まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

買収防衛策導入と総会決議

2007-06-15 00:30:49 | M&A

       買収防衛策の導入が盛んです。今回の総会で決議し導入しようとする企業が相次いでいます。取締役会決議だけで導入(例えば新日鐵など)するのではなく、株主総会に計るというのは良いことですね。ところで、この際につまらない疑問があります。即ち会社法295条の株主総会の権限の規定との関係です。同条2項には「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。」と規定されています。即ち、買収防衛策については、定款に規定していない限り株主総会で決議出来ないという考えになるんですね。

○ 注意深い、きちんとした会社があります(例えば古河電工等です)。今回の総会ではまず定款変更を決議し(決議時点で効力が発生)その後に買収防衛策の決議をする会社です。これなら会社法上全く問題ないですよね。

○ 定款の変更案(買収防衛策の導入等)―下記条文を追加(古河電工の例)

1.      株主総会は、当社株式の大規模買付行為への対応策(以下「買収防衛策」という。)の導入、変更または廃止を決議することができる。

2.      前項に定める買収防衛策とは、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針に照らして不適切な者によって支配されることを防止するための取組みとして、事前に定める一定の手続きおよび基準等をいう。

       定款に規定せずに、買収防衛策を総会で審議・決議して導入する企業があります。理由としては、①もし上記の様な規定を設けると、株主総会決議となってしまう(*)。つまり機動的に取締役会決議で導入出来なくなるのでわざと規定を設けない。これがかなりのケースなのかもしれません。又は②単に会社法の規定を見過ごしている場合もあるでしょう。

* 古河電工の買収防衛策については、3年間有効としていますが、廃止については株主総会又は取締役会決議で廃止できる旨規定されているので、取締役会に廃止について授権しています。

     会社法の規定は硬直的ですから、仮に定款に規定していなくても総会で決議すれば、株主の意思ですから会社を拘束すると思いますね。ただ、変な株主がいれば、定款に規定していないのに、総会決議をしたのはけしからんということで、総会決議取消又は無効確認の訴えを出す株主が出てくる可能性もありますね。

       では具体的にどういったケースで問題になるのでしょうか?

1)           楽天vs. TBS(東京放送)の場合

     TBSの定款を見ましたが、買収防衛策の定款の規定がなさそうです。しかし、今回の総会で定款に防衛策の規定を設けることなく買収防衛策の決議を普通決議で行おうとしています。一方楽天の株主提案は、三木谷氏と増田氏の取締役2名選出の件と定款の一部変更の件です。定款変更の件は、「買収防衛策は、株主総会決議により決定する。この決議は特別決議とする」という提案です。

http://www.tbs.co.jp/company/img4/ketugituuti80.pdf

  定款変更決議ですので、特別決議です。楽天の20%弱という持株比率と、TBSシンパの株主の議決権を考えると、この株主提案が通る可能性は少ないのではないでしょうか?それぐらいは楽天にはわかるでしょう。今の状況を考えれば、一方的片思いでかなりの株主から相手にされていないようですからね。

 ・TBS側の買収防衛策は、普通決議ですので通る可能性があります。従い楽天案否決。TBS案可決の可能性があります。その場合の楽天の対応は、法令・定款に規定の無いことを決議したということで、TBS買収防衛策の承認決議取消又は無効確認の訴えを行う可能性がありますね。TBSは会社法295条2項の規定忘れているんですかね?

2)     ドトールの場合

他にも、イレギュラーな例として定款に記載していない買収防衛策の例を挙げましょう。日本レストランシステムと共同で、株式移転による完全親会社設立の特別決議の承認を得ようとしています。投資ファンドの株主であるハービンジャーが、企業価値を損ねると反対していますね。この特別決議が通れば、ドトールの株券は上場廃止で、親会社の株券が上場されます。親会社の定款案にも買収防衛策の規定はありません。ドトールは、今回の総会で普通決議にて買収防衛策の導入を目指しています(株式移転案が通れば、上場廃止になるまでの3-4ヶ月間の効力しかありません)。


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