スピリチャルTIMES 「とにかく生きてみる!」

スピリチャルTIMESの編集長北村洋一が、この不確定な社会に生きている人々の喜怒哀楽をレポートする。

夏の日のえげつない日々「闇金業者」 PART3

2011年08月23日 | 自小説 ノンンフィクション小説

闇金業者とのやり取りは3週間目にはいった。姉さんは、9月の25日を、この会社のXディーにしようと言う。そしていよいよ闇金業者からの取り込みに懸かるというのだ。
9月25日の1週間前に借りれるだけ借りる、その借りたぶんは、返済をしないで、俗に言う「トバス」のだ。その辺の段取りは理解できるが、当の本人、手形、小切手の振り出し人である、私の心持ちは複雑である。
まず手形、小切手が不当たりになった場合いに、私や私の家に、その手の人間が押し寄せてくるのではないかと言う不安がある。既に、私の自宅電話の留守番機能には、「キタムラ借金まみれ、キタムラ借金まみれ・・・・」と言う悪戯が録音されていた。
姉さんと、その知り合いの根性の座った男性が、一度事務所にきて、25日以降の私の身の振り方を考えてくれた。
そもそも今回の件は、姉さんの知り合いの方に手形を融通したことから起きたことであり、また社業の業績もそれほで芳しくない状態であり、ブラッキーな資金繰りをしたのが、発端である。
が、私の会社が取り込んだ金は、まったく0である。ようは周りが私の手形を使って資金繰りをしたが、その穴埋めが出来なったので、私に、その今際の救済の手助けしてくれいるという図式である。この期におよんで、後悔や反省は多々あるが、動き出したものいまさら、止まるわけもなく、よくある話しとして、大阪湾に沈められるのだけは避けたいと思っていた。
そのころ、友人のN君の紹介で、バブルの不良債権の回収機構をつとめた●坊弁護士の弟子である、I先生に話を聞いてもらった。熱い夏、阪神タイガースのどら焼を手土産に、裁判所の近所のI先先の事務所に向かった。
「はやく・・このグループから手を引いてもらい、弁護士を入れて解決に向かう・・・そのほうがいい」という気持ちはあった。今更、姉さんらにどいてもらうことも言えないし、それはそれで完全なアウトローなやり方も、自分の中で根性がないと言うか、びびっていると言うか、前にも、後にも動けない自分が、人負かせで生きているのが情けなかった。

弁護士事務所では、一連の話をしたあと・・・
「あんたらも・・・悪やね・・」と一言。
「これはどっちもどっちや・・」と笑う。
「もし・・あんたが腕の一本でも折られたら、その時に話を聞くは・・・・」とビッシと言われた。
私は目が覚めたというか、世の中の厳しさを改めて感じたというか・・・とにかく自分の心、肝に熱が帯びたというか、ただ、「そのお言葉で十分です。有難うございます・・」と言って、I先先の事務所を後にした。

熱い日差しが照りつけるなか、私は心に決めた。
「行く道、行かなしょうがない・・」
「初めに、姉さんたちを信じた、信じたふりをしたから・・、それやったら最後まで、この問題が型つくまで、共に動かないと仕方ない・・」と決めた。
「腕を折られた時は・・それから考えることにする」とそっちの方に腹を決めた。

そしてXディーの一週間前になった。
これからの闇金業者からの融資は、全て返さないものである。すべからずそう思うと、電話口でも緊張しているのがわかる。
「キタムラちゃん、もう少しで闇金から電話いっぱい懸かってくるから、携帯今のうちもう一つ持っておいたほうがいいよ・・」言われる。
「了解しました。」と答え、AUをほかすつもりで、ドコモに新規契約をした。
「それから・・今やったら・サラ金も借りれるだけ借りてたほうがいいよ・・」と姉さんは、普通に言う。「50万くらい自分で持っていたほうが、生活助かるやろ・・」と言って準大手のサラ金に目星をつけ、行ってきたらいい、と軽く、友達感覚で言う。
「何処までしたたかなんや・・」と思う反面。その生きるという術には、裏も表もあり、綺麗こと、理想だけで生きていけるほど甘くないことも改めて知ることになる。

いつもの昼時間。姉さんと、うどん定食を向かい合って食べながら、かばんの中から一枚のハガキを取り出した。やや赤みがかったそのハガキは、ある組員の破門状であった。
「行くも地獄、止まるも地獄、行く道いくしかないのや・・・・で」と姉さんは一人語とのように呟く。
「キタムラちゃん・・印刷屋、安いとこ知ってる・・」聞く。
「この破門状、1000枚と500枚でどれくらい懸かるやろ・・」と日常の、会話で話す。
この人も、あれや、これやで苦労しているのだ。

「キタムラちゃん・・事務所の廻りに、なんか様子のおかしい男、うろちょろしてへんか?・・」と聞く。「飛ぶ様子を伺って、偵察に来てるんや・・」とのこと。
「だから、事務所の出入りは、明るく、いかにも仕事忙しいという格好で、してね。・・」と教えてくれる。
もうまもなく・・・ 私の手形が不当たりになる。

つづく


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