ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

この道はいつか来た道。けれど断じて再び歩んではならない道。秘密保護法は決して通してはならない道!

2013年11月11日 | 日本とわたし


を紹介させてもらいます。

このページでは、特定秘密保護法案というものが、どういうものであるかが、とても分かりやすく解説されています。
膨大な量なので、ここにすべてを載せることはできませんが、ぜひ、時間を作って、PART1の内容を読んでください。
太文字のタイトル、要約文だけでも、この法案がどれほど恐ろしく愚かしいものかがよくわかります。

これから、PART2の、『秘密保護法がもたらすもの』を、何回かに分けて(ブログ記事の文字数制限のため)転載させていただきます。

↓以下、転載はじめ

【1】秘密保護法と有事法制 

1 戦争法のなかの秘密保護法

 
秘密保護法案は、さまざまな問題をはらんでおり、広範な分野に深刻な影響を与えるものであるが、
その「本籍」はあくまで、戦争法・軍事法の領域にある。
 
この国の現在の戦争法は、アフガン戦争・イラク戦争を背景に、2003年から2004年にかけて強行された有事法制が、基本となっている。
 
有事法制は、
① 基本法制=武力攻撃事態法
② 作戦・兵站法制=自衛隊法、特定公共施設利用法、船舶検査法、捕虜法、人道法等
③ 米軍サポート法制=米軍支援法、後方支援・物品・役務協定(ACSA)
④ 後方構築法制=国民保護法
という体系をもっている。

この有事法制の眼目は、地方自治体と民間企業を戦争に組み入れるとともに、
国民を、動員(徴用・徴発)と保護(避難など)の両面で組み込み、しかも、平時からそのための態勢を整えるところにある。
小泉純一郎首相(当時)が、ことあるごとに、「備えあれば憂いなし」と唱えたのは、そのためである。
 
当初は、「武力攻撃事態」(=戦争)のみを対象としていた有事法制は、
制定過程で、「テロ」などの「緊急対処事態」が追加された結果、軍事と治安の領域にまたがる法制となっている。
国民保護計画にもとづいて、「ゲリラ部隊の上陸(=武力攻撃事態の類型)」だけでなく、
「爆破テロ(=緊急対処事態の類型)」を想定した、演習・訓練が繰り返されている
のは、そのためである。
 
このことは、軍事と治安の領域にまたがって、「平時からの備え」を構築する有事法制と、
軍事・外交・治安にかかわる情報を、平時・有事を問わず、「特定秘密」として秘匿を強制する秘密保護法が、完全に重なりあっている
ことを示している。
 
ところで、有事法制が強行される過程で、「軍機保護」や秘密漏えい等による国民処罰について、論議が交わされることはなかった
有事法制に、新たな「秘密保護」が組み込まれていなかったことによる。
「国民の自主的協力で安全を守る」ことをうたい文句にした、有事法制を推進する上で、
政府権力と「軍部」が、情報を独占する「秘密保護」を持ち出すことは、「禁句」だったからに違いない。
 
10年を経て登場した秘密は、戦争法=有事法制体系に、メディアや国民、国会や裁判所に沈黙を強いたまま、戦争に突き進む「弾圧・鎮圧の武器」をつけ加えるのである。


2 秘密保護法と国民保護
 
秘密保護法が加わった有事法制のもとで、国民保護や住民の安全は、どのように扱われるか。
このことは、法案と国民保護法を読み比べれば、明らかになる。
 
法案に加えられた情報管理・管制システムは、「特定秘密」を指定する主体や、提供できる対象を、厳しく制限している
「特定秘密」の指定は政府機関に限られ、政府機関から提供を受けて「特定秘密」を保有できるのは、
他の政府機関や警察、同質の秘密保護システムをもった外国、契約によって秘密を扱う適合事業者などである。
 
この情報管理・管制のシステムから、警察を除く地方自治体の機関は、完全に除外されている
法案には、「地方公共団体」なる言葉は、まったく登場しないのである。
地方自治体を、「特定秘密」と完全に遮断する法案の構造は、地方自治体の役割や住民の安全との関係で、深刻な問題を投げかけることになる。
 
