白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(405) 梅田コマの思い出の脚本家、演出家たち

2022-04-13 13:23:21 | 吉村正人資料

 梅田コマの思い出の脚本家、演出家たち

津村健二(ツムケンせんせ)

なにかの回に書いたが梅田コマに入って最初の作品は田村3兄弟公演、沢島忠脚本、津村健二演出の「賀茂川囃子」だ、沢忠先生はその後ひばり公演でお付き合いする(参照、ひばりのファミリー)が津村先生は東宝演劇部所属、菊田一夫先生の弟子筋に当たる方でオーソドックスな演出でソツがないので重宝がられ、梅田コマでは「花の道頓堀囃子」「がめつい奴」「チータの弁天小僧」「ご存知一心太助」(萬屋)などがある 奥さんは往年のアイドル女優の南風久子

原譲二(北島三郎)

北島さんがこのペンネームを使い始めたのはショウの演出が新コマの土井丈児から北島さん本人に代わったことによる それまでに自分の歌の作詞などに使っていたと思われる 芝居も僕が参加して3年目にそれまで淀橋太郎作、演出だったのが原譲二作・演出となる 脚本は、梅田コマの安達靖利が安達靖人名で参加していたようだが実際はどのように書いていたのかは判らない 弟子、松原のぶえや山本譲二などの芝居は北島三郎名義にしていた

安達靖人(安達靖利) 

北島専属の脚本書きだと思われがちだがそこは文藝春秋1幕物脚本賞入選作家のキャリアだ 鶴田浩二や村田英雄の作品(なかでも総長賭博を脚色した「傷だらけの人生」や名曲「夫婦春秋」)、木暮実千代の「花の道頓堀囃子」などの名作が多い

花登筺

僕がコマに入った頃は関テレ名作劇場と冠したヒット作「どてらい奴」や「あかんたれ」の舞台化が多く、それも訳の判らぬ注射の打ちながらの演出だった「お染はん」やコマ歌舞伎30周年記念「淀屋橋物語」などの名作が書けるのだからゆっくり取り組んで欲しかった なにかに取り憑かれ生き急いでいるようだった 享年55歳なんて信じられない なおコマの台本印刷を一手に扱っていた杉井堂には先生のミミズが這ったような原稿を読める方が数人いた

逢坂勉(山像信夫)

電話帳と云われたとてつもない分厚い台本「夫婦善哉」の作者が山像さん(ガタやん)だ 関テレの人気ディレクターだった 大学(同やん) の先輩だった花登筺に気に入られ「どてらい奴」などを演出、女優野川由美子と結婚したのは1971年 この「夫婦善哉」(竹内伸光演出)から黄金コンビ野川由美子✕藤田まことが始まる このコンビで名鉄ホールのレギュラーとなり ガタやんの口癖「理屈よりロマン」から取った演劇集団「ロマン舎」を結成、

北条秀司

コマに入る2年前、緒方拳の「王将」でお世話になった その時戴いた「北条賞」は僕の勲章だ コマでは扇雀のコマ歌舞伎「祇園囃子」「西陣息子」でご一緒したが、特にありがたかったのはコマに入ってスグの頃 東宝が植木等で王将を演ったとき先生が「そんな些細なことはコマにいる吉村君に聞き給え、彼なら何でも知っている」と言って戴いて梅田コマに吉村ありと東宝サイドに思わせたことである

大西信行

文学座の「怪談牡丹灯篭」で名前だけは知っていたが戌井一郎先生演出の岡田茉莉子主演「ご存知百人斬り悲恋花 吉原草紙」で初めてご一緒した 正岡容門下で当時水戸黄門や大岡越前などのTVドラマの売れっ子だった 三波春夫と意気投合して「人情ばなし塩原太助」や「人情ばなしくらやみの丑松」を作演出した 中村玉緒のために書いた「浪花女」は好評で御園座でも再演された

