白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(335)シネマクラッシック(10)「張込み」

2018-08-29 18:28:28 | 映画
シネマクラッシック(10) 張込み



大木実さんとは梅田コマでの1978年(昭和53年)の「傷だらけの人生」と翌年の名鉄ホ―ルでの「お天道さん見ててや」(昭和54年)でご一緒した
「傷だらけの人生」は笠原和夫の名作「総長賭博」を劇化した作品で彼の役は映画では若山富三郎が演じた役で準主役の役だった 舞台経験もあまりないようでカチカチの様子が手に取るように判る 決して上手い役者とは言えなかったが 翌年ご一緒した時はみなしごを集めて面倒を見る「おやじさん」の役で生き生きとした演技だった

さてこの度 YouTubeにアップされた松本清張原作 野村芳太郎監督 大木実主演「張込み」をじっくり見た

 そのころ大木実はスター鶴田浩二が松竹を辞めたため新松竹三羽鴉〈前三羽烏は上原謙、佐分利信、佐野周二)の一人として佐田啓二、高橋貞二の仲間入りしたばかり 
いわゆる大根として有名であったがこの映画では目を見張る演技を見せる

松本清張は昭和30年頃 たまたま読んだ新聞記事をヒントにこの原作短編を書いた
その記事は東京の下町で起った強盗事件の犯人が見付かった主人を殺して逃走 被疑者は九州の某県のある町に家があり一年前妻子を残して上京していたことが判明 捜査員を2名被疑者の家に張込みすることになったという記事であった この設定を多少変更して犯人と恋仲であった女性が他家に嫁いでいるという設定に変えた
原作では張込みは柚木刑事一人であるが「張込み」は決して一人ではしないという規則があり それを原作者松本清張に指摘したら納得したので 映画ではもう一人宮口精冶の下岡刑事をプラスした(原作では下岡刑事は犯人の実家を張込みに行った設定)
また原作ではS市となっているが映画では佐賀市とはっきりさした 

この映画の助監督に付いた山田洋次は当時他の助監督仲間から「監督の才能がないから辞めたら」と言われていて 野村に相談したところシナリオを書くように勧められ この映画が縁で橋本忍に弟子入りした 後に「ゼロの焦点」「砂の器」などを二人で共作した
 
映画は 冒頭10分ほど横浜から佐賀県鳥栖まで一泊二日の移動をリアルに延々と見せる
(脚本橋本忍)懐かしい食堂車もあり なるほど新幹線以前の移動は大変だったと思わせる 佐賀市について 丁度いい具合(目的の家の玄関、庭先が見える)の旅館に潜り込み張込みを開始してやっとタイトル
この電車には天井の扇風機が辛うじて廻っているだけで 勿論冷房はない
煙で鼻の穴が真っ黒のなるのを我慢して窓を開けるしかない
この移動中一番多いセリフ「暑い、暑い!」

着いた旅館にももちろんクーラーもない時代 扇風機らしきものもない(この時代我が家にも扇風機はなかったと思う) 開けっ放しの窓から入って来る生暖かい風のみ    
二人の一番多いセリフ「暑い、暑い!」

犯人石井(田村高広)の元恋人さだ子(高峰秀子)はかなり年上の厳格な銀行員の亭主から朝渡される一日百円の生活費を貰い子供の世話をしながら規則正しい生活を送っている
これもこの時代僕が親から貰っていた「お小遣い」の額だ
柚木と共に戦後一般市民がどんな生活をしていたか じっくり観察出来る 
そんなさだ子が男の前で豹変する 石井と合流して二人で温泉郷へと生き生きとして楽し気なさだ子 それまでと同じ人物とは思えない 女の方から男の胸に飛び込みキスをせがむ 「家庭を捨ててあなたと一緒に行く」と迫る
柚木にも一緒になるのを躊躇している恋人(高千穂ひずる)がいる
柚木は明日からあの単純な日常に戻ると知りながら地元の警察の協力を得て さだ子の目の前で石井を逮捕する

