白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(451) 故 千草英子さんのこと

2023-10-14 12:01:30 | 人物

故 千草英子さんのこと

訃報 

千草英子さん (93)本名 梶本英子 元松竹新喜劇劇団員 12日、老衰で死去 松竹家庭劇を経て1991年に新生松竹新喜劇の旗揚げに参加、2014年に退団するまで名脇役として活躍し代表作に「鼓」などがある

僕の千草英子さんの記憶は昭和50年(1975)大阪三越劇場での北條秀司作・演出「王将」の舞台である 僕にとって初めの商業演劇の舞台監督で27歳、彼女は45歳でいわゆる北條天皇の「お気に入り」女優であった その彼女が舞台稽古の最中に役を降ろされて小さな楽屋で泣いた 勿論芝居が不味かった訳ではない 第一幕で「小春」役で出た彼女が第二幕で三吉の後妻役で出て来たのが演出家が気に入らなかったのである 結局津島道子さんを小春の代役に呼んで「解決」したのだが けだし、がめつい後妻役は目を見張る名演技で千秋楽には僕と同じく「北條賞」を授賞した

そして彼女が家庭劇から新生松竹新喜劇に入って来た時を同じくして僕も新喜劇の芝居を手伝うようになった 新喜劇での代表作「鼓」は平成7年と平成23年日本香堂で演出させて貰った 千草英子さんの大ファンであった脚本家の池田政之さんは彼女を主役に「おばあちゃんの立候補」(平成8年)を書いた(演出は僕) 

池田さんは僕のこのブログのファンである 特に松竹新喜劇を愛するが故の悪態記事がお気に入りだ

その池田さんのブログの千草さんへの追悼文を読んで思い出したが 千草さんの新喜劇時代の代表作は「鼓」だけではない 「お祭り提灯」の世話役お勘である  元々男の役( 勘太) を女性に変え「お勘」、後年 この芝居を新橋演舞場で演った時、大阪を代表するコメディエンス紅壱子( 当時は萬子かな)  がゲスト出演でこの役を演じ、その怪演ぶりを絶賛された 紅曰く「松竹座でこの役を千草英子さんが演ったのをたまたま観てまして いつか演りたいとおもってました」と言った こうして芸は継承されるか?

新喜劇時代 彼女に師事して弟子になり名前をもらったのが千草明日翔である

彼女と同じくミヤコ蝶々、京唄子、芦屋雁之助公演などで脇役を通し たまには殺陣の指導もした河波勝は彼女のご主人である(平成14年没)

芝居が撥ね二人並んで中座の楽屋(これはもう中座でなかったら駄目だ)を出て行く姿を何度みたことか

家庭劇時代からの盟友高田次郎さんと同様新喜劇においてなくてはならぬ脇役に徹した、こんな女優はもう二度と出て来ないだろう    合掌

 

 

 

 


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