
(1)「DOGMAN」(2024)

(2)「大統領の執事の涙」(2013)

(3)「スイッチ〜人生最高の贈り物」(2023)韓国

(4)「関心領域」(2023)

キネマの神様
コロナで観られなかった「キネマの神様」(2021) をBSプレミアムでようやく観た 前作「キネマの天地」の続編として作られたこの映画はスタートからつまずいた 主演に予定していた志村けんが死亡(しかもコロナで) 代役に志村の長年の友人であったジュリーこと沢田研二に変えて再スタートした
つかこうへい✕東映深作の「蒲田行進曲」の大ヒットに対抗して井上ひさし✕山田洋次で松竹が大船撮影所50周年記念作として作られた松竹版蒲田行進曲の「キネマの天地」その続編がこれだ そういえば撮影所の玄関の守衛はどちらも 桜井センリだ
大船撮影所の近くにあった松尾食堂のことは昔、単行本で興味をもって読んだ
物語はこの食堂の娘(永野芽郁〜宮本信子)を巡っての恋の鞘当からはじまる
監督志望の剛(菅田将暉~沢田研二)と映写係のテラシン(野田洋次郎〜小林稔侍) だ 恋の勝利者になった剛は仕事も順調だ 念願の初監督が決まるが事故を起こしてしまい作品は流れ映画界から去る テラシンは当時からの夢自分の映画館「テアトロ銀幕」をかなえる 剛は未だにギャンブル依存症が治らず借金まみれで 家庭は自閉症の孫(前田旺志郎 )を抱え シングルマザーの娘(寺島しのぶ)と淑子(宮本信子)が働いている 大船時代の剛はあまりにも生真面目な映画青年すぎる もう少し不良っぽい部分を見せれば( 競馬、酒、女) 、老後のジュリーが悪ぶってみせれば見せるほど嘘っぽくみえる原因はそこにあるのだろう 話は自閉症の孫が剛の昔の作品の台本を見つけてきて(そういえば京都の古本屋にはカット割が書かれた台本が売っていた)動き出す そして二人で今風に直し「城戸賞」に応募して優秀賞に入る
今フランスのミステリードラマ「アストリッドとラファエル」を観ているが主人公が自閉症なのだ その見事な自閉症の演技( ヒステリー、閉じこもりぶり) をみてる身からするともの足りない 前田君は一生懸命やっでいて好感がもてるが……
さて 剛とテラシンとの長年にわたる友情には最後まで泣かされるが コロナの現実(席を開けて座る、映画館を閉めざるを得ない) は 身につまされる
さてこの映画松竹さんにとって神様は微笑んたのか 前作「キネマの天地」では22億稼いた山田洋次監督作品は最近落ち目であるが悪いといっても9 億はあった でもこの映画は5億止まり 微笑みもしなかった
渋谷天笑、曽我迺家寛太郎の名前をタイトルバックでみたがどこに出ていたのかわからなかった
清水宏監督をモデルにした監督役のリリー・フランキーが好演、お見事!
松竹のこの手の映画はなんでこんなにケチがつくのだろう 前作「キネマの天地」では藤吉久美子が降板した この作品は志村けんの死亡降板
志村けんが演っていたらどうだろうと考えるのはヤボか?
浮草
3月一杯で終了する映画配信アプリGYAOで久しぶりに小津の「浮草」大映(1959)を観た
この映画の前年小津は松竹で「彼岸花」を撮った時大映スター山本富士子を借りたためそのバーターとして小津が大映で監督することになり、かねてから松竹で予定していた「大根役者」をまわすことになった(*) この作品は戦前(1934) 小津が「浮草物語」として映画化したお気に入りの作品で1928年のアメリカ映画「煩悩」(ジョージ・スッツモーリス監督)を小津ことジェームズ・槙(ジェームズ三木がリスペクトしてペンネームにした) が換骨奪胎した坂本武主演の喜八ものの一本である 喜八もののもう一本は「出来ごころ」も名作である ついでに書くと「キネマの天地」の渥美清の役名も喜八である
役者市川左半次こと喜八に坂本武 他に八雲理恵子、飯田蝶子、三井秀夫
(*)予定配役は進藤英太郎、淡島千景、有馬稲子、山田五十鈴
成駒屋の鴈治郎は息子扇雀が宝塚映画に入って梅田コマなど東宝系の劇場に出たため、松竹に遠慮して歌舞伎を辞め大映に入り映画に専念していた
あらすじ
志摩半島にある小さな港町に知多半島を廻って来た船が着く嵐駒十郎(鴈治郎)一座がやって来た 駒十郎には副座長のすみ子(京マチ子)と懇ろになっていたのだがその町には彼の子供を生んだお芳(杉村春子)がいた 駒十郎はすっかり成長した息子清(川口浩)の相手をするうちに親心が芽生える すみ子はそんな彼の変化に苛立ち、真実を知ると一計を案じ若い座員の加代にある頼み事をするのだが……。