 刑事柚木が吸うタバコは「今日も元気だ タバコがうまい」の「いこい」 
この年新発売30円(戦前にあったのは「憩」)

歌が溢れている映画である おの時代 僕の育った名張の街はこんなに音はなかった
旦那から渡される一日商店街に流れる「港町十三番地」(ひばり)「一本刀土俵入り」(三橋美智也)「愛ちゃんはお嫁に」(鈴木三重子)広場でやっているサーカスのジンタ(「天然の美」)ハーモニカ演奏の「お月さんこんばんは」 
民放のラジオ番組「民放まつり」中継 「君はマドロス海つばめ」(ひばり)「早く帰ってこ」(青木光一)
温泉場近くの子供たちが歌う「故郷」

ラストは佐賀駅から捕まえた石井を連行した刑事二人が乗り込む蒸気機関車の汽笛にエンドマークが入る



白鷺だより(334)吉村正人演出作品年表

2018-08-24 19:24:04 | 吉村正人資料
吉村正人演出作品 年表

平成5年 45歳
近鉄劇場   「ほっといてんか」 中川雅夫どんちょう会
アルカイック・オクト「大阪で生まれた女」松竹芸能 香坂みゆき

平成6年
南座    「お初天神」  園佳也子
新橋演舞場 「滝の茶屋にて」松竹新喜劇
中座     「朗らかな嘘」松竹新喜劇
中座     「おくてと案山子」松竹新喜劇
中座    「瀬川瑛子オンステージ 浪花に花咲く女の夢」
新コマ   「オンステージ 心・愛 ありがとう」松原のぶえ

平成7年
日本香堂  「赤い風車と花笠道中」京唄子
中座     「春は浮かれて」 松竹新喜劇
南座     「秋の扇」松竹新喜劇 淡島千景
新橋演舞場  「秋の扇」松竹新喜劇 淡島千景
中座    「鼓」「噂双紙 左甚五郎」松竹新喜劇
中座    「皺だらけの天使」「愚兄愚弟」松竹新喜劇
中座    「ある女将の詩 くちなしの花」京唄子
関電ミュージカル「冒険たからじま」阪神大震災のため公演中止
中座    「瀬川瑛子オンステージ・希望・愛・夢」
近鉄劇場 好色一代男より「好きにしなはれ」どんちょう会


平成8年

日本香堂  「浪花恋歌 夫婦しゃみせん」安井昌二
南座    「おばあちゃんの立候補」「花ざくろ」松竹新喜劇
中座    「らくだ」            松竹新喜劇
中座    「ある女将の詩 浪花のれん」  京唄子
中座    「三婆」大阪弁訳 演出補 かしまし娘
中座    「雨やどり」「瀬川瑛子オンステージ 夢・愛・おんな・・・30年」
中座    「聖まり子公演」
近鉄小劇場 「百両首と一文銭」どんちょう会
名古屋南文化小劇場「百両首と一文銭」どんちょう会


平成9年

中座     「聖まり子公演」
日本香堂  「城崎温泉繁盛記いろはにほへと」長門勇 三浦布美子
中座     「人生双六」 松竹新喜劇  s
南座     「京の夕映え」松竹新喜劇 京唄子
明治座    「心の綴り歌」藤田まこと
中座     「花嫁衣裳」 京唄子
中座  「任侠上州しぐれ」 「97ヒットパレード」三門忠治
南座・地方巡業 「三婆」かしまし娘
中座     「河内けんか唄」どんちょう会


平成10年 50歳

日本香堂  「森の石松血笑旅」京唄子
南座    「浪花のれん」  京唄子
中座     「石松道中双六」京唄子
中座    「早苗ちゃんの日記」第一回櫂の会 甲斐
中座     「大阪無情」「三門忠治オンステージ」
アートソフィア 「最上川一路」どんちょう会
中座     「最上川一路」 どんちょう会
中座     「だんじりの佐吉」どんちょう会