武力攻撃事態法や国民保護法によって、地方自治体は、「住民の生命、身体及び財産の保護」(事態法7条)を担う機関とされ、
住民の避難などの対処措置は、自治体職員と消防が担当することになっている。
地方自治体や消防が、住民の避難などを適切に行うためには、
武力攻撃・ゲリラ攻撃(武力攻撃事態)や爆破テロなど(緊急対処事態)の、被害や対抗措置についての情報が、迅速かつ適切に伝達されねばならない。

 
国民保護法による、はじめての実働演習だった「美浜原発・テロ対処訓練」(2005年11月27日)では、
「美浜原子力防災センター」におかれた対策本部で、被害の状況や対策の進行が刻々と報告され、映像によって視察者に公開されていた。
少なくとも、対策本部への状況報告なしに、避難などの対処措置がまともに行えないことは明らかだろう。
 
また、国民保護法にもとづいて、東京都が作成した「東京都国民保護計画」には、
「平時からの備え」のなかに、「首都防衛との錯綜の防止」との一節がもうけられている(第3章第3節1(4))。
昼間、人口1500万人の首都東京からの避難を行うには、軍事作戦との調整を行わざるを得ないためであり、その限りでは当然の要請である。
 
だが、法案によって、「テロリズムによる被害」(法案別表四イ)や、戦況(収集した「情報」同一ロ)・作戦計画(「自衛隊の運用」同一イ)などは、「特定秘密」とされるに違いない。
「軍部」や治安当局からすれば、戦況や作戦計画を知られれば、「手の内を明かす」ことになり、「被害を発表すればテロリストを利する」と考えられるからである。
 
しかして、その「特定秘密」は、政府機関や警察には提供されても、
国民保護を担当し、住民の避難などに責任を持つ地方自治体や消防には、提供されることはない。
自治体職員や消防署員が無理に知ろうとすれば、「管理を害する行為」(法案23条)、
自衛官や警察官が漏らせば、「業務上知悉した特定秘密の漏えい」(同22条)で、
いずれも懲役10年の犯罪
とされる。
 
こんなことで、国民保護の責務を果たし、住民の安全が守ることができるだろうか。
 
国民保護を口実に、戦争に組み込んだ地方自治体を、重要な情報から遮断するのは、深刻な問題をはらんでいる
だが、「国家を守るために、住民の安全は切り捨てる」に等しいこの構造こそ、「特定秘密」の本質にほかならない。
 
かつてこの国は、「軍機」の名のもとに、いっさいの軍事情報を遮断し、
沖縄や中国東北部(旧「満州」)などの戦場で、無数の民間人を死に至らせた

いまこの国は、同じ「哲学」をもった国になっていこうとしているのである。


3 秘密保護法と戦争
 
どのような戦争が念頭におかれているか。

(1) 戦争のはじまり
武力攻撃事態法にもとづく「武力攻撃事態」やm「緊急対処事態」の対処基本方針には、国会承認が要求されている(事態法9条7項、25条5項)。
周辺事態法によるm対処措置の実施も同様である(同法5条)。
国会審議が適正に行われるには、事態の性質・規模・状況やm対処の方向・方策などがm報告されねばならない。
だが、国会への「特定秘密」の提供はm秘密会に限定されているから(法案10条1項一イ)、「特定秘密」にかかわる審議は公開では行えず、
メディアが報道することも、議員が国民に報告することもできない。
 
これでは、「国民の知らないところで戦争に突入していく」と宣言しているに等しい

(2) 国民動員
武力攻撃事態法と国民保護法によって、一定の民間企業は、平時から戦争態勢に組み込まれており(指定公共機関・指定地方公共機関 事態法6条、国民保護法21条)、
自衛隊法は、武力攻撃事態等に際しての、国民動員を規定し、業務従事命令(医療・土木建築・輸送)まで認めている(同法103条など)。
特定公共施設利用法では、地方自治体等が管理する、港湾・空港・道路等についての、優先的軍事利用を認めている。
いずれも、民間事業者や国民などが、いやおうなしに戦争に引き寄せられる場面である。
 
