ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

日本人とりんご

2008年11月21日 | お家狂想曲
しばらく考えることも見ることもしないでおこうと決めていました。
けれども、まったくゼロにするのではなくて、軽く探し続ける方がいいよと複数の人から言われ、
旦那がまた、エージェントのデブラに物件資料をメールで送ってくれるよう頼みました。
わたし達が資料をフムフムと熱心に読み始めたのは、今からほんの半年前のことですが、
今だに売れ残っている同じ家がとても多いことと、価格が三百万から五百万円下がっていることに気がつきました。
それにしても、とんでもない数の家が売れていません。ショートセールと書かれた家の数もうんと増えました。

わたしはショートセールという言葉を、まるで逆の意味に勘違いしていました。
ショート=短いと思っていて、早く売りたい物件のことなんだなと思っていました。
それが今朝、ふと思い立って、ちゃんと意味を調べてみようとネットを検索したら……、
ショート=不十分な、足りない、の方の意味だったんですね……いや、今更なに言うてんのって感じですが。

なぜそんなことを調べてみようと思いたったか。
それは昨日、うちから少し離れた所にある、前々から好きだった隣町の通りに、我々の予算よりかなり高いのだけれど、部屋が9部屋もある物件を見つけ、見るだけ見ようということで中を見せてもらいに行ったからなんです。
その家の紹介にはショートセールにかかっているという意味の、クロージングという但し書きが書かれてありました。
先程にも言ったように、ショートの意味をはき違えていたわたしは、こりゃ急いで見せてもらう方がいいなと思いました。



かわいい、こじんまりした家です。
古くてがっしりとした日本紅葉が家の両側にあり、真っ赤な、乾燥して丸まった葉っぱが前庭にいっぱい落ちていました。
家の中に入るとびっくり!まだ人が居ました。
この家は、うちから少し歩いた所にある室内サッカー競技場で働く、イギリスからやって来た若者の寮になっていて、
キッチンと居間と食堂以外の6部屋それぞれに、若い男の子達が住んでいるようでした。

ここに限らず、どこの国でも、片付けない若者ってのはいるのだろうけれど、いやあ、ど迫力のばばちさです。
こりゃゴキブリやらネズミやらの天国だわ……食べ物カスをはじめ、得体の知れないブツなどがそこら中に散らばっています。
そしてなんといっても匂いがキツい!。それぞれの好みのコロンやら香料やら……もうクラクラしてしまいました。
キッチンのガスコンロは、思わず記念に写真を撮りたくなるほどの惨状、トイレの便器もさもありなん。

けれども、地下にある3部屋は、旦那の治療室とオフィス、それからテレビ部屋兼Kのゲーム部屋にバッチリな構造、
外からの出入りも直接簡単にでき、バスルームと洗濯室もあり、わたし達の生活様式に完璧に合います。
1階にピアノを置いて、2階の寝室3部屋を適当に使うこともできます。
家は大き過ぎず小さ過ぎず、後ろの庭も頃合いのサイズ、ガレージには2台の車が入り、ドライブウェイにも数台置けます。
車がごくわずかしか走らない通りなので、旦那の患者やわたしの生徒も、路上駐車が簡単そうです。

なんて盛り上がってしまったけれど、提示されている売値は我々がなんとかできる予算より六百万も高いのです。
まあ無理だろうと99%はあきらめつつ、ショートセールの家がどんなふうに売られるのか調べてみました。


ショートセールとは、住宅ローンの支払いが滞りそうになったり、滞り始めた家の持ち主が、
差し押さえになる前に、ローンの貸し手である銀行に相談し、ローンの借金額よりも低い値段で、家を売りに出している物件。
銀行にとっては、赤字。
持ち主はまだ物件の中に住んでいる場合がほとんどだが、
買い手が購入オファーを入れた場合、交渉は持ち主を素通りし、ローンを持っている銀行とすることになる為、
オファーしてから、だいたい2週間から1ヶ月、オファーに対する返事を待たされることが多く、
急いで話をまとめたい買い手には、避けたい物件。


我々の場合、待たされるのは全くかまわないので問題は無いのだけれど、
もともとローンの借金額より低い値段で売りに出している銀行に、さらにまけてよと交渉するってことになり、
赤字を抱えてくさっている相手に、さらに追い討ちをかけてどうするのさ、ですよね。

でもまあ、こんなご時世です。駄目もとで、いっぺん言うてみたらどう?ということになりました。
デブラも、「まあ、99.99%は相手にされないだろうけど、でも、ほら、世の中ひっくり返ってるからさ、誰かがうっかり、ああ、もうそれでええわってサインしちゃうかもしれないから」なんて、メチャクチャ無責任です。

で、わたしはというと、サイズ的にはかなり理に適っているし、中身も好きな所はいっぱいあったのですが、
あの汚さと傷の多さが……とブツクサ言ってたら、
「あ~もう、そ~ゆ~とこが日本人!」と旦那。
「スーパーのりんごとちゃうねんからさあ。器の中身が自分達に合ってることが大事で、外見なんか後からゆっくり磨いたり修理したりしたらきれいになるねん。日本人は、まず見た目がきれいかどうか、それにこだわり過ぎ!つまらんこと考えるのはやめ!」

ええ、ええ、そうですよ。中身が大事、なんて口では偉そうなこと言うてても、スーパーの野菜や果物の陳列棚の前で、長々と時間をかけて、新鮮で、美味しそうで、しかもきれいなのを選んでますよ。
りんごも栗も大根も三度豆も椎茸も。
だって日本人だもぉ~ん