平成11年
日本香堂  「お初天神」   園佳也子
南座   「なにわ三姉妹」 かしまし娘
中座   「母恋し浪花のギター」「三門忠治・男心を謳う」
中座  「河内けんか唄 怒涛編」どんちょう会
近鉄小劇場「お伊勢参り・お伊勢帰り」どんちょう会

平成12年
日本香堂   「浪花人情 花のぬくもり」 安井昌二
名鉄ホール  「浪花のれん」「唄子 夏姿七変化」京唄子
名鉄ホール  「なにわ看護婦物語・天使とお地蔵さん」かしまし娘
大阪厚生年金ホール 「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
新コマ    「お染久松」「瀬川瑛子のときめきショウタイム」
新コマ    「深川恋キツネ」「洋子熱唱ヒットパレード2000」長山洋子
近鉄劇場  「酒の歌 男の歌」 どんちょう会
近鉄小劇場 「母恋三次」   どんちょう会

平成13年
日本香堂  「夜明けの歌 毎日香物語」山口崇
松竹座   「朗らかな嘘」      松竹新喜劇
名鉄ホール 「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
名鉄ホール 「忠治?と言われた男」「花火の大輪」芦屋雁之助 休演 代役 天外
新コマ   「竜馬が疾る 頓馬も行く」 前川清
劇場飛天  「竜馬が疾る 頓馬も行く」
サンケイホール「忠臣蔵外伝 大阪昆布屋人情話」
ヘップホール「かんにんしてや」  永田かつ子
ヘップホール「バラードはお好き?」南条好輝
近鉄劇場「飛田大門通り」 どんちょう会

平成14年
日本香堂  「がめつい奴」   園佳也子
巡業   「花も枯葉も踏み越えて」かしまし娘
名鉄ホール  「舟唄恋酒梅の酒」「京唄子 寿 初春錦絵姿」京唄子
わっはホール「叶麗子芸能生活15周年記念」
近鉄劇場「はるかなる虹」どんちょう会

平成15年
日本香堂  「裏町の友情」「お種と仙太郎」松竹新喜劇
わっはホール「これぞ千紗花流」  森千紗花
名鉄ホール 「駕籠やと殿様」京唄子 新喜劇
巡業    「駕籠やと殿様」京唄子 新喜劇
名鉄ホール 「とんてんかん・とんちんかん」「春爛漫 夢燦燦」芦屋雁之助
エキスポランドお化け屋敷「化け猫騒動・呪われた有馬屋敷」
わっはホール「なにわ今昔」   どんちょう会
近鉄劇場 「大阪の夢ここにあり」どんちょう会
三越劇場 「大阪の夢ここにあり」どんちょう会


平成16年

日本香堂  「大人の童話」「お祭り提灯」松竹新喜劇
名鉄ホール 「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
三越劇場  「花も枯葉も踏み越えて」 かしまし娘
名鉄ホール 「人情まげもの喜劇 どんこな子」芦屋小雁
わっはホール「芸者染吉」    森千紗花
エキスポランド お化け屋敷「八つ墓村」
吹田メイシアター「かんにんしてや」永田かつ子 南条好輝
わっはホール「負けてイギョラ」  紅萬子
御堂会館 「豊後のおひろ 只今参上」舞ひろこ
全国巡業 「フォ―リーブスミュージカル・人生は一度きりだから」
わっはホール「情、かんにん」どんちょう会

平成17年
エキスポランド「犬神家の一族」
日本香堂「人生双六」「駕籠や捕物帳」松竹新喜劇
通天閣歌謡劇場 「がんばれ 浪花のおばちゃんたち+おっちゃん2」
北陸巡業「花も枯葉も踏み越えて」かしまし娘
名鉄ホール「清く・正しく・美しく」かしまし娘
南座「清く・正しく・美しく」  かしまし娘
松竹座「サマーストーム」 関ジャニ∞
文楽劇場 「天神橋」どんちょう会
わっはホール「親子色好み」どんちょう会


