尾道駅から線路沿いに2号線を東に1kぐらい行くと「千光寺ロープウェイのりば」の標識がある。山陽本線のガードを潜ると駐車するスペースもない所にある小さな三階建ての一階に小さな駅の売店みたいな所が観光案内所兼ロープウェイ切符売り場だった。ロープウェイは高さ140m位の小高い山の山頂までを3分で結んでいる。
山頂の駅から高低差50mほど急な石段を降りたところに大宝山権現院千光寺がある。寺伝によれば大同元年(806)、開基は弘法大師で中興は多田満仲と伝えている。ロープウェイはガラガラだったのに山頂にある展望台や千光寺には大勢の観光客がいた。みな石段を登って来たのかと思ったら山の裏手まで車で登って来られるとのことだった。
千光寺は崖にへばりつくように建てられたお寺で、ロープウェイから唐づくりの鐘楼の横の大岩の上に丸い球が見えた。この大岩が玉の岩または烏帽子岩と呼ばれ、大岩の頂に穴があり、この穴が光を放つ宝玉があった跡だと言われている。現は岩の頂に宝玉の代わりに玉を置いているという。平成11年に高さ約7mの岩に直径約2mの円形が削られている岩が見つかった。漆喰を塗りこめたように白い円形のある岩を鏡岩とよんでいる。
地元の人に「玉の岩伝説」を聞いた。昔、ここの光る石があって、夜になると鏡岩に反射し海を照らし、灯台の役目をしていた。この玉の岩を異国人が盗んだが、海に落としてしまった。玉の岩が沈んだところを「玉の浦」と呼ぶようになったという。大宝山(千光寺山)、摩尼山(西国寺山)、瑠璃山(浄土寺山)を尾道三山と呼んでいる。地理院地図には浄土寺山しか記載がないが、昔は各山が海に迫り、山の尾根伝いの道しかなく、「山の尾の道」から「尾道」の地名が付いたと言われている。千光寺は海抜約100mの所にあり、眼下に尾道の町があり、正面に向島が遠望できる。鏡岩は真東を向いており、太陽に反射したら正面の向島のどの辺を照らすのだろうと思いながら本殿に行く。
崖にへばりつく様に千光寺が建てられていてあたかも山岳信仰のお寺みたいだったが本殿に入って驚いた。ここでお寺のお守りやお札を売っているおばちゃん達の売り込みのうるさいこと事、おびただしい。売上が歩合なのか、商売熱心なのか分からなかったが、山岳信仰など吹き飛んでしまった。早々に退散する。急石段を今度は50mほど登って、ロープウェイで降りた。
西國寺に向かう。西國寺山の中腹にあり山号は摩尼山、院号は総持院、寺伝によれば天平年間(729~749)、行基創建と伝えられ、治暦二年(1066)に本堂炎上、永保元年(1081)、白河天皇の勅命により再建されたという。
境内に比較的新しい丸い穴(宝珠?)があったので、さっそく覗いてみる。向島が見えた。
尾道三山あるお寺はいずれも東側を向いているので、正面に向島が見えることになる。穴から向島の何を見させようとしているのだろうか。安芸国の日本海側は出雲国、出雲大社から西國寺を結んだ延長線上に向島の何か構築物があったら面白いと思う。戻ったら地図で調べることにする。
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