まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

日本の風土と実態を無視したガバナンス改革

2018-04-30 08:11:37 | 企業一般
〇 日本の会社法は、ドイツ会社法を参考にして制定され、これに戦後GHQの指令に基づきアメリカの制度(授権資本制度等)を一部導入しました。いつの時代にも企業不祥事があり1990代には、監査役の任期を2年から3年・4年と、まったく小手先の意味のない変更をしたりしていました。2000年代に入り米国が自国のガバナンスを金の力(米国系Fund等の機関投資家)で世界中に輸出し始めました。

ということで、猿真似日本の法制審議会会社法制部会では、H13年に米国では証券取引所ルールである委員会等設置会社制度(今では「等」がなくなり、現在では指名委員会等設置会社と名称変更)を導入しましたが、東芝の例を見ても今一つ機能していません。ということで、またまた付け刃の監査等委員会設置会社という制度を設けましたね。

日本の会社の実態を把握せずに、思想も・理念もなく、小手先の変更です。法制審議会の委員は日本の会社の実態を踏まえた哲学というものがないのではないでしょうか。

〇 米国の上場企業では、毎年取締役を選任します。取締役会の過半数は社外取締役です。委員会も、日本の制度では報酬・指名・監査委員会(過半数が社外取締役。米国では全員社外)と硬直的ですが、別に他の委員会を組成しても良いですね。米国では、取締役の内1名がCEOで執行責任者となる例がおおいですが、原則officerは執行役であり取締役ではないですね。意思決定と執行は、きちんと分離されています。ところが、日本の監査役会設置会社では意思決定と執行役は分離されていません。

〇ドイツでは、株主総会は監査役会のメンバーを選任しますしかし、監査役会には労働者の代表を大企業では半分、中企業では1/3入れなければならないですね。共同決定法ですね。そして、取締役の選任・解任は監査役会が決めます取締役会が業務の意思決定と執行を行います。日本の会社は、ご承知の通り取締役会が意思決定を行い、取締役兼執行役が業務の執行を行います。ドイツの監査役会は、取締役の業務執行について同意権を留保できます。昔、三菱自動車へ出資を決めたベンツの監査役会が、同意できないということで、つぶれて、やむなく三菱グループが三菱自動車に出資しましたが、隠ぺい体質が変わらず(雪印も)ついに日産傘下に下りました。

〇 私は、取締役会と監査役会に労働者代表を入れるのが、日本としては良いのではないかと思っています。社長の覚えめでたい人だけで固めた取締役会では、社長の発言が一番重たいですね。確かに、うるさい社外取締役を入れれば、取締役会も少しは活性化する効用があるかもしれません(H26年改正では社外取締役導入の義務化は延期されました)、しかし所詮社外取締役は、お飾りであり、ほとんど発言もしない人に不相当な報酬を払っています。日本の企業社会の経営陣の流動性は、米国と比べて非常に少ない。経営陣は内部昇格が多い。監査役も監査役会の同意を得る必要があるとはいえ、結局社長・会長の意向を踏まえて指名され、形式的に総会で選任される。法制審議会等は、こういった実態を踏まえて、取締役会を活性化させるにはどうすればよいのかという議論よりも、外国の制度はどうなっているかを見て、その猿真似をする体質です。監査等委員である取締役の指名も結局現在の経営陣ですね(任期は2年で解任は特別決議という、相変わらずのこて先遊び)。監査役は、労働者・従業員・組合側が選任するとすれば良いのではないでしょうか。社長になれなかったといっても、社長などは上司の引き立てと巡り合わせと運なんですね。優秀な人でも冷や飯を食っている人も多くいます。こういう人を監査役にすると、取締役会も活性化すると思います。

〇法制審議会では社外取締役の機能を以下のように考えているようです。
1) 経営効率向上の助言:経営効率って何?あほかいな、そんなもん向上などするかいな。
2) 経営全般の監督機能:裏で不祥事はされるのです。取締役になれなかった社員を入れた方が、いろいろ社長ルートと違うルートで社内の動きの情報がはいりますね。
3) 利益相反の監督機能。
以上3つの機能は、企業の実態を知らない人が、社外取締役導入論を正当化するために考えた作文ですね。

○ 社外取締役の実態については、以下が多いのではないでしょうか。
1) 必ずしも独立取締役ではない。ビジネス・事業に関連する取引先の役員等が多い。
2) 必ずしも毎回出席しない。
3) 事前の配布資料もきちんと読まないし、読んでいる時間も無い。
4) 社外取締役になった企業の実態を十分理解していない。
5) 取締役会に出席しても、殆ど発言しない。お付き合いの一種の参加ですから。
6) 取締役会は、既に決まっていることを、形式的に承認する機関となっており、十分な議論もされないし、社外取締役がどれだけ議事内容を理解しているのか疑問もあります。また不祥事は、陰でされるので、オフィシャルな取締役会で発覚などあり得ないですね。法制審議会会社法制部会の皆さんは、部会員をやめたら、社外取締役の声がかかります。一人3-4社かけもちすれば、年間2-3千万円の、ほぼ不労所得が得られますね。こんな人を社外役員に指名してはいけません。

〇社外取締役の報酬
年12-13回の取締役会。社外取締役の報酬は不当に高いです。自分の働きと発言・機能に照らして、これほどぼろい収入はありません。年1000万円とすれば、1回で80万円、一回の取締役会の発言が5分とすると1分16万円。なかには殆ど発言しない社外取締役もいます。もうドロボーですね。
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