平成18年

エキスポランド「獄門島」
日本香堂 「銀のかんざし」水谷八重子 天外
通天閣歌謡劇場「がんばれ浪花のおばちゃん+おっちゃん2赤いひなげし咲いたとて」
文楽劇場「上州土産百両首」どんちょう会


平成19年

日本香堂「夫婦善哉」 林与一 沢田雅美
名鉄ホール「おんなの花時計」かしまし娘
文楽劇場 「岸和田だんじり物語」どんちょう会


平成20年 60歳

日本香堂  「浪花のれん」京唄子
わっはホール「蝶子」   紅萬子
わっはホール「通天閣歌謡道パート3風にさすらう親子草」森千紗花
文楽劇場「あしたの夢」どんちょう会

 
平成21年
 この年2月吉村 大動脈乖離で倒れ入院
日本香堂(企画のみ)「じゅんさいはん」「お色気噺 お伊勢帰り」水谷 松竹新喜劇
わっはホール「灰の中から三億円」森千紗花
文楽劇場 「お色気冷や汗道中」どんちょう会 脚本のみ


平成22年

日本香堂 「江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし」水谷八重子
文楽劇場 「あんな親、こんな親」どんちょう会

平成23年
日本香堂 「鼓」「八人の幽霊」松竹新喜劇
そごう劇場 「通天閣歌謡道パート4 震災は忘れた頃にやってくる」
エルシアター 「幸子」光岡洋

平成24年
日本香堂  「月夜の一文銭」左とん平
文楽劇場「夢・めぐりあい」どんちょう会


平成25年

日本香堂  「江戸みやげ 名代夫婦餅ものがたり」加藤茶
新大阪メルパルクホール「島立ち」光岡洋


平成26年

日本香堂  「大当たり 高津の富くじ」松竹新喜劇 水谷八重子

平成27年
日本香堂   「ゆうれい長屋は大騒ぎ」左とん平


平成28年

中日劇場  「ゆうれい長屋は大騒ぎ」左とん平
日本香堂   「愛のお荷物」脚本 演出は成瀬芳一 水谷八重子
大丸心斎橋劇場「スーパー日舞」花園直道


平成29年

日本香堂   「「味の家」の人びと」左とん平


平成30年
 70歳
日本香堂   「明日の幸福」企画のみ 演出は成瀬芳一 水谷八重子


令和元年
  
   日本香堂   「煙が目にしみる」熊谷真実



白鷺だより(333)演出家 津川雅彦

2018-08-09 16:35:29 | 人物
演出家 津川雅彦

 4月27日奥さんの朝丘雪路が亡くなってからおおよそ三月後8月4日 後を追うように津川も亡くなった 嫁に先立たれた男は早死にする よくある話だ 二人に溺愛された真由子だけが残された
朝丘が一般男性との離婚(たしか男の子がいたはずだ)、津川はデヴュ夫人との別れ、
そんな二人がひっつき(1973年)すぐにでも別れると思っていたが45年も「もった」

 歌舞伎俳優でマキノプロダクションのスターであった沢村国太郎とマキノ省三の娘マキノ智子の間に生まれ 生まれついての芸能一家で 子役で多くの映画に出演(本名の加藤雅彦、沢村マサヒコ)していた 父の妹に沢村貞子 弟に加東大介 
津川雅彦としての本格デビューは兄長門裕之主演の「太陽の季節」が大ヒットして そこでチョイ役で出ていた石原裕次郎主演作「狂った果実」の主人公の弟役で名付け親は原作者の石原慎太郎 太陽の季節の主人公 津川竜哉(兄がやった役)からとった
この翌年今上天皇(当時皇太子)の若き日の姿を描く「孤獨の人」の主役(ご学友で原作者の藤島泰輔がモデルの役)に出演した

