白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(386) おちょやん(6) 「桂春団治」

2021-05-14 21:01:37 | 松竹新喜劇
  白鷺だより(386)  おちょやん(6) 「桂春団治」

「おちょやん」が終わった 
来週から朝どうやって暮せばいいのか不安である

後半に向かって史実と違う形でどんどんドラマが進行して行く
 
まず天海の浮気の発覚は恐らく昭和25年の3月位だと思うが浪花千栄子はその年の12月に九重京子が子供を生んでからも勿論、翌年の3月まで新喜劇に在団した
天外や座員たちはどうしょうもなく困りはてたことだろう これではいい芝居もあったものじゃない
因みに千栄子は天外との離婚も許さなかった だから生まれた長男は私生児であった 次男三代目天外が生まれた時に離婚が成立した

浪花千栄子は座長夫人として若手育成の意図もあって「いい役」を若手に譲り、「悪い役」や誰も演りたがらない役をこなした それ故彼女には新喜劇においては代表作がない ましてやドラマの様に「お家はんと直吉どん」の主役をやる事は無く千之助、十吾さんはこんなに早く新喜劇を辞めてはいない

ドラマとは違い「桂春団治」は浪花千栄子のラジオ出演より早く書かれている

昭和26年12月公演(11/30〜12/23)
長谷川幸延 原作 「小説桂春団治」より
館直志  脚本・演出

「桂春団治」?景
配役
桂春団治    渋 谷天外
吉本社員戎   曽我迺家明蝶
人力車夫力   曽我迺家五郎八
春団治姉おあき 花村美津子
女房おたま   酒井光子
おとき     滝見すが子
おりゅう    若葉蘭子
池田屋丁稚   藤山寛美

そして浪花千栄子は
昭和27年1月よりNHKBK「アチャコ青春手帖」に参加
(この年ヒットした菊田一夫作「君の名は」によってラジオドラマブーム沸騰)
その好評により
昭和29年12月〜昭和41年3月
NHKBK「お父さんはお人好し」放送    


一方渋谷天外は昭和31年9月その決定版とも云える
「桂春団治」前、後編を発表
配役 変更
おりゅう  石河薫

この台本は天外の昭和47年三一書房「わが喜劇」に収録されている
このあと主役が藤山寛美に変わって平戸敬二が手を加える
藤山直美がおときを演る直美版は主役春団治が霞んだ台本となっている

この昭和31年映画化もされている
映画でも活躍していた浪花千栄子にも出演依頼がくる

昭和31年宝塚映画
脚本  渋谷天外、木村恵吾
監督  木村恵吾

配役  
春団治   森繁久弥
おたま   淡島千景
おとき   八千草薫
おりゅう  高峰三枝子
そして浪花千栄子は姉おあきを演じた
 
かくして千代は父親、継母、天海みんなを許し 新しく娘となったお春と共に生きていくことを示唆して物語は終わった
実際の浪花千栄子は決して天外を許すことなくその煩悩ゆえ弁財天に縋り一生を終えた

さてドラマ「おちょやん」は無事終わった
松竹はいいタイミングで松竹座で「おあきと春団治」を上演を図ったか残念ながらコロナで中止となった
一方そのモデルである松竹新喜劇を救ってくれるのか
これを期に松竹新喜劇に興味を持つ人びとが増えてくれるように願う
そのためにせっかく全国区になったのだから三代目天外、天笑、寛太郎、扇治郎、竹本、八十吉らの奮起が必須だ それにしても扇治郎はTVでも影が薄い