目薬の反応

Ｕ氏が「目にものもらいが出来た」と言うので、たまたま持っていた『ものもらい用
の目薬』を貸した。
それが２週間前。

今日、一緒にいたとき、ボクが見てない隙にボクの財布のとこに目薬をコソッと置い
たＵ氏。
しかもそれは新品の目薬。
わざわざ新しいのを買ってきてくれたんだろう。
見た目はともかく、なかなか礼儀正しいヤツだ。

が…

Ｕ氏がコッソリとボクに見つからないように目薬を置いていた様子を、ボクはコッソリ
と一部始終見てしまっていた。
Ｕ氏としてはボクが帰る時に財布を取りに行けば目薬に気づき「あれ？こんなとこに新
しい目薬があるぞ」と驚くのを望んでいるのだろう。

さあ困ったことになったぞ。

その光景を見ていなければ素直なリアクションが出来るものの、見てしまった今となっ
ては純粋な反応は望めない。
しかしＵ氏の気持ちを考えれば、ここはそれ相応のリアクションをしなければ納得しな
いだろう。
この時点で目薬に気づいてしまったとあっては、Ｕ氏の計画がオジャンになる。
ここはＵ氏の予想通りの反応を見せる必要があるのだ。
つまり、目薬を発見した驚き７０％喜び３０％程度の絶妙なリアクションだ。

難しい…。

シャインクラブで役者をやっている身としてはそれくらい簡単にこなさなければいけな
い。
これくらいでウダウダしていると、タナカハンから怒られてしまうだろう。

でも…

段々と緊張してきた。
そろそろ行こうと思い、５歩ほど先にある財布を取ろうとする。
財布の横には目薬も置かれているのだ。
緊張する。
上手く演じきれるだろうか？
ボクのいた位置からも既にしっかりと目薬が見えているんだけど、その時点では全く気
づいてないフリをして進む。
歩き方がギクシャクしている気もするが、なるべく普段通りに歩いていく。
そして財布の前へ。
と、ここで声をあげた。
さっきから頭の中で何度も考えていたセリフだ。
「あれ～？こんなとこに新しい目薬があるぞ～？まさかＵ氏が新しいのを買って返して
くれるの？嬉しいなぁ」
と、とっさの反応にしてはやけに流暢だったかもしれないが、なるべく自然に話し、Ｕ
氏も笑顔で「貸してくれたんだから当然だよ～」と答えてきた。
そしてボクは目薬と財布を手にし、「ありがとね～」と言いながら逃げるようにその場
を去りましたわ。
ふぅ。

その場を去って車に乗り込んだ時には汗ダクになってたね。
疲れたなぁ～。
むやみやたらに目薬なんて貸すもんじゃないね。
命取りになるわ。

それはそうと…
新しい『ものもらい用の目薬』を貰ったはいいが、こういう用途の目薬って次に使う
機会はいつになるんだろうねぇ。