状況が緊迫すれば、秘密法保護法の改正を含めて、秘密の保持を義務づけられる国民は、飛躍的に拡大することになるだろう。
そのことは、「軍機保護」のための監視の網が、この国の社会に張りめぐらされることを意味している

(3) 「日本有事」から「米国有事」への拡大
10年前に登場した有事法制は、アメリカに追随した侵攻戦争に、対処するためのものであったが、
それでも、この国をめぐる事態(日本有事)を想定していた。
 
あれから10年、事態そのものが、飛躍的に拡大されようとしている。
 
「集団的自衛権」の許容とは、要するに、アメリカをめぐる事態(米国有事)での、海外での武力行使・参戦を意味している
日米軍事同盟で結ばれた同盟国アメリカ以外に、この国が「集団的自衛」と称して、戦端を開こうとする国は存在しないのである。
 
そのために、米日両軍の統合軍化や、米日共同作戦のための「情報の共有」が叫ばれ、
有事法制体系をも「下位法」とし、集団自衛事態法や国際平和協力法(海外派兵恒久化法)を組み込んだ、国家安全保障基本法体系が構想されるにいたった。
 
秘密保護法とは、そのために生み出された、「新時代の秘密保護法制」にほかならない。
秘密保護法を含む、国家安全保障基本法体系が守ろうとしているのは、国民ではなく、この国ですらなく、同盟国アメリカそのものなのである。
 国民的批判を受けて廃案となった国家秘密法案(スパイ防止法案)が浮上してから30年、有事法制が強行されてから10年の歳月が流れている。この歳月を経ていま問われるべきこと、それは、「戦争の道を克服しようとしている世界の趨勢に背を向けて、そこまで外征の国になっていくか」という、根本的な命題と言わねばならない。                      
(田中 隆・東京)


【2】日本版NSC設置法+秘密保護法は、この国をどこに導こうとしているか 

1 国家安全保障会議設置法は有事法制の一環

 
朝鮮半島での有事を想定し、北朝鮮に対するアメリカ軍の軍事行動を、後方支援することを目的に、「周辺事態法」が1999年に制定され、
さらに、2003年には「武力攻撃事態法」が、2004年には「国民保護法」が、強行成立させられた。
これらは、アメリカが行う戦争に、この国が「予測」の段階から、軍・官・民をあげて加担、
アメリカ軍に追随して、自らも参戦していく、侵攻型の有事法制
であった。
 
いわゆる「有事三法案」として、武力攻撃事態法案、自衛隊法「改正」案とともに国会に提出されたのが、現行の安全保障会議設置法「改正」案であった。
武力攻撃事態法の制定を踏まえ、設置法「改正」により、
「武力攻撃事態等への対処に関する基本方針」や、「内閣総理大臣が必要と認める武力攻撃事態等への対処に関する重要事項」が、内閣総理大臣の諮問事項に新たに加えられ、
また、会議の審議を、迅速かつ的確に実施するための、事態対処専門委員会が新設された。
現行安全保障会議そのものが、有事法体制の一環として整備、構築されてきた組織である。
その意味で、国家安全保障会議設置法は、有事を想定した軍事法・戦争法の一環であって、
軍事体制に適合的な組織へと、国家機構を変容させるものである。

2 4閣僚への権力集中と制服組自衛官の大量進出
 
国家安全保障会議(日本版NSC)は、内閣総理大臣を中心に、外交・安全保障に関する諸問題を、戦略的観点から、日常的・機動的に議論することにより、
我が国の外交・安全保障政策の、司令塔の役割を果たすとされ、有事法体制の集大成ともいうべき、抜本的強化策と位置づけられている。
 
