SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「リーピング」

2007年05月22日 | 映画(ラ行、ワ行)
 ジョエル・シルバー+ロバート・ゼメキスのホラー製作プロダクション、ダークキャッスルの作品。どちらかというとB級色の濃い作品群が多かったが、本作はなかなか良い。

 もちろんホラーなのだが、久々に本格的なオカルト映画といって良いだろう。ただ聖書が日常生活のベースにある欧米諸国とは違うので、悪魔崇拝を正面から描いていることに対して、まず拒否反応を起こす人がいるかもしれない。

 不可解な自然現象をリアルに再現した映像とミステリータッチの謎解き、どんでん返し、そしてラストに待ち受ける恐怖とバランスの取れた作品になっている。

 ただゴールデンウィーク作品と夏の大作の隙間で、いかにも「つなぎ」というような地味な興行であり、短期打ち切りとなりそうだ。
 ヒラリー・スワンクも頑張っているのに、もったいない。

 ファンはお見逃しなく。

映画 「ゲゲゲの鬼太郎」

2007年05月15日 | 映画(カ行)
 ウエンツ瑛士 主演、水木しげる原作コミックの実写版。

 おなじみのテーマ音楽を聞くだけでも全体のトーンが分かる。妖怪は出てくるがホラーではない。どちらかと言うと脱力系、癒し系のイメージだ。
 それは日本の古来からの自然と妖怪が分かちがたく結びついているからだろう。

 冒頭でその自然破壊と妖怪の対決がテーマかと思わせる建設現場の自己が描かれるが、それが仮にお稲荷様のタタリだとしても、それに続くストーリーは単にネズミ男の出来心に端を発するものでまったく繋がりはない。

 スターウォーズのエイリアン酒場のようなシーンもあり、配役も豪華版で役者が楽しんで演じていることが分かる。ただし、製作者は単に子供の映画だと思って作ったのではないかと思われる節がある。

 井上真央のヒロインとその弟の家庭が物語の中心になる。
 彼女の父親が罪を犯し、獄中で病死してしまう。その死体が処理される直前、奇跡の復活劇が起きるのだが、生き返っても罪の償いは残っているはずなのだ。それを父子そろって「さあ、帰ろうか」と言って病院から家に帰るというのは、ありえないだろう。

 制作サイドも出演者も、それがおかしいなどとは思いもしなかった、ということなのだろうか。

 それにしても公開間もないからか、新宿ではレオナルド・ディカプリオのオスカーノミネーション作品「ブラッド・ダイヤモンド」よりひとまわり大きなスクリーンにかかっていた。

映画 「神童」

2007年05月11日 | 映画(サ行)
 松山ケンイチと成海璃子、旬の二人が主演し、TV「のだめカンタービレ」でクラシックファンが増えたと言われているこの時期の公開にしては観客がそんなに多くない。

 ピアノをめぐる天才少女うたと凡人ワオの物語だが、「アマデウス」におけるモーツァルトとサリエリのような葛藤はない。むしろ、お互いを高めあっている理想的な関係だ。

 原作は読んでいないが、ストーリーもテーマも良い(ように思える)。主役の配役も魅力的。だけど映画化作品は意外と平板な印象に終わってしまった。多分原作のストーリーを詰め込んでいるのだが各エピソードが中途半端で全体のメリハリに乏しく、ディテールの描きこみがないためにクッキリした像を結べないからなのだ。

 縫いぐるみがどれほど大切な意味を持つものなのかとか、演奏会の後少女はどうなるのかとか、病気への対処とか、努力型の松山ワオは音大でどうなるのかとか、むしろテレビの連続ドラマで毎週楽しみたいくらいだ。

 ラストもどうやって、松山ケンイチがあの場所へたどり着けたのか分からないから、現実ではなく幻想シーンのような印象を与えてしまう。題材が良いだけに、まことに惜しい映画だ。ただ、見なければ良かったという気は少しもない。

 「ピアノの墓場」が物語のキーとなる場所だが、最近読んだ中で最良の文芸的、大河的タッチのミステリー『風の影(集英社文庫)』に出てくる「本の墓場」を連想した。


映画 「幸福な食卓」

2007年05月08日 | 映画(カ行)
 現代の日本を描こうとするとき「家庭崩壊」は一つのテーマになってきた。時にシリアスだったり、時にホラーになったりするけれど。

 本作の場合は爽やかにして切ない系だ。

 ヒロイン佐和子を演じる北乃きいと勝地涼の微笑ましい純愛が軸になって、佐和子の家族の物語が展開する。主演の二人がちゃんと中学生に見えるところがすごい。(「ラフ」で速水もこみちが中学生~高校生というのはいくらなんでも無理があった。)

 そうなりそうだと思うとそうなったり、ラストのいつまで続くの?的な長まわしなど、この監督は新人なのかと思ったらそうではなかった。でもその欠点を補って何か残るところのある作品だ。見て損はない。

 平岡裕太演じるヒロインの兄のガールフレンドがなんとも不思議な存在感を放ち、物語のキーともなるところがユニーク。ただ、見方によっては監督も女優も未消化ゆえの「不思議さ」なのかも。

 形は一般の家庭と違うかもしれないけれど、ではヒロインの家庭は壊れているのかというと、そうではないように思えてきた。

 人間は気付かないところで誰かに守られている、と台詞が心に残る。

映画 「ハンニバル・ライジング」

2007年05月07日 | 映画(ハ行)
 「羊たちの沈黙」に連なるシリーズ第4作。

 「スター・ウォーズ」はもともとエピソード4だったので、その前史を描く1~3があることは暗黙の了解時であった。少し古くは「ゴッド・ファーザー」がpartⅡで若き日のドン・コルレオーネを描いていた。

 ヒット作は「バットマン」も「エクソシスト」もビギンズやビギニングで、そもそも何故そうなったのかを続編で描き始めた。順序正しく描かれたのは「スパイダーマン」くらいか?

 で、今回「ハンニバル」誕生の秘話が明かされるわけだ。幼少から青年期の話なのでアンソニー・ホプキンスは出てこない。その分コクはないが、若きギャスパー・ウリエルは美しく、その顔の下にヌルリとした不気味な感触がある。

 続編とは言うもののほとんど独立した作品として鑑賞可能で、前作を知らずとも支障はない。逆に美的に洗練されたアンソニー・ホプキンス・ハンニバルの趣味、教養がこの環境から生まれえるだろうか、というギャップがありそうだ。

 配役ではあのコン・リーがハンニバルの叔母に当たる日本人の未亡人を演じている。ジャポニズムが日本人の目から見ると少し違和感ありだ。
 凶暴なホプキンス・ハンニバルが噛み付き防御のためにかぶせられていたマスクは、日本の鎧とヴィジュアル的なイメージを重ねている。

 5月1日、連休谷間の映画ファンサービスデーにしては少し入りが悪かった。皆「スパイダーマン3」に行ってしまったんだ。