まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

ポルトガル王ペドロ4世妃 マリア・レオポルディナ

2010-05-30 01:01:26 | ポルトガル王妃
どちらかっていうとブラジル皇后
ペドロ4世妃 マリア・レオポルディナ・デ・アウストリア


1797~1826/在位 (ポルトガル王妃)1826 (ブラジル皇后)1822~1826

マリア・レオポルディナは、オーストリア皇帝フランツ1世とマリア・テレジアの皇女で
姉にナポレオン皇后マリー・ルイーズがいます。

         

ジョアン6世は、ナポレオン失脚後もイギリスやスペインから牛耳られ
帰国が果たせずにいる状況を打破したいとハプスブルク家に縁談をもちかけます。
宰相メッテルニヒはメキシコに続く南米の統治で得られる富を考えて
ザクセン王と婚約していたマリア・レオポルディナを嫁がせることにしました。

マリアはずばぬけて美しくはなく、女性らしい優雅さに欠けていました。
一方、聡明で6カ国語を操り、自然科学を学ぶ高い教養を持った女性でした。
メッテルニヒはマリアのしっかりした性格に賭けることにしたのです。

ウィーンを発ちブラジルに渡ることになったマリアは
「涼しげな薄い花柄のドレスと、薄手のシルクのストールと…」なんてことは考えず
(考えたかもしれないけど)高名な自然学者や生物学者、地理学者たちを連れて行きました。
レオポルディナ探検隊…とでもいいましょうか

南米という未知の世界へ嫁ぐマリアに申し訳なく感じたメッテルニヒは
珍しくイタリアのリヴォルノまで見送ったそうです。

90日!の船旅の末到着したマリアをペドロが出迎えました。
ふたりはすぐにお互いを気に入り、幸せな結婚生活をスタートさせました。
マリアは慈善活動にも精をだし、人気は上がる一方でした。

でもね…ペドロはもともと荒くれ者で粗野な人でした。
激動の中で野生児みたいに育ったペドロは怒りっぽく、暴力に訴えるタイプ、
しかも浮気癖もあって、結婚生活は次第に不幸になっていきました。

ブラジルでは、当時すでに独立の気運が高まり、独立運動がおこっていました。
1821年に晴れて帰国することになったブラガンザ家でしたが
ジョアン6世はペドロを摂政として残していきました。

王家が帰国した後、ペドロはブラジルを植民地ではなく国家にしたいという思いを抱きます。
マリアもその考えに賛成で助力を惜しみませんでした。

ペドロがサン・パウロへ出向いて不在の時に、代理でポルトガル議員団に面会したマリアは
一方的な命令文を目にして、ペドロに宛てて手紙を書きます。
“ 果物は熟れています。まさに今が食べ時です ” てな暗号でね。
手紙を受け取ったペドロは独立を宣言し、皇帝ペドロ1世として即位しました。

この独立については、ジョアン6世の意向だったという説と
ジョアン6世はスペインやイギリスの手前反対していた、という説があります。

              
              よき母ぶりがうかがえる1枚ですね

ペドロは、1826年にジョアン6世が亡くなると、ポルトガル王ペドロ4世を宣言しました。
しかしポルトガル国内から反対の声があがり、2ヶ月後に退位して
王位を娘のマリア(2世)に渡しました。

その7ヶ月後、マリアは29歳で急死します。
毎年の出産で健康が衰え、7人目の子を流産したためでしたが
一説ではペドロの暴力による…と言われています。

異国に嫁ぐことが当たり前と言えば当たり前だった王侯貴族の娘たちにしたところで
90日も船に乗っていく所とあっては怖くて不安だったでしょうね。
おいそれと実家には帰れないし、一生家族と会えないかもしれない…
船乗りたちから聞かされた恐ろしい風習や不便な生活も気にかかる…

そんな思いで嫁いできた女性を悲しい目にあわせるなんて、君主なんて言えないわね!
妻ひとり幸せにできないで、国民を幸せにできるもんか

人気の高かったマリアを失ったペドロと偉そうな愛妾ドミティラは国民から嫌われ
後の退位を招くことになりました。 …つづく

(参考文献 江村洋氏『ハプスブルク家の女たち』
      デビッド・バーミンガム『ポルトガルの歴史』 Wikipedia英語版)

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6 コメント

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レオポルディナさん大好き (みんと)
2010-05-30 20:37:40
まりっぺさん、こんばんは!
ポルトガルシリーズも、
楽しく拝読しています。


