まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

日米の剰余金配当の考え方

2007-10-22 00:20:30 | 商事法務

○ 剰余金の算出については前回触れました。今回は、剰余金の配当についてです。会社法4612項に分配可能剰余金の計算式が定められています。(1+2号に掲げる額の合計額)マイナス(3+4+5+6号までに掲げる額の合計額)ですね。

 ① 剰余金の額

 +②承認済臨時計算書類の次の金額

  イ 利益の額

  ロ 自己株式処分の対価額

 -③ 自己株式の帳簿価額

 -④ 事業年度末日後に処分した自己株式の対価額

 -⑤ 臨時計算書類で計上した損失額

 -⑥ 法務省令(計算規則186)で定める額の合計額

・上記③の自己株式の帳簿価額は、剰余金の計算では加算していましたが、保守的に考え分配可能額では減算しています。

     上記②⑤と⑥の一部は、臨時決算を行わなければ関係有りませんので、あまりないと思います。

・ 資本維持の原則に従い、会社債権者への支払いに支障をきたさない為に、分配可能額を法定し、剰余金の配当限度額と自己株式取得による株主への出資の払戻に歯止めをかけるものであると説明されます。

     一方、米国の会社法では分配可能額の規制はどの様になっているのでしょうか。模範事業会社法 § 6.40. DISTRIBUTIONS TO SHAREHOLDERS(c)は以下の様に定めています。

(c) No distribution may be made if, after giving it effect:

(1) the corporation would not be able to pay its debts as they become due in the usual course of business; or

(2) the corporation’s total assets would be less than the sum of its total liabilities plus (unless

the articles of incorporation permit otherwise) the amount that would be needed, if the corporation were to be dissolved at the time of the distribution, to satisfy the preferential rights upon dissolution of shareholders whose preferential rights are superior to those receiving the distribution.

即ち、(1)通常業務で弁済期日が到来したときに支払うべき債務の額を支払えないときは、配当をしてはならない。(2)資産の額が負債の額に必要額を加えた金額より少ないときは、配当をしてはならない、と規定しています。

カリフォルニア州会社法等は、違った規定の仕方をしているようですが、詳細は知りません。

・ キャッシュアウト(金銭債務の支払い実行)という視点から見れば、会社の支払いは、①役職員への報酬・給与の支払い、②取引先(仕入先、銀行等)への支払い・返済、③株主への配当の支払いに分けられますね。①は別として、②への支払いに支障をきたすときは③への配当の支払いを行ってはならないと言うことですね。簡潔明瞭な定めですが、債権者への支払いが可能だと思ったが、予想外に売上が落ちた場合などの事情が発生する場合があります。今後のCash Flow Statement・資金繰表で、どれだけ安全係数というか、保守的に見るかということかと思います。

     日本の会社法と米国法では発想が全く違いますね。日本の発想はBSの貸方である、資金の調達サイドの株主資本を基準に規制しています。しかし株主資本というのは計算上の金額であり、現預金の有り高ではありませんね。一方、米国ではキャッシュフローからの視点で規制しています。

     会社はキャッシュフローで動いています。剰余金の算出や、それから分配可能額を計算しても、キャッシュアウトする時点で支払いに充てる現預金が有るかどうかのほうが重要です。極端な話、分配可能額を計算できても支払うキャッシュが無ければ払えません。やはり、「お金が払えるか」という視点の方が良いんじゃないでしょうか。


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