「改正」案の特徴は、
第1に、内閣総理大臣・内閣官房長官・外務大臣・防衛大臣の4閣僚による「4大臣会合」を新設することにある(国家安全保障会議設置法5条1項二号)。
この「4大臣会合」の新設により、従来からある「9大臣会合」(同1項一号)ではできなかった、中身の濃い議論と迅速な結論が可能となり、外交・防衛政策の司令塔となるのだという。
 
第2の特徴は、内閣官房内に、総理大臣を直接補佐する「国家安全保障担当補佐官」を常設し(内閣法21条)、国家安全保障会議を恒常的にサポートする「国家安全保障局」を新設する(内閣法17条)ことである。
国家安全保障局には、局長、局次長のもと50人体制で、「総括」「同盟・友好国」「中国・北朝鮮」「その他(中東など)」「戦略」「情報」の6班が置かれる。
しかも、50人の中には、10数名の制服組自衛官が送り込まれ、6班の半分、3班の班長が、防衛省の出身者がつとめる(他の2班を外務省、1班を警察庁出身者がつとめ)と報じられている(10月24日付読売新聞)。
 
安全保障会議の前身である国防会議は、文民統制を目的としていたが、本「改正」は、文民統制を軍人統制へと変容させるものであって、
安全保障局を、制服組自衛官(軍人)や防衛省出身者に委ねることに他ならない


3 4閣僚への権力集中は憲法上許されない
 
第2次世界大戦後の1947年、共産主義の脅威に対抗すべく、冷戦期に創設されたのが、「アメリカ国家安全保障会議(National Security Council)」であり、
これを手本にしたのが、国家安全保障会議(日本版NSC)である。
 
本家(アメリカ)のNSCは、大統領、副大統領、国務長官、国防長官、その他を構成員とする大統領の諮問機関であり、
政策決定権者である大統領がメンバーであるため、NSCの決定が即座に政府の決定となり、それにより、機動性や迅速性が担保されている。
しかし、日本の場合、内閣が国会に対し連帯責任を負う(憲法66条3項)議院内閣制を採用しているため、
4大臣会合の決定を、そのまま内閣の決定とすることは、憲法上許されない
あらためて、全員一致の閣議決定を経なければならないことになる。
その意味で、日本版NSCには、迅速性・機動性において、もともと憲法上の限界がある、というべきである。
 
日本と同様に、議院内閣制を採用するイギリスにおいても、2010年5月に、NSCが設置された。
しかし、イギリスの場合、NSCは、内閣委員会(日本の内閣委員会とは趣旨も性格も異なる)の1つとされ、
内閣委員会の決定は、閣議決定と同様の効力を持つとされており、あらためて閣議決定の要求される我が国とは異なる。(以上、「調査と情報」548号、801号)
 
日本版NSCの議論において、迅速性や機動性を強調し、4大臣会合を、「実質的」な決定機関とすることを求める議論がある。
しかし、内閣が連帯して、国会に責任を負う我が国においては、事実上であれ実質であれ、4閣僚の意向により閣議を左右することは、憲法原則を蔑ろにするものであって許されない(改憲手続きを要する)。
4大臣会合で開示された情報(秘密)、それを踏まえた決定である以上、閣議においても、当該情報の開示を踏まえた決定でなければならない
そうでなければ、内閣の国会に対する連帯責任が、全うできないからである。

4 情報・秘密の囲い込みと、一部閣僚による国政の専断
 
日本版NSCは、海外のNSC、とりわけアメリカのそれとの情報共有を前提としており、
すでに、日米間においては、NSC担当者同士の相互交流が始まっているといわれている。
国家安全保障会議が適確に機能するためには、秘密保護体制の整備が不可欠だとされる。
国家安全保障会議の各議員に、秘密保持義務を課す(7条)とともに、秘密保護法とのセットでの、今国会での成立が目指されている。
 
