SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

小説「ブレイブ・ストーリー」

2006年09月07日 | 音楽・演劇・美術・文学
 「過酷な現実を変える」というテーマの王道はタイムマシンもので、過去の変更による歴史の改変とタイムパラドックスがストーリーの核を形成することが多いが、本作はRPG好きという原作者、宮部みゆきが創造した「幻界」というバーチャル・ワールドに主人公が紛れ込んでゲームの世界を生身で体験するような趣向になっている。
 その「上がり」で現実世界を変えられる?という展開である。

 映画を見てから原作を読むと、普通はこれがあのシーンかと思いながら筋をたどることが多い。が、本作に関する限りその「思い当たるところ」がほとんど無かった。

 小説「ブレイブ・ストーリー」は単行本で上下2冊、文庫版で3冊または4冊という大長編である。
 現実世界も幻界の出来事もじっくり描きこまれている。それを2時間足らずの映画にするのだから「大胆な脚色」なしには成立しない。

 しかしその差が生まれたもっとも大きな理由は、小説と映画のターゲットの違いだ。小説は少年時代に抱いた冒険心を忘れない大人のための作品。一方映画は夏休みに公開されるアニメーションということからも明らかなように、もう少し下の世代も含めて対象にしている。

 小説の方はかなり重いし、現世と幻界が一種のパラレルワールドのように描かれて、登場人物も「一人二役」的な味わいがある。映画はその辺をバッサリと省略し、かといってその「重さ」の片鱗は残しているので、結果的に子供向きというよりはやや高めの年齢向きの作品になってしまった。
 したがって原作に比べてしまうとやや物足りないということになるし、なぜそうなっているのか説明不足の部分もあるが、映画は映画でそれなりに楽しめた。

 おなじ宮部作品の映画化で大林監督が撮った「理由」は、それこそ原作の一字一句がそのまま映像化された印象で本作とは対照的である。

 映画「ブレイブ・ストーリー」に対する宮部氏の感想を聞いてみたい気がする。


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