この息子役は戦前の「浮草物語」は三井秀夫=戦後版「浮草」の座員役の三井弘次である この2本とも出演したのは彼のみである
さてこの映画が藤田まことによって舞台化されたのは昭和58年のことである 「人生まわり舞台 旅役者駒十郎日記」がそれである
それまで名鉄ホールのお正月公演は花登筺作品であったがこの時に藤田まことに変わったのである この初演の舞台はこの年梅田コマでの再演が決まっていたので何度も観た 以降藤田の代表作となり 新コマ、明治座などの再演を繰り返して来た その殆どを僕は観ている この舞台版のミソは駒十郎の子供ではなく娘であることだ
小さな町の小さな映画館で大映ファンだった僕は公開時にこの映画を観ている舞台が同じ三重県と云うこともあるが若尾文子が好きだったこともある
ともあれこの旅役者駒十郎一座の何十年に渡った良き贔屓客だったことは間違いない
「バビロン」と「キネマの天地」
「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督作品として鳴りもの入りで封切られた「バビロン」がどうも不調らしい 先月(2023年2月)たまたま沖縄のシネコンで観たのだが観客はわずか8名だった いつ終わってもおかしくない入りだ 長時間の映画との予備知識をもって臨んだが最後はシッチャカメッチャカになってしまい訳が解らなくなっていた どうも映画に臨む姿勢が間違ったらしい
リウッドのSEXシンボル クララ・ボゥがモデルといわれるマーゴット・ロビー扮する新人女優の出世の物語、そう松竹映画の「キネマの天地」の有森也実扮する田中小春( 田中絹代がモデルか)を観る姿勢で見始めたのだ それ程この二つの映画には共通点が多い 時代も近くトーキーに切り替わる1920年代から1930年の頭まで映画産業が異常に大きく伸びた良き時代を描いていることもあるが( そうキネマの天地の副題はThe Goldenage of Movie) アメリカと日本ではこんなにも違うのか 「バビロン」のブラピの役どころのサイレント映画の二枚目スター役の田中健が遊びに行くのは木の実ナナが歌って踊るクラブだが、ハリウッドの酒池肉林のパーティに比べその貧弱なこと アメリカでは役者のウサバラシに使うのは酒池肉林のパーティと大量のヤクとSEXを使うのに日本ではたかが酒とSEXだ
「キネマの天地」の脚本部の島田(中井貴一)は「バビロン」では映画製作志望のマニー(ディエゴ・ガルパ)だが極めて日本的にブルジョワの息子で左翼闘士の友人がいる(面白いのは本棚にマルクス兄弟(喜劇グループ)の洋書がありマルクス主義者に間違えられる) 岡田嘉子のソ連逃亡など日本の「キネマの天地」では近づく戦争の影が描かれているが「バビロン」ではそんなそぶりも全くない
ちなみに「バビロン」にはアメリカ映画の名作「雨に歌えば」が頻繁に登場するが この映画も又同じ時代を描いた映画である トーキーに変わっていく過程を面白おかしく描いた作品であるが封切当時は不入で不評であったが売れない映画をテレビの穴埋めに使われ、何度も放送されているうちにその主題歌も相まってだんだん良さが判ってきて今やアメリカ映画のベスト映画に必ず入っている
「キネマの天地」
東映の深作欣二に「蒲田行進曲」を作られ松竹人として悔しく思っていた野村芳太郎は 盆暮れに必ずニ本撮っていた「寅さん」を一本中止して貰って(寅さんレギュラー陣はこの映画に全員参加)製作した 脚本には井上ひさし、山田太一、朝間義隆、山田洋次が参加、監督には山田洋次
松竹大船撮影所50周年記念 (たかが50年前の話だ)
蒲田末期から大船に移る直前までの話である(1986年封切)
「バビロン」2022
バビロンの名に相応しい狂乱の1920年代からトーキー革命を経て30 年代の新しい映画に順応できずある者は自殺してある者は人知れず消えていく 戦後昔映画製作志望だった青年が懐かしいハリウッドを訪れる 小さな映画館にフト入るとあの頃の話の映画をやっていた
脚本・監督 デイミアン・チャゼル
ブラッド・ピット マーゴット・ロビー
遥かかなたの話のようだがたかが100年以内の話しだ 映画はそれ程歴史を持っている訳でもない
たかが映画!!、されど映画!!