ルイ14世愛妾シリーズでもルイズ贔屓だったわたしは、
どうやら健気なお嬢さんに弱いようです。
だからレオポルディナさんは大好きだったりします。
さらにこの人の面白いとこは自然科学に造詣が深かったあたりで、
非常に興味深い。
中でも畜産に関してはプロ級だったようです。
ブラジルで食肉が発達した礎を作ったのがハプスブルグ家のプリンセスって、すごい話だと思いますよ。




ペドロなんかじゃなくもっとまともな旦那だったら、長生きしてその知性をもっと生かせたひとなのに…


残念です(>_<)
返信する
ザクセン王と (まりっぺ)
2010-05-31 23:27:45
みんと様、こんばんわ

マリア・レオポルディナが連れていった探検隊の方々は、故国に詳しい資料を持ち帰ったそうです。
皆、著名な研究者になったようですが、ブラジルに行ったことが大きな糧になったことは間違いないですよね。
畜産もやっていたなんて!
淑女然とした女性が美しいとされる中、たくましくて頼りがいがある王妃ですよね。

ペドロじゃなければ人生が違っていたかもしれないと思うとたしかに残念です。
最初に婚約していたザクセン王(年齢からいくとフリードリヒ・アウグスト2世だと思うんですけど歳の差婚があるからなぁ…)に嫁いでいたら、人生違っていたでしょうね。

しかし政略結婚とはすごものですね。
網の目を縫うような人選と人の心を全く無視するやり口にビックリしている今日この頃です。
返信する
レオポルディナの姉妹 (ケイコ・オカモト)
2010-09-30 20:57:54
まりっぺ様、お久しぶりです。

私もみんとさんと同じようにルイ14世の愛妾の中では、ルイーズ贔屓で、レオポルディナもある本で知って、すっかりファンになりました。
その本で初めて彼女がマリー・ルイーズの妹だと知ったのですが、これほどの業績を残した女性なのに、歴史の陰に埋もれがちだということがわかり、残念な気がします。

最初に婚約していたザクセン王(私も年齢的にフリードリヒ・アウグスト2世だと思います)だったら、と思うのですが、江村洋さんの本にレオポルディナの妹カロリーネがザクセン王家に嫁いだと書いてありました。
この相手はひょっとしてフリードリヒ・アウグスト2世なのでしょうか?

調べてみたのですが、わかりません。
教えてもらったら幸いです。
(長々と本当にすみません)
返信する
こんばんわ (まりっぺ)
2010-09-30 22:57:40
ケイコ・オカモトさま、こんばんわ

マリア・カロリーネのご主人はフリードリヒ・アウグスト2世みたいです。

マリア・カロリーネは最初の妃で、彼女が亡くなった後バイエルン王女マリア・アンナがフリードリヒ・アウグスト2世の妃になっています。

私もこのブログを始めてから、家系図で書いていただけの王妃や王女にもいろいろなエピソードがあることを学んでいます。
現在知られている王妃はほんとにひとにぎりですものね?

まだまだ知らないことがたくさんあって、書いていても楽しいです。
最近韓流のせいで滞ってますが・・・
返信する
初めまして (pinkfleur)
2010-10-01 11:23:36
初めまして、こんにちは。
マリア・レオポルディナを検索していてこちらに辿り着きました。

ヨーロッパ王家の家系図、調べていけばみんなが親戚のようで興味深いですよね。
私も秘かに作ったりして楽しんでいます(笑)。

こちらのブラジルに嫁がされたレオポルディナの人生には考えさせられるものがあります。

ナポレオンに嫁いだ姉マリー・ルイーズの方がよほど伸び伸びとして幸せな人生ではなかったかな、と思います。

それでも頭がよかった彼女が活躍できた場があったことがせめてもの救いですよね。

それにしてもレオポルディナとルイーズの肖像画、二人似ています。
やっぱり姉妹なんですね。

私自身、マリー・アントワネットに関するブログを綴っており(大分それていることも多いのですが・汗)
貴ブログにとても興味を持ちました。

長いコメントとなり大変失礼いたしました。

これからも楽しみにしております!
返信する
はじめまして (まりっぺ)
2010-10-03 00:36:32
はじめまして。

ブログ拝見しました、パリの写真素敵ですね。

マリー・ルイーズは確かに生け贄にようにナポレオンに嫁がされた悲劇の女性的な見方もありますが、ナポレオンは優しかったようだし、彼が追放されてからは素敵な男性と過ごせて、ある意味幸せな人生だったかもしれませんね。

ただ、自分が生んだ息子に愛情を持てるわけでもなく、愛した男性も父親からの贈り物みたいな人だったという人生も、本人は気付いていなくても、けっこう哀しいものですね。

ハプスブルク家やブルボン家は大きかっただけにエピソードが多い王妃様や王女様がいて目が離せません。
新しい発見が多くて嬉しいですよね。
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