白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(197)イギリス日記 六日目(2)

2017-01-31 17:50:32 | 日記
イギリス日記 6日目(2)
この近くにはカジノも多い 発祥はこうだ
カジノ
19世紀初頭の話である ウイリアム・クロックフォードは貧しい漁師の倅だった テムズ川に水揚げされた雑魚を市場に並べ売れ残った魚は顔見知りのコックに頭を下げて買ってもらっていた 彼には野望などなかった 彼は父や祖父と同様生涯魚を売って過ごすはずであった ある冬の日のこと 彼は売り損ねた魚の袋を担いで冷たい雨の中で佇んでいた
これが売れなければ明日の仕入れが出来ない 家で待つ老いた親と妻子のことを思わないではいられなかった そのとききらびやかな貴族の馬車がやってきて貴婦人が窓から貧しい人々に施しのコインを撒いた ウイリアムには商人としての誇りはあったが敗れた長靴の爪先に金貨が転がってきたのでは拾わずにはいられなかった その金貨一枚は明日の仕入れには充分な額であったが 拾った金で商売をすることをよしとしなかった彼は近くの賭屋に飛び込み最も売れていない馬に全顎賭けた 彼がギャンブルに手を染めたのは後にも先にもその一回であった 数時間後市場は大騒ぎとなった 彼が手にした配当金はインド洋まで遠征出来る漁船を乗務員ごと買えるほどの大金だった だが彼は苦楽を共にしてきた仲間の頭ごしに自分一人ブルジョワにはなりたくなかった・・・・
そこで考えたのが賭屋であった ブルジョワたち相手にこれをやったらどうだ なくしても困らぬ金、窓から投げ捨てるような金ならばきっとギャンブルにも使うだろう・・・
彼は船も魚も買わずにバークレイ・スクウェアに面した館を買い そこでロンドン初のカジノを開店した 賭け事で生活を脅かすような人が出ないように会員資格を厳正に審査し
ゲーム中のトラブルを防ぐために長いサーベルを吊った剣士も雇った 豪華なインテリアと厳格で紳士的な規律によって会員たちは皆気持ちよくギャンブルを楽しんだ
やがてウイリアムは多額の納税と社会的貢献により紳士の称号を与えられサー・ウイリアム・クロックフォードと呼ばれるようになった
これが世界最古のカジノ、クロックフォードの起源である

このカジノはもちろん現在でも会員しか入れない
しかしウエストエンドには誰でも入れるカジノもある ヒポドロームカジノ 21歳以上であれば誰でも入れる エンターテイメントショウも行われていて ここは元ピポドロームシアターといって古い劇場跡だ いわば新歌舞伎座の跡に四海楼が入ったようなものだ
(もう一つ誰でも入れるカジノがストラッドフォードシテイに出来たがこれは明日見に行く予定である)

「ハリーポッターと囚われた子供」
上演しているパレス劇場は1985年以来ズーッと「レミゼラブル」をやっていた
「レミゼラブル」がクイーンズ劇場に移って2016年7月30日より「ハリーポッターと囚われた子供」が始まった 25万枚一年間分のチケットが一時間で完売 今年もすでに年内一杯の切符は売り切れだ
パート1 1・30~ パート2 6・30~と合わせて6時間の上演だ 
ストレートプレイの作品で 来年のブロードウェイ進出が決定した

「レミゼラブル」をやっているクイーンズ劇場の隣のアポロ劇場でやっている「PETER PAN GOES WRONNG」という作品は去年の10・21~今月の29日までの期間限定公演でその面白さで評判を呼んでいる もちろんピーターパンのパロデイであるがYouTubeで内容が判る 但し見るのはイギリス限定で日本ではダメだった

レミゼラブル クイーンズ劇場 19・30~開演
これもまた古い小さな劇場だった 買った切符の時間まで中華街やカフェをはしごした
ロビーで座ってビールを飲んでいた男性が杖をついた僕を見て生涯で一番悪いことをしたという顔をして変わってくれた
間口5間程の狭い舞台 両プロセミアムも人の出入りが出来る
主役のバルジャンのPETER LOCKYERの静の動きとテナルテイのDAvID LANGHAMの動の動きのバランスがいい
新演出でテンポが良く見やすくなっている

帰りは初タクシーでホテルまで
タクシー タクシーは最大五人乗れる 昔の馬車の名残で向かい合って座る

白鷺だより(196)イギリス日記 六日目(1)

2017-01-31 17:45:28 | 日記
 イギリス日記 六日目(1)
1月23日
8:30~ バスにてロンドン市内観光
久しぶりの霧の中 停滞を見込んで早い目にバス出発
霧の中に浮かぶロンドン塔の不気味さ 漱石が嫌いな理由が判る

