蒼井優主演のロードムービー、と聞けば旅の映画かと思うが、目的のない、言わば煩わしさから逃れるための「移動」が描かれる。
事情があって他人の荷物を捨てたことが一応刑事事件の範疇に入ることから、そうおおげさなものでもないだろうに、自ら「前科者」のレッテルを貼ってしまう。
居づらくなった家を出ての生活が始まるが、「誰も自分を知らないところで職を得、百万円貯まったら他所へ行く」というルールを自分に課している。他者との関係がちょうど煩わしくなりかけるタイミングと百万円貯まる頃が、面白いことにリンクしてくる。
最初、彼女と小学生の弟との関係が険悪なように見えるが、実は二人はとても良く似ており一体なのだ。映画全体がその二人の成長物語になっていることに気付く。外にいる彼女と弟をつなぐのは手紙によるコミュニケーションだ。
ラストで、ねじれてしまった森山未來との恋愛が果たしてどういう結末を迎えるのか、余韻をもって観客の想像にゆだねられる。