しかし、このNSC+秘密保護法の体制は、権力中枢部のごく一部のみが、重要な情報(秘密)を独占し、
国民はもちろん、国会議員や4閣僚以外の大臣すらも、情報の共有者から排除され(「同盟国」アメリカの中枢やNSCとは情報共有がなされる)、
無理矢理アクセスすれば、処罰対象となることが想定される。


その結果、情報享受の階層性―重要であればあるほど少数にしか共有されず、共有者の範囲が広がるにつれ重要度が低下する―が生まれ、
ごく限られた者の意思が、事実上の国家意思となってしまう
重要情報(秘密)に接することのできない国会議員や国務大臣は、適確な判断者たりえず、NSC+秘密保護法体制は、この国を軍事・専制国家に導きかねないのである。
(松島 暁・東京)


【3】秘密保護法と海外派兵・九条改憲 

1 秘密保護法と戦争への道


安全保障に関して、防衛、外交などの秘密を保護しようとする、今回の秘密保護法づくりは、
平和憲法を踏みにじり、日本を戦争する国にしようとする動きと、一体のものである。
 
以下、秘密保護法案は、
第1に、平和憲法と相容れないものであり、
第2に、アメリカとともに、日本を戦争する国にする動きと一体のものであり、
第3に、9条改憲の先取りであることを明らかにする。
第4に、広範な情報が国民から隠され、文民統制や国民のコントロールを不可能にするなど、平和憲法に反する重大な問題点についても述べる。

2 平和憲法と相容れない秘密保護法
 
戦前、軍事秘密の保護は、侵略戦争と一体のものとして進められてきた
日清戦争後の1899年には、軍機保護法が制定され、それが日露戦争を経て、1937年日中戦争が激化するもとで拡充された。
太平洋戦争開戦前夜の1941年には、軍事上の秘密のみならず、外交、財政、経済、政治など、広範な秘密を保護する国防保安法の制定にいたる。
違反者は、死刑を含む重罰で処罰され、治安維持法などとあいまって、多くの国民が弾圧された
ものの言えない社会がつくられ、侵略戦争が遂行されていったのである。
 
戦後、戦争を放棄し、軍隊を保持しないとした日本国憲法のもとで、軍機保護法や国防保安法は廃止された。
しかし、在日米軍の秘密を保護するための、刑事特別法が制定され、
また、日米相互防衛援助協定等に伴い、アメリカ政府から日本に供与された装備品、及び装備品に関する情報を保護する、MDA秘密保護法が制定された。
秘密漏えいなどには、10年以下の懲役刑をもって処罰する、秘密保護法制であるが、これらは、平和憲法と矛盾する法制度といわざるを得ない。

3 日米の共同作戦、海外派兵と秘密保護制度

(1) 日米ガイドラインと国家秘密法案
日米での共同作戦計画づくりを進めようとする、1978年の日米防衛協力の指針(旧ガイドライン)では、日本における情報保全が確約された。
すなわち、自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して遂行するために、情報の要求、収集、処理及び配布などを行い、
これらの情報については、それぞれが責任を持って保全すること、すなわち、他に漏えいなどされないように、責任を持つことが確約されたのである。
秘密が漏らされるようなことでは、戦争を進めるうえで、重要な情報を共有できないというわけである。
そして、1985年、スパイ防止の名のもとに、国家秘密法案が国会に提出された。
軍事・外交に関する広範な情報を秘密とし、法違反の犯罪者に、死刑を含む重罰で対処するというものであった。
法案は、国民の知る権利を著しく侵害するものであり、マスコミはもとより、多くの国民が反対の声をあげ、結局は、廃案となった

(2) 自衛隊の海外派兵と防衛秘密法制
湾岸戦争を契機にして、自衛隊の海外派兵の動きが進められるなかで、
1997年の日米「新ガイドライン」では、効果的な作戦を共同して実施するため、情報活動について協力することとし、
共有した情報の保全に関し、各々責任を負うことが明記された。
 
