北島三郎の漢字一文字の歌
北島三郎の楽曲には漢字一文字の曲がかなりの数がある
僕が初めてコマで北島公演を担当した頃は一文字のタイトルは「步」(昭和51年)だけだった (昭和45年に「盃」、「誠」をだしているがヒットせず) そして昭和62 年 デビュー25周年記念曲で一文字の「川」を出す その前年、北島が暴力団との付き合いが発覚して紅白歌合戦を降板した年であった 順風満帆で成長して来た北島音楽事務所の初めの躓きだった しかし北島は記者会見の席で一切余計なことは言わすただ「北島三郎の不徳の致すところです」以外何も言い訳も言わななかった 翌年の正月2日 我々スタッフも事務所のメンバー全員が八王子のご自宅に集合して新たに決起集会を行なった
専属司会の及川洋は川のイントロ前にこんなナレーションを付けた
「貸した情けは流しても 受けた恩義を忘れちゃならぬ 怒涛の道に生きるとも せくな、騒ぐな、男なら 奥歯を噛んて時を待て 男の挽歌、漢字で一文字、川です」
川の流れと 人の世は/ 澱みもあれば 渓流(たに)もある/ 義理の重さを 忘れたら/ 立つ瀬無くして 沈むだろ/ 黙って男は 川になる
この曲は当時の北島の心情を見事に歌い上げてヒットした
その後同じ人生路線の「年輪」がヒットした
「幾星霜の人の世に 耐えて忍んていればこそ 冬は必ず春となる 振り向かず 立ち止まることなく 明日を拓け そこに生きてる者の証しを刻め 年輪です」
「雪の重さを 跳ね除けながら/背伸びしたかろ 枝も葉も/ 山に若葉の 春がくりぁ/ よくぞ耐えたと 笑う風 /苦労年輪樹は育つ」
平成になり「山」がでる
「流れる雲の 移り気よりも/動かぬ山の 雪化粧 / ガンコ印の 野良着を纏い/ 生きるオヤジの 横顔に/ 俺は男の山を見た 俺もなりたい山を見た」
ショウの担当としてこの3曲をひとまとめにしてワンコーナーをつくった
あと同じ路線の「橋」や「竹」などがヒットした
そう言えば一文字の曲としては他に「一」(いち)、「斧」、「鉈」(なた)、「舵」(かじ)、「道」、「狼」「空」、「母」、「峠」、「風」「友」「宴」、「道」「和」、「緑」「友」などもある
難読漢字としては「魂」(こころ) 、「拳」(こぶし)、「纏」(まとい)、「塒」(ねぐら) 、「鬣」(たてがみ)、「轍」(わだち)、標(しるべ)などがある