車が停滞するのはラッシュのせいだけでもない
ブルー色の自転車道路これが停滞の大元凶だ まだ通勤時間以前だから使用者がいないと思っていたら普段から少ないらしい 大気汚染に有効だからと市長自ら自転車通勤までして作ったこの専用道路 ブームが去ったら使っている人がいない 時間帯によって車の侵入を許可すればましなんだが・・・またロンドン中心部に入ったら二階建てバス(ダブルデッカー)にはうんざりする どのバスもひとは殆ど乗っていない だけど何故か威張っている 二階建てだからかさ高い 老人だけの利用のため走らせているのかといえばそうではないらしい 一応ロンドンの名物となっているのでやめられないようである

ウエストミンスター寺院
ウエストミンスター・スクール

年額1000万以上の授業料で6年間の寄宿舎生活 
この魔法学校のようなシステムが次代のイギリスの中心人物たちになっていく
イギリスにはこういう学校が他にチャーターハウス、イートン ハロー ラクビー など6つもある

ビッグベン
ピーターパンで有名 丁度10時に鐘を聞く

バッキンガム宮殿 ロンドン五輪のマラソンスタート地点

そういえば前回渡英したときは郊外はもちろんロンドン市内も観光も出来なかった
わずかに「哀愁」のウオータールー橋を一人で歩き ハイドパークでピーターパンの銅像の写真を撮ったきりである
演出家との打ち合わせの場所に行ってみるとそこはテームズ川に浮かんだボートの上であった 僕の家が狭いのでというのが理由だった

バッキンガム宮殿から大英博物館までバス ウオータールー橋を渡る
 
大英博物館

よくもまあこれだけのものを集めたものだ 対馬仏像盗難事件では韓国の裁判所は窃盗団の言い分を認めたがイラク・エジプトあたりから返還要求がこないのであろうか
ナポレオンが盗んできたロゼッタストーン、そういえばパルテノン神殿の彫刻をギリシャが返還要求を出したにだけどどうなった?

大英博物館見物後 解散 自由行動

まず見るミュージカルの切符を劇場まで行ってゲットした
開演19:30までの時間つぶし街を歩く
エスカレーターは大阪風で右側に立つので快適だ
道は思ったよりきれいじゃなく ごみ箱が多いがゴミも多い
女性喫煙者が集まっているのが気になる 
タバコは6~9£するので男性サラリーマンには無理だ
日本は全ての飲食店での喫煙が全面禁止となるようだが・・・・

娘が学生時代通った店が中華街にあるらしいので行ってみるともうなかった
近くの飲茶の店に入り昼夜兼用
 
               (続く)



白鷺だより(195)イギリス日記 五日目

2017-01-30 12:18:51 | 日記
イギリス日記 五日目

1月22日
8:30~バスにてリバプール観光
イングランド4番目の人口の町 
17世紀末頃からアメリカや西インド諸島との貿易で町は繁栄を極め18世紀リバプールが大きく繁栄した背景には奴隷貿易がある なんと1760年にはイギリス国内最大級の奴隷貿易港に発展した 安い労働力が必要だったのでアイルランド人移民が多い

リヴァプール大聖堂 国教の教会
リバプールメトロポリタン大聖堂 カソリックの教会

アルバートドック
ALBERT DOCKは1846年にオープンした世界初の不可燃性の倉庫システムで鋳鉄 レンガ 花崗岩で建設されています ドッグは船の修復や係船 荷役作業のために築造された施設で1848年には世界初の水圧を利用した貨物用昇降機が取り付けられた
リバプールの繁栄とともに活躍したアルバート・ドッグも1920年代からは鉄道や道路のために商業船は激減し 主に倉庫として使われるのみとなり戦後も益々衰退していったドッグは1980年代からの資本投資によって素晴らしいエンターテインメントの中心地として蘇った そして美術館やビートルズ博物館に交じって国際奴隷博物館も作ってこの町が繁栄してきた負の歴史を語るのも忘れません

アルバートドッグ近くの埠頭にビートルズ四人のブロンズ像が出来た
朝早かったので人がいない状態で写真撮影が出来た
さすが港町 街にはカモメがあふれていた 雨でも降るのか低空飛行である

キャバーン クラブ
元々ワインセラーだった地下室をライブハウスにした場所
いつまで続くかと思わせるらせん階段を下りると「ア・ハード・デイズ・ナイト」がこれでもかという大きな音で鳴り響いている  ビートルズは1961年2月にここで初ライブ 
ここは現役のライブハウスでツアーの仲間の一人が昨晩車を飛ばして聞きに行った
見学を終え長いらせん階段を再び登るとマシューストリートにこのツアー初めての
雨が降ってきた この通りにはジョンレノンの銅像があり雨にうたれていた

