白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(187)幻の明治座ひばり公演「お夏清十郎」

2017-01-13 07:53:42 | 思い出
   幻の台本 明治座ひばり公演「お夏清十郎」

 ここに一冊の台本がある 昭和62年の5月明治座のものだ 表紙を見てみよう

川口松太郎追悼
美空ひばり明治座皐月公演
川口松太郎 原作
沢島正継 脚本・演出
お夏清十郎
     初日昭和62年5月Ⅰ日
    千秋楽昭和62年5月27日
左上隅に手書きで 吉村正人様

御園座の元制作だった篠田邦雄さんのブログによると

「昭和60年7月美空ひばりさんの御園座公演は腰痛に悩まされながらの出演、体調が万全でない中 舞台公演を決めたのは長谷川栄一社長(御園のパパ)との「もう一度御園座へ出演する」との約束を守るためだった その公演中にもう一つの約束「東京のパパ」との約束した明治座出演を果たすため翌62年のスケジュールを決めたのでした」

とある 東京のパパこと川口松太郎は御園座公演の前月6月に亡くなったばかりであった
身体が動けるうちに両方のパパに御恩返しがしたい 
つまり この明治座公演は故川口松太郎への追悼公演であった


スタッフ
原作    川口松太郎
脚本・演出 沢島正継
美術    仲川吉郎
音楽    渡辺岳夫
照明    有馬裕人
殺陣    菅原俊夫
効果    辻 亨一
演出補   伊藤万寿夫
演出部   吉村正人
同     山田孝行
同     青木義博
制作    黒田耕司(東宝)
同     尾松義弘(梅コマ)
明治座   川口 厚(川口松太郎さんの三男・明治座制作)

人物
但馬屋お夏 遊女皆川   美空ひばり
和泉屋清十郎       中村時蔵
但馬屋九左衛門      金田龍之介
女将 おとき       鳳 八千代
但馬屋番頭 嘉七     安井昌二
女中頭お亀        近松麗江
和泉屋番頭 仙三     梅沢昇
五月屋女将 おさわ    和田幾子
但馬屋船頭 治平     北町嘉郎

4月22日 記者会見 顔合わせ 
          ひばり顔合わせ終了後 福岡に飛び検査 
          残った我々は本読み
4月23日     ひばり抜きで立稽古 
          緊急入院 ドクターストップがかかる
4月24日     稽古中 ひばり休演決定
代案会議 
4月25日  代案会議
御園座公演中の杉良太郎 代役に名乗り挙げる

再び篠田さんのブログから(彼は当時御園座自主公演、杉良太郎公演の制作担当だった)

突然私は座長部屋に呼ばれ杉さんから「明治座が困っている、今御園座で公演しているこの一座を演目もそのまま来月の明治座に
持って行きたい 協力してくれ」

と・・・・明治座からは私が初めて自主制作した時に大変お世話になったH重役が駆け付けられた
ご恩返しはこの時と 出演俳優の翌月スケジュール抑えから御園座大道具の搬出手配と喜んでお手伝いさせて頂きました

東宝がいくら代案をだしてもOKしなかったのはこういう裏があったのか 
このH重役こと広田常務はこのあと明治座制作を牛耳ることとなる


この時点で この公演は幻に終わった
制作の川口厚主催でスタッフ解散式を銀座にてひらく
梅コマ山本富士子公演の脚本代(川口松太郎)帯付き100万を一晩で使う

スタッフ・キャストのギャラは半額 東宝が支払うことになった
吉村の新宿からの一か月定期代 全額弁償