戌井市郎

いい女優を呼ぶためにこの人の名前が必要だった 岡田茉莉子「西鶴一代女」「吉原草紙」「滝の白糸」朝丘雪路「マダム貞奴」有馬稲子「鹿鳴館」などなど 後に池端慎之介(ピーター)、安井昌二で「一本刀土俵入り」を演ったとき殆ど居眠りをなさっていたためピーターと勝手に芝居を変えたことがあった コマの当時もお年ゆえそんな兆候があったが「鹿鳴館」だけは違った 初演演出の松浦竹夫や三島由紀夫に対する抵抗感溢れる演出であった

日向鈴子(ミヤコ蝶々) 

1973年6月に梅コマで公演した「女ひとり」は公演中モデルの南都雄二が死んだこともあり空前の大ヒット 蝶々スクールの誕生のキッカケとなった 僕がコマに入る前 地方公演で初めてご一緒した( 「えらいっちゃ」)時「お前吉村云うんか、死んだ雄さんも吉村やった、吉村朝治いうんや」と声を掛けて貰った コマに入って蝶々スクールの準備をやらされた 備品は全て高津小道具に注文した 日向鈴子作・演出は「おんな寺」と「河内の女」+「ショウ」の二本だが梅コマのキャパは蝶々さんの力をもってしても広すぎた この時点ですでに中座25年連続公演は始まっていた この人にとって芝居の中身もキャパも丁度良かったのである 名古屋では名鉄ホールがメインでよくお手伝いした

塩田誉之弘

島倉千代子が借金のためマネジメントを細木数子のミュージックオフィスに移籍したため今まで東京は新コマ、大阪は新歌舞伎座となっていたが東西共にコマで公演となったため新歌舞伎座で演出をしていた塩田さんが梅コマに来た 僕はトップホットのコマ新喜劇の助っ人の時からよく知っていたので演出助手についた その頃先生は株に凝っていて短波ラジオをずっと聴いていたので演出は殆ど僕に任せてくれた 僕にとって実践の機会を与えて戴いて感謝している 細木数子は光星龍のペンネームでショウには口出ししていたようだがこと芝居に関してはひたすら僕たちに「ヨイショ」してくれて習い始めた占いの練習台として使われた この後この占いで天下を取るとは思いもしなかった 塩田先生とはこのあと京唄子や山城新伍の公演でコンビを組ませて戴いた

竹内伸光(シンコウサン)

 僕が入った頃は文芸部長の肩書だった 関学の先輩で僕が入っていた「劇団エチュード」の創立者だった方だ 菊田一夫に引き抜かれ宝塚から出来たばかりの梅コマの文芸部に入れられた 芝居は勿論ショウも担当した 入ったばかりの僕に小柳ルミ子主演のミュージカルの台本を書かせて頂いた 元の文字が1字もないぐらい真っ赤に直され「名前だけは残しといたからな」と云われた

これが僕の梅コマ(新コマは何本かあるが)におけるたった一本の作品となった

 

 

 

 

 

 

 


白鷺だより(334)吉村正人演出作品年表

2018-08-24 19:24:04 | 吉村正人資料
吉村正人演出作品 年表

平成5年 45歳
近鉄劇場   「ほっといてんか」 中川雅夫どんちょう会
アルカイック・オクト「大阪で生まれた女」松竹芸能 香坂みゆき

平成6年
南座    「お初天神」  園佳也子
新橋演舞場 「滝の茶屋にて」松竹新喜劇
中座     「朗らかな嘘」松竹新喜劇
中座     「おくてと案山子」松竹新喜劇
中座    「瀬川瑛子オンステージ 浪花に花咲く女の夢」
新コマ   「オンステージ 心・愛 ありがとう」松原のぶえ

平成7年
日本香堂  「赤い風車と花笠道中」京唄子
中座     「春は浮かれて」 松竹新喜劇
南座     「秋の扇」松竹新喜劇 淡島千景
新橋演舞場  「秋の扇」松竹新喜劇 淡島千景
中座    「鼓」「噂双紙 左甚五郎」松竹新喜劇
中座    「皺だらけの天使」「愚兄愚弟」松竹新喜劇
中座    「ある女将の詩 くちなしの花」京唄子
関電ミュージカル「冒険たからじま」阪神大震災のため公演中止
中座    「瀬川瑛子オンステージ・希望・愛・夢」
近鉄劇場 好色一代男より「好きにしなはれ」どんちょう会


