SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画「ブルックリン」を見る。

2016年08月05日 | 映画(ハ行)
 週末、シネコンに映画を見に行きました。朝9時から1回のみ上映の作品で、もうじき終わるものは朝1回とか、夜1回とかの上映形態になります。終映が近いし、朝早いしで空いているとは思うものの、この席で見たいというこだわりがあるので、3日前から可能な座席指定で席を確保しておきました。
 これで、当日は間際に到着しさえすれば良い環境で鑑賞可能なはずでした。ところが駅に着くと、隣の駅で人身事故があり、不通なのです。さて、どうする。ハリウッド映画のハラハラ、ドキドキ実体験です。
 金に糸目はつけない、と思ってもタクシーは見事につかまりません。満員で乗せてくれないバスを1台見送った後、しばらくしてようやく到着した次のバスになんとか潜り込み、身動きもできないまま目的地に到着しました。
 結果、上映開始から30分後に、事情を話して入れてもらうことができました。すでに鑑賞中の観客の妨げにならない席を探してくれて着席しましたが、周りを見ると売れているはずの席も空いたままでした。事故の影響で来られなかった方々の席でしょう、多分。
 冒頭部分を見逃してしまった映画のタイトルは、今年度アカデミー賞ノミネート作品の「ブルックリン」でした。

映画「プレイ 獲物」

2012年07月30日 | 映画(ハ行)

 フランスの犯罪映画。あちらの刑務所では面会に来た夫人とベッドを共にすることができる個室が用意されている、という驚きの冒頭シーンで始まる。

 男は強奪した金を独り占めし、獄中でも仲間だった男から責め立てられている。家族にも危害が及びそうになり、冤罪で釈放になる同室の男に家族を託す。ところが彼がとんでもない危険人物だったことが分かり、家族を守るために脱走する、というお話だ。

 主人公が犯罪者で、犯罪者対犯罪者の話に追っての警察が絡み、迫力の逃亡劇にサスペンスが盛られる。

 この一途な主人公にすっかり感情移入してしまい、彼が悪人であったことを忘れそうになる。

 言葉に障害がある彼の幼い娘は可愛いし、女性刑事は美しいにもかかわらずタフでカッコいい。主人公の妻も、同室の男の妻も含めて、女性で見せてくれる作品だ。

映画 「へルタースケルター」

2012年07月19日 | 映画(ハ行)

 今年一番の話題作であることは間違いない沢口エリカ主演作。極彩色のファッション映画だ。

 時代のアイコンのような全身整形美女の堕ち方が描かれる。最先端医療機関が裏で臓器売買にもかかわっているらしく、こちらの告発型ミステリーで見せることも可能だった。が、本作は主演の沢尻を見せるヒロイン映画に徹している。

 監督の蜷川実花は写真家なので、一枚の写真にストーリーを語らせることは得意でも、映画になると言葉に頼っている。
 画はひたすら華やかに暴走し、物語の深部は大森南朋のセリフに凝縮されていて、歯の浮いたような美文調の台詞は劇中でも「詩人」と冷やかされているほどだ。

 これで終わりかと思ったらその後が長く、堕ちるところまで堕ちたその醜態をさらす終景にもいささかのみじめさはなく、あくまでスターとして君臨している様に女優沢尻エリカの実像が重なるようであった。

 アイコンと言っても彼女を崇めているのはひたすら女子高生で、そのガーリートークがうるさい。元祖ガーリーのソフィア・コッポラとはやや趣味の違う映画になっている。

映画 「ヒューゴの不思議な発明」

2012年03月15日 | 映画(ハ行)
 2D派だが、時間の関係で3Dで鑑賞した。が、これが正解。直接ストーリーと関係ない情景描写も、駅の雑踏もずっと見ていたくなる。

 マーティン・スコセッシ監督にしては珍しく暴力とも狂気とも無縁の世界だ。代わりに映画への愛が満ちている。映画創世記の幻の監督ジャック・メリエスについての秘話の趣である。

 リュミエール兄弟が撮った最初の映画を作中で見ることができる。単に汽車が目の前を通っていくだけの短いフィルムに、当時の人たちは轢かれやしないかと肝を冷し、狂喜した。その技術革新の新しいステージを現代の観客は3Dで経験していることになる。映画のテーマと表現がぴったりと寄り添った稀有の映画だ。

 どんな人にも存在する意味があるという主題に、元気をもらえた。心から見てよかったと思える、今のところ今年一番の作品になった。

映画 「ポエトリー アグネスの詩」

2012年02月28日 | 映画(ハ行)

 韓国映画の秀作。

 楽しいこともない、どちらかというと重い日常が淡々と描写され、ハッピーなエンディングがあるわけでもないのに清清しい印象が残る。
 その理由はこの映画の語り口にあると思うのだが確信はない。

 ヒロインは中学生になる孫の男の子と二人暮らし。暮らしは楽とは言えず、ヘルパーの仕事をしている。物忘れも意識し始め、検査を勧められたりしている。そんな時に孫のグループがクラスメートの自殺事件に関わったことがわかり、示談に持ち込むためにヒロインも他の子供の父親に混じって奔走することとなる。

 これがストレートに描かれたら普通の映画だ。ところが、一方でヒロインはカルチャースクールの詩作教室に通い始める。修了までに一編の詩を書くという課題で、そこで自分の周囲の世界を改めて見る、その「視点」の映画でもあるのだ。