2001年、アフガニスタンに対する戦争が始まると、日本は、アメリカから求められ、テロ特措法を成立させて、これに参戦していく。
その際、政府は、防衛秘密を特別に保護する自衛隊法「改正」をも、国会で成立させた。
軍事・国防のための秘密保護制度であり、平和憲法と矛盾する制度である。

(3)日米両軍の一体化と秘密保全法の提起
地球規模での米軍再編が進められて、米軍と自衛隊との一体化が強化されるなかで、
2005年、日米安保協議委員会(2+2)でも、二国間の安全保障・防衛協力の態勢を、強化するための不可欠な措置として、
情報共有、及び情報協力の向上とともに、共有された秘密情報を保護するために、必要な追加的措置をとることが確認されてきた。
 
そして、日米両政府は、2007年8月、「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する協定」(GSOMIA)を締結した。
この協定では、両国間で相互に提供される、秘密軍事情報を取り扱う条件として、
その担当者が、秘密軍事情報取扱資格を有すること
当該情報にアクセスすることを許可されている資格者の登録簿を、各部署で保持すること、が求められている。
 
国内でも、2010年8月、新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会(新安保防衛懇)が、秘密保護法制づくりを提起し、
同年12月の「防衛計画の大綱」も、政府横断的な情報保全体制を強化することを、統合的かつ戦略的な取組として位置づけた。
そして、2011年8月、有識者会議の報告が、秘密保全法づくりを提起したのである。

(4)秘密保護法案は9条改憲の先取り
自民党が、2012年4月に発表した改憲草案では、
9条改憲により、国防軍を保持することとあわせて、
国防軍の「機密の保持に関する事項は法律で定める」と、秘密保護法の制定を提起した。

また、同年7月、自民党が発表した国家安全保障基本法案(概要)は、
集団的自衛権の行使や、海外で武力行使、武器輸出などもできるようにすることとあわせて、
「我が国の平和と安全を確保する上で、必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・制度上必要な措置を講ずる」として、秘密保護法を制定することを求めている。
 
新ガイドラインの見直しを確認した、本年10月3日の日米安保協議委員会(2+2)においても、
アメリカは、集団的自衛権の行使とともに、情報保全の法制化(秘密保護法づくり)の取り組みを、歓迎する態度を明らかにしている。
 
このように秘密保護法案は、集団的自衛権の行使容認と一体の動きであり、
9条改憲、戦争する国づくりを、先取的に進めようとするものであることは、明白
である。

5 国民から隠される広範な情報と戦争への道

(1) 隠される広範な情報
防衛秘密だけとっても、秘密保護法案では、包括的、かつ広範な情報が、すべて防衛秘密の対象となって、国民から秘匿されることとなる。
国民は、防衛予算や基地機能、防衛計画、作戦運用の実態、配備される武器・弾薬・航空機に関する情報から、一切遠ざけられる危険がある。
 
何より「自衛隊の運用」(1項)すべてが、防衛大臣の指定により秘密となりうるのであるから、
自衛隊の行い、行おうとする活動すべてを防衛秘密として、国民から秘匿することも可能となる。
日本が、アメリカとどのような憲法違反の共同作戦行動に突入しようと、
極秘に新兵器を開発し、あるいは外国を攻撃する戦争を計画しようとも、一切国民に知らされない危険性がある
 
これまでも、米艦船等による核兵器持ち込みなど、日米での密約が国民から隠されてきた経緯からみて、いっそう広範な情報が国民に隠され続けることになる

(2) 処罰の矛先が向けられる広範な関係者 
現在自衛隊が、その装備調達の発注をしている企業は、膨大な数にのぼる。
これらの膨大な企業に関わる秘密が、「防衛秘密」のなかにとりこまれる。
そしてこれら「防衛秘密」に関与する労働者、技術者の数は、計り知れないほど多数にのぼる。
兵器・艦船・航空機の製造のみならず、修理、さらには航空、港湾、海運、建設、陸運、医療、情報産業等、
極めて広範で多岐にわたる各分野の産業に、従事する労働者、技術者、経営者が、対象になりうる。
これら民間人・労働者が、秘密保護の義務を負わされ、故意過失を問わず、漏洩を処罰されることとなる。
不正や違法を告発したり、市民の側から情報公開を求めることも、きわめて困難となる。
まさに、国民多数に、処罰の矛先が向けられるものである。