平成8年

日本香堂  「浪花恋歌 夫婦しゃみせん」安井昌二
南座    「おばあちゃんの立候補」「花ざくろ」松竹新喜劇
中座    「らくだ」            松竹新喜劇
中座    「ある女将の詩 浪花のれん」  京唄子
中座    「三婆」大阪弁訳 演出補 かしまし娘
中座    「雨やどり」「瀬川瑛子オンステージ 夢・愛・おんな・・・30年」
中座    「聖まり子公演」
近鉄小劇場 「百両首と一文銭」どんちょう会
名古屋南文化小劇場「百両首と一文銭」どんちょう会


平成9年

中座     「聖まり子公演」
日本香堂  「城崎温泉繁盛記いろはにほへと」長門勇 三浦布美子
中座     「人生双六」 松竹新喜劇  s
南座     「京の夕映え」松竹新喜劇 京唄子
明治座    「心の綴り歌」藤田まこと
中座     「花嫁衣裳」 京唄子
中座  「任侠上州しぐれ」 「97ヒットパレード」三門忠治
南座・地方巡業 「三婆」かしまし娘
中座     「河内けんか唄」どんちょう会


平成10年 50歳

日本香堂  「森の石松血笑旅」京唄子
南座    「浪花のれん」  京唄子
中座     「石松道中双六」京唄子
中座    「早苗ちゃんの日記」第一回櫂の会 甲斐
中座     「大阪無情」「三門忠治オンステージ」
アートソフィア 「最上川一路」どんちょう会
中座     「最上川一路」 どんちょう会
中座     「だんじりの佐吉」どんちょう会

平成11年
日本香堂  「お初天神」   園佳也子
南座   「なにわ三姉妹」 かしまし娘
中座   「母恋し浪花のギター」「三門忠治・男心を謳う」
中座  「河内けんか唄 怒涛編」どんちょう会
近鉄小劇場「お伊勢参り・お伊勢帰り」どんちょう会

平成12年
日本香堂   「浪花人情 花のぬくもり」 安井昌二
名鉄ホール  「浪花のれん」「唄子 夏姿七変化」京唄子
名鉄ホール  「なにわ看護婦物語・天使とお地蔵さん」かしまし娘
大阪厚生年金ホール 「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
新コマ    「お染久松」「瀬川瑛子のときめきショウタイム」
新コマ    「深川恋キツネ」「洋子熱唱ヒットパレード2000」長山洋子
近鉄劇場  「酒の歌 男の歌」 どんちょう会
近鉄小劇場 「母恋三次」   どんちょう会

平成13年
日本香堂  「夜明けの歌 毎日香物語」山口崇
松竹座   「朗らかな嘘」      松竹新喜劇
名鉄ホール 「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
名鉄ホール 「忠治?と言われた男」「花火の大輪」芦屋雁之助 休演 代役 天外
新コマ   「竜馬が疾る 頓馬も行く」 前川清
劇場飛天  「竜馬が疾る 頓馬も行く」
サンケイホール「忠臣蔵外伝 大阪昆布屋人情話」
ヘップホール「かんにんしてや」  永田かつ子
ヘップホール「バラードはお好き?」南条好輝
近鉄劇場「飛田大門通り」 どんちょう会

平成14年
日本香堂  「がめつい奴」   園佳也子
巡業   「花も枯葉も踏み越えて」かしまし娘
名鉄ホール  「舟唄恋酒梅の酒」「京唄子 寿 初春錦絵姿」京唄子
わっはホール「叶麗子芸能生活15周年記念」
近鉄劇場「はるかなる虹」どんちょう会