バスにてチェスターへ(33k)

チェスター観光
イングランド北西の都市でディ川のほとり ウエールズとの境にある城壁都市
城壁都市としてはイギリス国内で最良の状態で残っているためイギリスの遺産都市として
国内外から観光客が訪れる都市として有名です また白壁に黒の木枠の建物(ザ・ロウズ)がチェスターのシンボルとなっている

チェスターの語源はラテン語のcastraカストラ 砦
城壁によって町全体が守られている城塞都市

ランチは街のイタリアンの店で久しぶりのピザ

ロンドンへ(314K)

イギリスの高速はその殆どが無料となっている
この閑は長いのでいくつか有料道路を使った
サービスエリアは日本のそれとは違い大手スーパーやコンビニ レストラン ファーストフード カフェ ATM ブックメーカー カジノなどがある
ファーストフードはマクド、バーガーキング KFCのいずれか
カフェはスタバかコスタ
スーパーはWAITROSE MARK&SPENCERとどちらか

ホテルにて夕食
ノボテルホテル ロンドン エクセル泊

明日はロンドン観光

白鷺だより(194)イギリス日記 四日目

2017-01-29 09:14:48 | 日記
イギリス日記 四日目


1月21日
ブレックファースト
バスにてコッツウォルズ観光
バイブリー村へ(30k)
初めて朝から濃霧の中ひたすら牧場の間の道をワクワクしながら走り続けること30分
「イギリスで最も美しい村」(ウイリアム・モリス)と言われる村バイブリーに着いたころは温かくなってきたのか「残念ながら」霧は消えていた
このコッツウォルズ地方の建物ははちみつ色の石造りの家が並ぶ
何百年と守られてきた古い家 緑の綺麗な庭 小川に流れる水の音 川面で遊ぶ白い鳥
それらを見つめながら歩くだけでいい そんな村だった
出来れば霧も残っていてくれたら・・・

ボートン・オン・ザ・ウオーターへ(22k)
街の中心を流れるウインドラッシュ川の水が美しいことで有名で「コッツウォルズのベニス」とも言われるボートン・オン・ザ・ウオターはコッツウォルズで最も人気のある村といわれている 川に何本も掛かった低い石の橋 その舌を泳ぐ鴨の群 この村もそれらを眺めながら散策するのがふさわしい このあたりの地方はイギリス人が「老後最も住みたい村」というのが良く判る

ストラットフォードへ(42k)

ストラットフォード アポン エイボン観光

まずは郊外にあるシェークスピアの8歳年上の奥さんアンハサウエイの家
中心地に戻り シェークスピアの生家から自由散策
スタートは生家前にある「お気に召すまま」の道化像からスタート
シェークスピアセンターと生家が一緒になっている 父親は毛皮職人であった
エイボン川のほとりのハブにてビールとサンドウィッチとハンバーガーを注文 なんとパブの隅っこにはスロットマシンが置いてある これは以後何度か立ち寄った高速のサービスエリアにも必ずあったので珍しくもないということであろう
さてエイボン川の近くの公園にシェークスピアの銅像があり その周りに「ハムレット」「ヘンリー四世のハル王子」「フォルスタっフ」「マクベス夫人」の四つの名シーンの像があり その前で寸劇の真似事など・・・
川沿いを少し行くとロイヤルシェークスピア劇場が見える
ロイヤル・シェークスピア・カンパニー(RSC)が持っている劇場でこのカンパニーに過去関わった日本人は伊川東吾 RSCとの共同制作「ペールギュント」と「リア王」を演出した蜷川幸雄「ペールギュント」に主演した譲 晴彦「リア王」に出た真田広之がいる

伊川東吾 (1946~)俳優座養成所出身1969年演劇センター68・69に参加
黒テント公演で全国を回る 1983年イギリスに移住 1986年ストラットフォードアポンエイボンにあるスウォン・シアターの杮落し公演で日本役者として初めてRSCの劇団員となる 2006年ロンドンで劇団CHIZAを結成 イギリスを中心として世界各地で活躍している

ウイリアム・シェークスピア(1564~1616)
ストラトフォード・アポン・エイボンに生まれ 1585年頃ロンドンに進出 1592年には新進の劇作家として活躍した 1612年に引退するまでの20年間に四大悲劇「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」をはじめ「ロミオとジュリエット」「ヴェニスの商人」「夏の世の夢」など多くの傑作を残した 1613年引退して故郷ストラトフォードで晩年を過ごす 1616年52歳で没した