(3) 否定される文民統制、国民側からのコントロール
防衛大臣は、内閣の関与なしに、秘密を指定できる
広範な情報が秘匿され、内閣のチェックもコントロールも、困難となる。
国会においても、十分な資料に基づき調査し議論することが、困難となる。
防衛・外交など広範な情報に関する答弁拒否がまかりとおり、国会審議の空洞化を招くことになる。
文民統制は形骸化することとなるのである。
 
そもそも、平和憲法を持つ日本において、自衛隊の活動に関し、主権者である国民が、常に監視・批判を行うのは、国民の当然の権利である。
ところが、防衛・外交など、広範な情報が「秘密」とされ、国民がこれら情報から遠ざけられることになれば、国民からの批判・監視は、行えないこととなる。
自衛隊の運用・作戦行動が、いかに憲法9条に重大に反するものであっても、それを知ることができないこととなり、自衛隊の独走を許すこととなる。
憲法前文で保障されている平和的生存権をも、ないがしろにされてしまうのである。
 
これでは、戦前の二の舞になりかねない。
断じて歩んではならない道
である。                         
(吉田健一・東京)

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2 コメント

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ツワネ原則 (白やぎ)
2013-11-13 00:46:49
薔薇、または陽だまりの猫より
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/8d851729feff764579d4d9a6b062ec5d

正式には「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」
政府が秘密を指定するとしても、知る権利や人権に配慮が必要という原則で、70カ国の識者500人以上が、2年も議論してまとめたものらしい。
安全保障の秘密を設けるに当たり、国家が考慮しなければならない指針として、今年6月に発表された。
国連や欧州安全保障協力機構などの国際機関の職員、安全保障に関する専門家ら500人以上が2年間、南アフリカのツワネで議論してまとめたので、地名にちなみ「ツワネ原則」との名がついた。参加者の国籍は70カ国にも及ぶ。

もともとは、安全保障上の理由で国家がさまざまな情報を秘密に指定し、国民の知る権利とのバランスが崩れていることを危惧したことが、原則をまとめる出発点だったそうだ。

このツワネ原則を手本として、「悪法」特定機密保護法案を白紙撤回しようと動いている弁護士がいる。
日本弁護士連合会秘密保全法制対策本部の副本部長、海渡雄一弁護士。

海渡氏によると、ツワネ原則は「国際人権規約や欧州人権裁判所の判例、人権保護の国際的な合意に基づいている」ものである。

 原則については
(1)国民は政府の情報を知る権利があることが基本中の基本である。
(3)政府は防衛計画など限定した情報は非公開にできるが、
(4)人権や人道主義に違反する場合は公開しなければならないと、秘密指定の幅に歯止めをかける。
など、50にのぼる。

しかしながら、政府関係者や自民党議員は関心が薄い、もしくは知らない(ふり)者が多いそうだ。

真実を探すブログ(2013/11/11)の記事によると、外国特派員協会からも撤回、修正を求める声が上がっているようだ。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-1183.html

さらに、同じ記事の下の方に “プロジェクト99%”というサイトで「修正」ではなく「撤回」のための嘆願書をFax、メールで送ろう、という活動をしているとの紹介をしていました。
http://project99.jp/?p=6468

こちらでもツワネ原則の概要、特別委員会メンバーの連絡先等が見られるようになっているので、法案の修正ではなく、廃案に持ち込むためにFax,メールを送ってみようと思います。
もし参加していただける方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。



返信する
白やぎさんへ (まうみ)
2013-11-13 04:24:41
いつも興味深い、そして見落している記事を教えてくださり、本当にありがとうございます!

よく読んで、また記事に書かせてもらいますね。
この法案は、なんとしてでも棄却させないと!
返信する

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