役者津川としては色々思い出があるが 
ここでは映画監督としてマキノ雅彦名義でやった3本とあまり資料として残っていない舞台演出家としての資料を残したい

祖父マキノ省三や叔父のマキノ正博へのオマージュとしてマキノ雅彦として監督した

2005年「寝ずの番」中島らも原作 6代目笑福亭松鶴の葬儀がモデル
中井貴一、木村佳乃 富司純子 長門裕之ら
オメコ以下猥語が飛び交うケッタイな映画だった
2本批評家大賞 特別監督賞 受賞 新藤兼人賞金賞 受賞



2007年「次郎長三国志」村上元三原作 
叔父であるマキノ雅弘(正博)のヒット作次郎長三国志シリーズを豪華キャストで
中井貴一、鈴木京香 まあまあの面白さ 
昔のメンバー(小堀明男 森繁久彌、加東大介、廣澤虎造 田中春夫)の方が良かった



2009年「旭山動物園物語~ペンギンが空を飛ぶ」
西田敏行 (未見だがヒットはしなかった)


マキノ雅彦名義の映画監督作品は以上の三本である
映画に関してはちょっと調べたら資料はいくらでも出て来るが舞台演出のそれは皆無である

 津川が御園座の舞台の演出をやるという話を聞いて不安も心配もなかった なぜなら彼の横には我らが憧れの「舞台監督」河村辨三郎がいたからである 彼が舞台監督を辞めた理由は舞台より家庭を取ったからである 超売れっ子の彼は一年の殆どを出張で家を空けることが多く家庭を顧みる余裕がなかった そんなときに知り合った津川さんが新しい会社(グランパパ)を作るので手伝ってほしいということで「渡りに船」とキッパリ舞監生活を辞めた 不慣れな「おもちゃ会社」もこなし 朝丘、津川という売れっ子のマネージャーもこなしていた

1988年2月御園座 朝丘雪路新春特別公演
川口松太郎作 マキノ雅弘脚本 津川雅彦演出
「明治一代女」朝丘雪路(お梅)板東八十助(沢村仙枝)長門裕之(巳之吉)沖田浩之
       仲雅美 行友勝江 香川桂子 旭輝子 清水彰
ロッキー構成 津川雅彦演出 花柳衛彦・西崎真由美振付
「ザ・雪路まつり」

1989年3月(平成元年)御園座 朝丘雪路新春特別公演
山本周五郎作「五辨の椿」より 岡本紋弥脚本 津川雅彦脚本・演出
「おしのぼさつ」~慕殺哀話~ 朝丘雪路(おしの)長門裕之 永島敏行 沖田浩之
        旭輝子 佐野浅夫 清水彰 阿井三千子 
ロッキー構成 津川雅彦構成・演出 花柳衛彦振付
「ザ・雪路まつり パートⅡ」

1990年6月 朝丘雪路特別公演 竹脇無我特別参加
津川演出によるニューウエーブ演劇第三弾
泉鏡花作「婦系図」より マキノ雅弘・岡本紋弥脚本 津川雅彦脚本・演出
「お蔦主税」 朝丘雪路(お蔦)竹脇無我(主税)長門裕之(酒井俊蔵)小鹿番
       香川桂子 旭輝子 小鹿みき 小野さやか
宇崎竜童の音楽 高田一郎の美術 秋本道男の照明 従来の新派とは一味ふた味違う出来
ロッキー構成 津川雅彦構成・演出
「ザ・雪路まつりパートⅢ}

1991年5月 朝丘雪路特別公演 芸能生活四十周年記念 山本譲二特別参加
泉鏡花原作 マキノ雅弘・岡本紋弥脚本 津川雅彦脚本・演出
「滝の白糸」 朝丘雪路(白糸)山本譲二(村越欣弥)長門裕之(特別参加)
      小鹿番 山田吾一 旭輝子 清水彰
津川雅彦構成・演出 花柳衛彦 振付
「艶姿夏まつり」