 老いた命と亡くなったクラスメートの命がいつの間にか重なり、死者の目で世界が捉えられたときの輝きで映画は語られていたことが分かる。ヒロインの作った詩の朗読とともに写されるラストの解釈は観客にゆだねられる。

 だからという訳ではなく、映画そのものが切なく美しい詩のようだ。

映画 「ヒミズ」

2012年02月10日 | 映画(ハ行)

 園子温監督の新作。

 主人公の彼女はある意味ではうっとうしいかも知れないが、その誠実な付きまとい方に主人公とともに観客も感謝したい気持ちになる。

 舞台は震災被災地に近い、ある水辺。主人公の家はその辺でボートハウスを営んでいる。とは言え、父も母も家を出て不在、という複雑な環境だ。震災で家をなくした人たちが吹き溜まりのように周囲に集まり、テント暮らしをしている。

 主人公とその彼女の肩には世界のあらゆる苦悩と悲惨がのしかかっているかのようだ。谷将太と二階堂ふみ、若い二人は健闘しており、ヴェネツィア映画祭の新人賞ダブル受賞は大いにうなずける。脇を園監督作品常連の不適な面々が固める。

 「うっとうしい彼女」のエールがズタズタになった主人公の精神を再生に向かわせる。そのエールは震災被災地へのエールのようにも聞こえてくる。

映画 「ピザボーイ 史上最凶のご注文」

2011年12月13日 | 映画(ハ行)

 アカデミー賞ノミネート作品「ソーシャル・ネットワーク」で主演男優賞にノミネートされたジェシー・アイゼンバーグが主演。

 敵も味方も2人組のダブル・バーディームービー。B級テイストのクライム・コメディながら、なかなかの傑作だ。

 親の財産を狙った息子が殺し屋を雇う。その依頼金調達のために、見ず知らずの人間に銀行強盗をさせようというとんでもないストーリーだ。

 たまたまやってきたピザの配達員が時限爆弾を装着され、銀行強盗を強要される。果たして・・・。

 敵、味方に殺し屋が絡んで三つ巴の揺れ動く力関係と、二組のバディの微妙な心情のあや、誰もどこかズレている尋常ではない人物造形、とストーリーも見せ場も満載の面白ムーヴィーなのだ。

 正月映画大作群の中では地味だが、ブランド品「・・・の冒険」より良いかも・・・。

映画「僕たちは世界を変えることができない。」

2011年09月30日 | 映画(ハ行)

 向井理が主演。「But, we wanna build a school in Cambodia.」というサブタイトルが付く。学生たちがカンボジアに小学校を建てるまでの物語である。

 鑑賞して、映画としてのバランスや完成度はさておいて、何とも不思議な魅力がダイヤモンドの原石のように潜んでいるのに驚いた。、

 なぜカンボジアに小学校なのか?劇中で主人公もそう問われて絶句する。ただ何となく、でしかないのだ。たまたま落ち込んでいるときに郵便局で見たパンフレットに150万円あればカンボジアに小学校が建つ、とあった。

 そういう軽いのりが、やっぱり現地も知らないで何だ、というわけでとりあえず行ってみた辺りから事情が変わってくる。

 ここからは現地ガイドとともに観客もカンボジア観光をする雰囲気になってくる。が、物見遊山の観光スポットではなく、見学先はカンボジア史の負の部分をたどる重い旅だ。現地ガイド役が役者さんなのか本物のガイドなのか分からないくらいうまくて泣ける。半分ドキュメンタリーのようなタッチなのだ。

 青春のある時期、みんなが確かに輝いていたというノスタルジーに酔う。

 カンボジアの田園風景の中での集団立小便は絵のように美しいシーンの一つだ。

映画 「BIUTIFUL ビューティフル」

2011年07月21日 | 映画(ハ行)

 冒頭、形見の指輪について囁きで交わされる会話に続いて、雪山で主人公が青年と会話を交わす。死をイメージさせるが詩的な映像である。青年は死神?でないとすれば天使?

 一転して混沌と喧騒に溢れたバルセロナ下層の裏社会。男は麻薬や不法労働の手配をしながら生計を立てているが、一方で死者の声を聞くことが出来る不思議な能力も持っている。

 妻との仲は崩壊、父として幼い姉弟を守りながら、自身が死の病に冒されていることも分かる。もう身も心もボロボロで、ビューティフルとは対極の世界が描かれる。

 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督はオムニバス風に群像を描いた作風で手腕を見せてもらっていたので、本作はやや異色ながら力作だ。

 冒頭の映像が、再びラストで異なったアングルから姿を見せる。人は死に際に、もっとも思いの残ったことが頭をよぎるのだろうか?

 死ぬと人は年をとる事をやめる。いつの間にか、早くして死んだ父親の年齢をはるかに超えて、年老いた自分と若い父は天国の入り口で出会うのだろうか?

映画 「パラダイス・キス」

2011年06月07日 | 映画(ハ行)

 北川景子と向井理主演の同名コミックスの映画化作品。

 ヒロインの人生への覚醒とファッションデザイナーのサクセス、さらに二人のラブストーリーと盛り沢山のストーリーだ。クライマックスにデザイン学校の卒業制作ファッションショーがあり、原作を知らないのでこれで終わりかと思ったら、まだまだ話は続く。

 コミックスの戯画化された誇張で描かれるファッション界の華やかさが実写化されると、観客の属する一般世界とは隔絶した絵空事感がある。

 そこに現実とは異なる夢の世界が広がり、それこそが映画のスクリーンの魅力でもあるのだが、往年のスターとは違って主役の二人がクールで、フルCGアニメでも見るようなある種の距離感がある。