まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

事業経営者と投資ファンドの発想の違い

2007-06-04 00:12:18 | 企業一般

       最近のニュースを見ていると、投資ファンドが上場企業の株式を大量に取得し、更にTOBをかけたりしていますね。例えば、米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンが518日、ブルドックソースに対して株式公開買付け(TOB)を開始しました。これらのニュースを読むにつけ、事業経営者とファンドとの発想の違い、行動原理の違いというものを感じます。上場企業の経営者は、ファンドの行動原理を良く理解して、取引先などの安定株主作りをしないといけないと思います。

○ 事業家は、顧客に製品・サービスを提供して事業を拡大します。一つの事業を大きく育てるのに、一部のIT企業等を除けば5年はかかります。特にメーカ等は、要素技術の開発期間等を考えれば、まともな事業に育つまで10年はかかります。

経営者は、長期的視点が必要ですし、継続的な設備投資、プロダクトサイクル、会社業績推移を考えれば、できるだけ借金はしたくない、十分な留保を持とうと考えます。

       投資ファンドは、長期的視点に立った投資をすると言ってるファンドでも、2-3年とかの長さで考えるのが通常ですね。日経ビジネスの記事(5.21)でスティール・パートナーズの代表が、自分たちの投資は「長期的視野に立って企業価値を高めようとしている」等と言ってますが、彼らに取ってみては企業価値を高めているつもりかもしれません。しかし、視点・発想が違います。

これは、欧米のコーポレートファイナンスでは、負債(Debt)も積極的に利用しDebt-Equity Ratio(DER)を重視して、EquityROE(Return on Equity)を重視するからですね。外国投資ファンドからみれば、お金を溜め込んでいる会社は、資産の効率的利用をしていない、もっと配当をしろということだと思います。

 経営者に取ってみれば、ファンドから「配当を増やせ」「資産を効率的に利用しろ」等とプレッシャーをかけられても、「何言うてんね」ですよね。「要求だけして何が価値をあげてんのか」ですよね。

       ファンドが出来ることは限られています。企業経営など出来ません。そんな能力はありません。出来ることは、①財務リストラの手伝い(資金提供・資本/借入のDERの調整)②同業他社・相乗効果のある企業も買収して統合を計る、又は他の提携先を紹介する③経営者を見つけてきてすげ替える(但し、簡単にはそんな経営者は見つからない)の3つです。この3つのうち、せいぜい①ぐらいしか出来ませんし、株式を買い占めて要求だけする投資ファンドも多いですね。

       経営者のメインの仕事は、社会に役立つ製品・役務を提供する事業を拡大し、また新規事業を育て企業の長期的視点で付加価値を高める経営をすることです。一方、ファンドは、あくまでも短期的に利回り・IRR(内部収益率)の世界です。長期的視点で投資をしている等と言っても、しっかり儲けるチャンスがあれば、さっさと逃げてしまいます。即ち、ファンドは狩猟民族ですから獲物を食い尽くせば逃げますが、事業経営者は、経営者を交替することがあっても、農耕民族ですから田圃を捨てて逃げるわけには行きません。

       会社を上場させる・上場しているということは、農耕民族の世界に狩猟民族の世界を持ち込むことです。長期的視点の事業拡大・育成と、短期的に獲物をファンドに与える、相矛盾する発想と行動の世界に入ることですね。今までのような持ち合い・安定株主の世界が薄れて来ました。投資家も、昔は麻布自動車(渡邊喜太郎氏)・ブーピッケンズとか、光進の小谷氏、秀和の流通株買い占めなどは「私利私欲の投資」でしたが、最近はファンドです。即ち背後に、がめついリターンを要求する投資家ですが、もとはと言えば、年金基金等でみんなのお金です(ただ、今までのところは米国の年金基金が多いですが)

       事業経営者は、自分の企業の会社のビジョン・方向性、文化、発想を、機会のある毎に、きちんとIR活動をして、理解をしてもらうとともに、実績を重ねて企業価値を増大させていかなければなりません。どういう企業なのか投資家に「顔が見える」企業にして、投資家とのコミュニケーションを普段から心がけるように、安定株主を増やすようにしないといけないと思います。


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