この公演は悪友 山本譲二が出ていたので御園座まで見に行った
宇崎竜童の主題歌がなりひびき 構成舞台にしてテンポよく進行していた
津川演出は我々には心地よい刺激を与えてくれていた

1992年8月 朝丘雪路特別公演 御園座出演連続五年記念 竹脇無我特別参加
川口松太郎脚本 岡本紋弥脚色 津川雅彦脚色・演出
「風流深川唄」朝丘雪路 竹脇無我 長門裕之 小山明子 旭輝子 清水彰
津川雅彦構成・演出 花柳衛彦振付
「夏姿雪路まつり」


このあと朝丘雪路は御園座で2年間座長公演をやるが その演出には津川雅彦の名前はない ショウは本人(深水美智雪名義)の構成で演出に河村辨三郎の名前がある
何故消えたかは判らないがこの6月御園座会長長谷川栄一さんが亡くなったことが影響しているのかも

津川演出は御園座では以上の五本だが そのほかの所でやっているかも知れない
津川演出は決して成功したとは言えないが我々にとって「心地よい刺激」といえるものであった

と ここまで書いてきて偶然グランパパのホームページに記録として残された津川のプロフィールの中に「舞台演出」をまとめた年表が存在することを知った それによると演出家デビューは1976年 名鉄ホール他でやった「YUKIJI ASAOKAリサイタル」の演出だった
1981年 土橋成男 作 津川雅彦演出
「あらえさっさ!」朝丘雪路 横内正

御園座では

1983年2月 早春特別公演
青島幸男原作 高橋玄洋脚本 津川雅彦脚色・演出
「人間万事塞翁が丙午」 朝丘雪路 長門裕之 長谷川哲夫 藤山直美 五月みどり 辰巳柳太郎

が記録にある この作品は同年 中座でも再演

1986年 朝丘雪路芸能生活35周年記念公演 新歌舞伎座 新橋演舞場にて
川口松太郎脚本より マキノ雅裕脚本 津川雅彦演出
「明治一代女」

新歌舞伎座では新しくなった新歌舞伎座で
2012年 斎藤雅文脚本 マキノ雅彦演出
「男の花道」 福助 獅童 松也 風間俊介

他には三越劇場では朝丘雪路主演で1980「かわいい女~女優ナナコの物語」(土橋成男作)1981年「浅草の女」1983年「めおと戦争」1984年「女優」1986年「わたしは男」1987年「わたしはモンスター」と続けさまに上演している


現在フランス各地で催されているジャポニスム2018の総合推進会議主査で『日本の心」をヨーロッパに伝える仕事の真っ最中での死だった 
盟友安倍総理は今回G'7に出席の途中で寄る予定になっていたが 西日本の水害の為行けなかった

駅のポスター「拉致 必ず取り戻す!」では大きな目玉をむいて語りかけている
このCM出演料は0円だった

 

白鷺だより(332)「おもろい女」復活

2018-08-05 17:48:20 | 思い出
  「おもろい女」復活

 昨年2月自らのガンを公表して中日劇場、新歌舞伎座、シアタークリエの「おもろい女」公演を休演した

 4月に公演を予定しておりました「おもろい女」のミス・ワカナ役の藤山直美さんが 医師により初期の乳がんと診断され 加療に入られることになりました
誠に残念ですが これを受けて関係者協議の結果 この度の「おもろい女」は全日程公演中止とさせていただくことと致しました

中日劇場と新歌舞伎座公演は中止 東宝は両劇場に払い戻し キャスト・スタッフには半額補償することになり シアタークリエは高畑淳子との共演で「ええから加減」を上演予定だったが出演者はそのままに代替公演高畑淳子主演「土佐堀川」を上演した
(なおそれ以前シアタークリエでは2015年6月に直美版「おもろい女」を上演している›

