劇団喜劇座全記録 補遺(南座)
病気する前のことであるから何年前だろう 国立文楽劇場の前にあった(今はもうない)演劇専門の古本屋で劇団喜劇座の全作品のパンフレットを見つけた 帰って詳しく見て見ると ところどころに書き込みがあり、そこから判断すると少し前に亡くなったデイリースポーツ(?)の演劇担当だった土手善夫さんが出所だと判った おそらく暇になったら喜劇座のことをまとめようと考えまとめて残しておいたものと考えられる しかし残された遺族にとっては邪魔になる二束三文の代物で古本屋行となったと容易に想像出来る
しかし僕も持ち前のさぼり癖でゆっくり整理しようと考えていたので段ボールに詰めて家に置いておいた 事情があってしばらくその家には帰らなくなって時間がたった その間息子が結婚して家に置いてあったものすべてを処分され小綺麗な新婚所帯となった(嫁の父親がやってくれたらしい) その後外で病気で倒れ 長く入院したあと家に帰ると綺麗に片づけられ演劇に関する台本・資料など何にもなかった
「劇団喜劇座」のことは気にはなっていてパンフレット類は芦屋雁平さんが全部もっているとの情報を得てまとめる気になったら借りに行こうと思っていた矢先雁平さんが亡くなったとの知らせ(ブログ19思い出カバン 参照)
諦めていた矢先 沢田隆治さんが「私説・大阪テレビコメディ史」を出され その巻末にパンフレットを整理した雁之助の詳しい年譜を載せてくれたお陰で「劇団喜劇座全記録」をまとめることが出来た
ここまでの文章はブログ(256)の前文として載せるべきものだった
ここに「昭和の南座・資料編上中下」という資料がある これによってさらに詳しく補綴してみよう
こと南座だけの資料ではあるが 雁之助の生まれ故郷京都ということも鑑みて・・
昭和39年京都新聞の記事
7・26
芦屋雁之助らで作っていた「劇団笑いの王国」が解散、9月から雁之助・小雁を中心に「劇団喜劇座」を発足 第1回公演は9月中座
昭和39年 10月14日初日 10月25日千穐楽
「劇団喜劇座」京都旗挙げ公演
昼の部11時30分開演 夜の部4時30分開演
尼子成夫作・演出 大塚克三装置 楽譜工房グループ音楽
第一「ちんぴらの唄」一場(やくざの親分金八の家)
金平(芦屋雁平)ネシヤの権(渋谷辰夫)町長(乃木年雄)阿保六(福田一雄)
緋牡丹お竜(沢淑子)お仙(白妙公子)京子(難波章子)
茂木草介作・演出 大塚克三装置 奥村貢音楽
第二「歩兵(ひょこ)」
四場(名人駒八の家 和歌山城内公園 徳之本英五郎の邸 紀勢本線切通し付近)
駒造り柿本八五郎(芦屋雁之助)妻おすが(荒木雅子)息子竜太(芦屋雁平)娘光子(段中南恵)徳之本英五郎(芦屋小雁)木村八段(谷幹一)
藤本義一作 山本禎男演出 大塚克三装置 楽譜工房グループ音楽
第三「トーチカの五人」二場(満州北本営付近のトーチカ内 南地料亭「吉梅」の座敷)
秋山通信兵(芦屋雁之助)玉本伍長(谷幹一)市村一等兵(夢路いとし)平川二等兵(喜味こいし)植松二等兵(小雁)妻篤子(双葉弘子)
中山十戎作 板谷真紀装置 奥村貢・楽譜工房グループ音楽
第四 まげもの喜劇「雁四郎一番手柄」
8景(秋月城外の土塀・城中のギロチン部屋・城内の広場・祇園町・祇園の座敷・
清水寺の前 等が交錯して劇が進行)
松平雁四郎(雁之助)鼠小僧チョロ吉(小雁)目明しいと吉(いとし)与力恋之進(こいし)大原九郎兵衛(谷口完)甚内(西山嘉孝)子分平太(雁平)若殿色吉郎(谷幹一)
観劇料 一等600円 二等400円 三等300円
昭和40年11月1日初日 11月24日千穐楽