RSCのロビーにて休憩
現在上演している公演(夕方から)の宣伝映像を見ると舞台はグローブ座のように三方から見る形をしている

「お気に召すまま」の道化の像の前で娘とふざける
銅像には次のセリフが彫られていた
「愚かさって奴は まるでお天道さんのように地上の至る所を歩き廻る
おかげでそこらじゅうが明るくなるってわけさ」
もちろん英語で(笑)


観光後リバプールへ(214k)
ホテルにて夕食
クラウンプラザジョンレノンエアポート泊
旧空港の表玄関をそのままホテルにしたようで
裏には滑走路がそのままであるのには驚いた
遅いホテルでの夕食で外を見ると飛行機がポツンと一機止まっていた

さて明日はいよいよビートルズに会える

白鷺だより(193)イギリス日記 三日目

2017-01-28 16:43:09 | 日記
イギリス日記 三日目

1月20日
ブレックファーストのあと
8・00~バスにてバースへ(104k)

英語のBATHの語源となったと言われる町 バース
ロンドンから西へ150K 電車でバディントン駅から1時間30分
イギリスではロンドンに次いで観光客の多い町で1989年世界遺産に登録されている

まずはちょっと郊外のロイヤルクレセント
バースの温泉はなやかな頃(15世紀)当時の貴族たちのための長期逗留用集合住宅
日本流にいえば長湯治用の館だ
全体的に大きな三日月の形になっているのでクレセント(三日月)といわれる
この真ん中辺りはホテルになっていて泊まることが出来る(4万円~5万円)
少し小高い場所に立っているので屋上あたりから見るバースの眺めは最高だ

バース観光
この町はかって「高慢と偏見」を書いたジェーン・オースティンが住んでいた

15世紀ジョージ王朝時代の貴族たちによって整備された優美な街並みは今でも洗練された雰囲気を与えてくれる 街の建物は建築家ジョン・ウッド親子の手によって四角形(スクエア)三角形(クレセント)円形(サーカス)になったりとユニークな形のものが多い

バルトニー橋 橋の両側は商店になっていてフィレンツェのベッキオ橋に似ている

バース大聖堂の隣がローマンバス博物館だ(入場料15£) なんでも温泉の排水工事の時偶然ローマ時代の風呂の跡が完全な形で見つかったらしい(1880)

PUNP& ROOM アフターヌーンテイー
その博物館の中(外から入れる)にあるPUNP&ROOMは保養地だったころの社交場で現在では庶民の我々にも入れる ここでアフタヌーンティーを頼んでみた このアフタヌーンティーはシンガポールのラッフルホテルで食べようと思ったが余りにも高額すぎて諦めた代物で最初に行ったクレセントホテルのロビーで食べると68£もする おそるおそる値段を聞いてみると28£といわれ安心して注文する ピアノの生演奏を聴きながら英国紳士に連れられたレディやレディたちの会話が心地よく響く しかも ここの窓からローマ風呂の全貌が一望出来る (ちなみにローマンバス見物には15£かかる)また温泉のお湯を飲むことが出来る いかにもまずそうなので辞めたが・・・

ところで僕がトイレに立った時ひっくりかえったのだが その時近所の紳士諸君が一目散に駆け寄り助けてくれた もちろん店の従業員も助けてくれたが紳士たちの行動の方が早かった 支払いはテーブルのうえに幾らかのチップを入れて30£払った

レイコックへ(24k)

向かうバスの道路の両側はずーっと牧場になっていてヒツジが一杯いた
この辺りは昔から羊毛の産地でレイコック村も紡績で栄えていた ところが産業革命が起り紡績業は新たな自動織機を駆使するマンチェスターあたりに取って代わられこの村から若者は出て行き 残った老人たちには改築の金も意欲もなく 栄えた時代のままの姿が現在まで残ってしまって「18世紀で止まった村」となった 石材で拭いた屋根は石灰岩を使っているので水がたまると水を通してしまうため急勾配にでできているのが特徴である 近年ハリーポッターの映画のロケ地となりハリポタ信者にとっては言わば聖地となった
しかし僕はどちらかと言うと熱心な本の読者でもなく映画も洋画劇場あたりで流し見をするくらいで興味も殆どなく見てまわることになった
特にレイコック寺院は「秘密の部屋」を本格的にロケしたところだそうでいわば聖地だ

グロスターへ(89K)

グロスター大聖堂 
ここの回廊もハリポタロケ地で「賢者の石」の学校の場面をここで撮影したという

近くのカントリー風のリゾートホテル ホールマークホテル グロスター泊
明日はコッツウォルズ地方へ

そういえばイギリスについて以来三日間 雨にも霧にも合わない
これは運がいいのか悪いのか