シアタークリエのチラシをみると病気の治療に専念していた藤山直美が復活するという

4月1日 東宝は乳がんの治療を続けている藤山直美さんの体力が回復したため 10月から上演する主演舞台「おもろい女」で復帰すると発表した
チラシを見るとほぼ同じメンバーが再集結した
クリエが終わって12月の頭まで地方公演も決定した
関西では兵庫県立芸術文化センターで12日間の公演、丁度ワカナが死んだ西宮球場のごく近くだ、これって新歌舞伎公演はなくなった?
中日公演は劇場がなくなった 新しい御園あたりでやったらどうだろう
 
シアタークリエのチラシによるとこの10月中止になった時と全く同じ配役で公演する
休演が決まった時出演者は東宝からギャラの半額を貰ったという 
それでも3か月拘束だったので半額と言っても一か月半のギャラがはいったと思われる
その全く同じメンバーで公演される 



1938年 吉本が朝日新聞と提携して国策に便乗した「わらわし隊」を中国南部に派遣した中にワカナ一郎コンビがいた 
上海、蘇州、鎮江、南京、杭州と回った一行の帰還報告公演で この慰問公演に材を得た「飯塚部隊長」なる漫才を披露して最優秀賞を獲得して新進漫才コンビとしての地位を確かなものとする 
ところが翌年二人は吉本を「裏切り」新興キネマ演芸部に移籍する

二人でやった漫才「飯塚部隊長」を生で聞いたことのある三木のり平は芸術座の舞台を見て 
森光子、雁之助コンビの漫才のうまさに舌をまいたという
ついでに書くとラスト西宮球場のベンチ裏でヒロポンを打つ芝居にも
「うまかったねえ」「森みっちゃんもやっていたからねえ 昔取った杵柄だよ」と言ったとかいわなかったとか・・・ 

文字が読めないワカナに一郎が紙に書いた台本を読んで聞かせると的確にダメ出ししたという 
男尊女卑の風潮が強い戦争中に 男が女にやっつけられる 
この男女パターンはその後 ミヤコ蝶々南都雄二 京唄子鳳啓助に受け継がれていく 
とくに字が読めないことは蝶々さんも同じだ

1978年9月の芸術座 僕はこの芝居をみて二人のコンビの素晴らしさに感激して当時いた梅田コマの制作Nさんに梅コマで再演を進言したが色々な都合で果たせなかった

前にも書いたが 
この「おもろい女」は僕は新コマでの喜劇の堺正章 研ナオココンビで「マチャアキ・ナオコのおもろい恋の物語」として見ている 
中国での慰問公演でのドタバタであった 小野田勇作は出来不出来があると思う(松浦竹夫演出)

いやそれ以前にNHKのドラマで森光子がやったのを見ている 一郎は藤山寛美
井上孝雄の秋田実が印象的だった これも小野田勇作
1965年9月13日 PM20・00~PM21・29 NHKBK



僕はこのドラマを田舎の実家で見た「秋田実のような漫才作家になってもいいなあ」と密かに思った 
一郎の寛美や満州の孤児役の直美は出ていたようだが全く印象がない

芦屋雁之助は自分も漫才をやっていた(相方は小雁)ので漫才シーンは鉄板だった
ワカナのお付き兼弟子でもあった森光子とのコンビでの漫才は朝飯前であった
そういえば何かの芝居で蝶々さんとも見事な漫才をやったのを見たことがある

漫才の力量はワカナが8割方持っていた
だがワカナはことごとく一郎を立てた
「ワカナ姐さんは自分よりご主人が大切でした 一郎さんのことになると少女のように目を輝かせてノロケてばかりでした」(ミスワカサ)

一郎の演奏でタップを踊って
ワカナ うまいですねえ 天才ですわ
一郎  いいえ それほどでもございます
ワカナ このドアホ うちのダンスのことやないか

ともあれ藤山直美がこの芝居で復活する