劇団結成一周年記念「喜劇座」11月公演
昼の部 11時30分開演(13日より夜の部)
一堺漁人作 尼子成夫脚色・演出 大塚克三装置 加納光記音楽
第一「花嫁修業中」二場
おかよ(雁之助)宗兵衛(佐山俊二)健太郎(小雁)
藤本義一作 山本禎男演出 大塚克三装置 加納光記音楽
第二「雨のひまわり」三場
柿沢松種(雁之助)中川(小雁)可奈子(三原葉子)林(雁平)三津子(桃山みつる)
矢野(由利徹)
和田五雄作演出 大塚克三装置 加納光記音楽
第三 人情喜劇「江戸っ子駕籠や」五場
権三(由利徹)助中(佐山俊二)勘太郎(小雁)小菊(三原葉子)あんま徳市(雁平)
大岡越前守(雁之助)
夜の部4時30分開演(13日より昼の部)
中山十戎作・演出 大塚克三装置 加納光記音楽
第一 「俺は名人」四場
茶店の婆さん(由利徹)水戸黄門(佐山俊二)助さん(雁平)格さん(秋葉浩介)
金兵衛(伊東亮英)
茂木草介作・演出 大塚克三装置 加納光記音楽
第二 「雪山讃歌」四場
医師道朗(雁之助)竹山(小雁)節子(花園ひろみ)まり子(三原葉子)
東本三郎(秋葉浩介)
司馬遼太郎原作 土井行夫脚色 永六輔演出 大塚克三装置 加納光記音楽
第三 「大阪侍」五場
奴留場佐平次(雁之助)番頭長吉(小雁)お妙(花園ひろみ)おきく(三原葉子)
主税(由利徹)与七(佐山俊二)
劇評 京都新聞 11月16日
「大阪侍」の雁之助は適役で肩がこらずに楽しめた 時代は江戸末期でもキャラクターは現代人と相通じるものがあるところが客席の共感を呼んだようだ 融通のきかない田舎侍(由利徹)を相手にワイロや色仕掛けで敵討ちを諦めさせるあたり 侍でありながら大阪町人の根性を身に着けた雁之助の佐平次はたくましいバイタリティーを彷彿させてくれた
(司馬遼太郎の初期の短編「難波村の仇討」を脚色したもの)
一等650円 二等400円 三等300円
昭和41年9月2日初日 9月26日千穐楽
劇団結成二周年記念「劇団喜劇座」九月公演
昼の部11時30分開演 (13日より夜の部)
土井行夫作・演出
第一 「女座長と大根役者」四場
さくら(楠木トシエ)団九郎(伊東亮英)長二郎(秋葉浩介)芳之助(中村歌之助)
高岡(淀川紘平)太田(乃木年雄)
茂木草介作・演出
第二 「踏切の目」六場
村木重兵衛(雁之助)下田課長(小雁)しげの(楠木トシエ)梶(雁平)
梶山みつこ(桃山みつる)北川係長(伊東亮英)
榎本健一原案・監修 島崎健二脚本・演出
第三 「坂本竜馬」六景
坂本竜馬・講釈師(榎本健一)近藤勇(雁之助)桂小五郎(南利明)月形半平太(小雁)
土方歳三(淀川紘平)大工留吉(雁平)お竜(桃山みつる)山岡鉄舟(乃木年雄)
夜の部 4時30分開演(13日より昼の部)
中山十戒作 田村竜三演出
第一「ドンゴな子」三場
次郎(小雁)国一(雁平)三重子(桃山みつる)善造(伊東亮英)よね(白妙公子)
国一の母(藤波章子)金山(雁之助)
藤本義一作・演出 山本禎男演出
第二 怪談「落鮎物語」五場
岡田以蔵(雁之助)利一郎(小雁)お鶴(楠トシエ)律(桃山みつる)吾作(雁平)
五代秀造(南利明)
榎本健一原案・監修 尼子成夫脚本・演出
第三 「孫悟空」八景
孫悟空(榎本健一)八戎(雁之助)沙悟浄(南利明)三蔵法師(雁平)牛魔王(小雁)
「孫悟空」は昭和初期に浅草にて初演 当時爆発的な人気を呼んだエノケンの出世作
往年のように飛んだり跳ねたりとシーンは見られないが序幕では三蔵法師が乗った馬を
ひいて南座の長い花道を引っ込み ファンを驚かせた
一等750円 二等 440円 三等 330円