平成15年
日本香堂  「裏町の友情」「お種と仙太郎」松竹新喜劇
わっはホール「これぞ千紗花流」  森千紗花
名鉄ホール 「駕籠やと殿様」京唄子 新喜劇
巡業    「駕籠やと殿様」京唄子 新喜劇
名鉄ホール 「とんてんかん・とんちんかん」「春爛漫 夢燦燦」芦屋雁之助
エキスポランドお化け屋敷「化け猫騒動・呪われた有馬屋敷」
わっはホール「なにわ今昔」   どんちょう会
近鉄劇場 「大阪の夢ここにあり」どんちょう会
三越劇場 「大阪の夢ここにあり」どんちょう会


平成16年

日本香堂  「大人の童話」「お祭り提灯」松竹新喜劇
名鉄ホール 「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
三越劇場  「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
名鉄ホール 「人情まげもの喜劇 どんこな子」芦屋小雁
わっはホール「芸者染吉」    森千紗花
エキスポランド お化け屋敷「八つ墓村」
吹田メイシアター「かんにんしてや」永田かつ子 南条好輝
わっはホール「負けてイギョラ」  紅萬子
御堂会館 「豊後のおひろ 只今参上」舞ひろこ
全国巡業 「フォ―リーブスミュージカル・人生は一度きりだから」
わっはホール「情、かんにん」どんちょう会

平成17年
エキスポランド「犬神家の一族」
日本香堂「人生双六」「駕籠や捕物帳」松竹新喜劇
通天閣歌謡劇場 「がんばれ 浪花のおばちゃんたち+おっちゃん2」
北陸巡業「花も枯葉も踏み越えて」かしまし娘
名鉄ホール「清く・正しく・美しく」かしまし娘
南座「清く・正しく・美しく」  かしまし娘
松竹座「サマーストーム」 関ジャニ∞
文楽劇場 「天神橋」どんちょう会
わっはホール「親子色好み」どんちょう会


平成18年

エキスポランド「獄門島」
日本香堂 「銀のかんざし」水谷八重子 天外
通天閣歌謡劇場「がんばれ浪花のおばちゃん+おっちゃん2赤いひなげし咲いたとて」
文楽劇場「上州土産百両首」どんちょう会


平成19年

日本香堂「夫婦善哉」 林与一 沢田雅美
名鉄ホール「おんなの花時計」かしまし娘
文楽劇場 「岸和田だんじり物語」どんちょう会


平成20年 60歳

日本香堂  「浪花のれん」京唄子
わっはホール「蝶子」   紅萬子
わっはホール「通天閣歌謡道パート3風にさすらう親子草」森千紗花
文楽劇場「あしたの夢」どんちょう会

 
平成21年
 この年2月吉村 大動脈乖離で倒れ入院
日本香堂(企画のみ)「じゅんさいはん」「お色気噺 お伊勢帰り」水谷 松竹新喜劇
わっはホール「灰の中から三億円」森千紗花
文楽劇場 「お色気冷や汗道中」どんちょう会 脚本のみ


平成22年

日本香堂 「江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし」水谷八重子
文楽劇場 「あんな親、こんな親」どんちょう会

平成23年
日本香堂 「鼓」「八人の幽霊」松竹新喜劇
そごう劇場 「通天閣歌謡道パート4 震災は忘れた頃にやってくる」
エルシアター 「幸子」光岡洋

平成24年
日本香堂  「月夜の一文銭」左とん平
文楽劇場「夢・めぐりあい」どんちょう会


平成25年

日本香堂  「江戸みやげ 名代夫婦餅ものがたり」加藤茶
新大阪メルパルクホール「島立ち」光岡洋


平成26年

日本香堂  「大当たり 高津の富くじ」松竹新喜劇 水谷八重子

平成27年
日本香堂   「ゆうれい長屋は大騒ぎ」左とん平


平成28年

中日劇場  「ゆうれい長屋は大騒ぎ」左とん平
日本香堂   「愛のお荷物」脚本 演出は成瀬芳一 水谷八重子
大丸心斎橋劇場「スーパー日舞」花園直道


平成29年

日本香堂   「「味の家」の人びと」左とん平


平成30年
 70歳
日本香堂   「明日の幸福」企画のみ 演出は成瀬芳一 水谷八重子


令和元年
  
   日本香堂   「煙が目にしみる」熊谷真実