するスペースも有り
ませんし、美術的価値が有っても、単なる「お飾り」でしかない為です。
その為、若い頃主に、オブジェを作っていた方も、やがて年齢と共にオブジェ的作品から離れて
いくのが普通です。
) 展覧会用の作品にも同じ様な事が言えます。
公募展などで入選する為には、ある程度の大きさのある見栄えの良い作品でなければ
なりません。一般家庭では大き過ぎる作品です。
但し、展覧会用の作品は美術館などで買上げとなる以外は、販売する目的で作る訳では
なく、入選や賞を受賞する事に主眼が置かれます。入選や受賞がその人の経歴と成って
後々有用に作用すると考えるからです。但し、入賞したからと言って必ずしもその人の作る
他の作品の価値が上がる又は販売増に繋がるとは限りません。
以下次回に続きます。