SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「モンスターズ・ユニバーシティ」

2013年08月07日 | 映画(マ行)

 「モンスターズ・インク」の続編ではあるが、描かれるのはその前日談に当たる。前作「~インク」の公開を調べたら何と2001年、12年前なのだ。

 2Dと3D版があり、それぞれ字幕版と日本語吹替え版がある。2D字幕版で見たかったが、劇場アクセスの関係で2D吹替え版の鑑賞となった。驚くのはセリフだけではなく、画面の中に登場する店の看板などの文字も日本語になっていることだ。
 上映各国の事情に合わせて「その国版」が作られているのだろうか?

 物語は主人公が一人前の「怖がらせ屋」になるために、超難関のモンスターズ・ユニバーシティ「怖がらせ学部」に入学しての奮闘を描く。あの手この手のハードルが用意されていて、それをどうクリアして行くかが見ものである。

 ただし、単なるお子様映画とは違う。めでたし、めでたしですべてがうまく片付くハッピーなエンディングが予定されているわけではないのだ。

 悪役に相当する女性学部長も、見るからに不気味で憎々しいキャラクターで登場し、ことあるごとに主人公たちを妨害、最後には彼らたちの奮闘を見直すことになるのだが並みの「悪人の改心」とは一味違う。ダメなものはダメなのだ。その辺が大人の鑑賞にも耐える作品といえる、一つの要素だと思う。

 予想外の収穫は本編前に上映される短編「ブルー・アンブレラ」である。6分ほどのアニメ作品で、青い傘が雨の日に街中ですれ違った赤い傘に恋をするというお話だ。これが実写なのかフルデジタルのアニメなのか区別がつかないリアルさで、しかも美しい作品なのだ。

 暑い夏のお得な一編である。

映画 「みなさん、さようなら」

2013年02月18日 | 映画(マ行)

 パーティ会場となった豪邸から参加者が誰も出られなくなってしまう、ルイス・ブニュエル監督の「皆殺しの天使」のような趣向かと思ったら全く違った。

 同学年の全員が同じ団地から通っている。その107名の同期生が卒業後だんだん団地から離れ、「そして誰もいなくなった」という物語。最後の一人が濱田岳演じる主人公である。

 彼は小学生の時に一生を団地の中で暮らすと決心する。そのファンタジーのような世界を描いた話かと思ったら、途中でその理由が明らかになり、この部分はテレビの取材映像を使ってドキュメンタリー調にできており、これがシリアスな心のトラウマの問題であることが分かってくる。

 やがて、それから解き放たれるための試練の時が主人公にも訪れ、ここはアクション・ヒーロー風の味付けで、最後には大きな親の愛が溢れてエンディングの旅立ちへといたる。

 物語の面白さが詰まった、お得度の高い傑作だと思う。中村義洋・監督作品

映画 「メン・イン・ブラック3」

2012年06月26日 | 映画(マ行)

 ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズ主演のSFアクション・コメディ・シリーズ最新作。

 これが期待以上でなかなか良い。前2作ももちろん面白いかったのだが、後に残る良さが感じられたのは初のことである。

 今回はタイムスリップしてのお話となる。過去に戻るのはウィル・スミスの方で、戻った先には若き頃の相棒がいる。このトミー・リー・ジョーンズの若き日をジョシュ・ブローリンが演じて、いわば2人一役なのだが、話のウェイトはむしろ過去にあり、トミー・リーの方が脇に回っている。

 二人の年齢差は約20歳、とはいえ実年齢44歳のジョシュが20代後半を演じるのだから一目見たウィル・スミスが「老けて見える」というセリフが、そのままギャグになる。

 過去では二人の出会いにまつわる秘話が紹介され、ホロリとなってしまう。

映画 「ミッション:8ミニッツ」

2011年11月29日 | 映画(マ行)

 ダンカン・ジョーンズ監督の第2作。デビュー作「月に囚われた男」も秀作だったが、本作も劣らぬ高クォリティである。デヴィッド・ボウイの息子という肩書きはまったく必要無い。

 あえて分類するならタイムマシン系のパラレル・ワールドを描くSFであるが、内容は犯人探しのミステリー、鑑賞後は人間存在の意味に迫る重たさと、どんな状況でも人を思うことの切なさが胸に迫る。

 列車が爆破された。テロの次の標的はシカゴ都心である。それを阻止するために一人の軍人が選ばれた。過去の人物の意識の中に8分間だけ入り込むことが出来る革新的な技術をこの事件に応用しようというプロジェクトなのだ。

 あらゆる条件が適合する、列車に乗り合わせた一人の男の意識の中へ軍人が送り込まれ犯人捜査が始まる。8分で解決するわけが無い。したがって爆破までの8分間への旅が何回も繰り返され、少しずつ事実が解明されて・・・。

 過去を変えてはいけないというタイムマシンの法則を犯してしまおうというわけだ。その8分間が行くたびに微妙に違う、パラレルワールドが楽しめる。

 「ジョニーは戦場へ行った」「アバター」などと見比べるのも一興だろう。

映画 「マネーボール」

2011年11月18日 | 映画(マ行)

 ブラッド・ピット主演の最新作。

 弱小球団オークランド・アスレチックスが栄光の連勝記録を達成するまでが描かれる。がそのサクセスというよりGM(ジェネラル・マネージャ)としてそれに関わった男の生き方に焦点がある。

 チームを強くするためには強い選手集めが肝心だ。ベテラン・スカウトの感に頼る従来手法を、数値データによる科学的手法が覆す。どこも見向きもしない選手を、データが示すなら安く手に入れることが出来る。

 それでも、すべてのチームがその手法の有効性に気付いて採用すれば、そこから先はやはり個々の選手の技量差の勝負となる。

 ブラピGMがやった功績は、その手法の有効性に気付いたことと、そのデータ分析を実際に行っていた優秀な男を射止めたことにある。脇役的だがこのバディの存在は大きい。

 GM自身の、有望視された選手時代とその挫折から転身という前歴が物語を深くしている。

映画 「未来を生きる君たちへ」

2011年08月24日 | 映画(マ行)

 残虐行為がまかり通るアフリカの難民キャンプに勤務する医師と、デンマークに残されたその家族の物語。長男は学校でひどいイジメにあっている。その学校へ、母をなくし父親と転居した少年が転校して来る。

 この二人の少年を主人公に、「憎しみが何を生み出すか」という重いテーマを見せてくれるのはデンマークの女性監督スサンネ・ビア。アフリカとデンマークの景観が鮮やかな色調で再現される。

 同じ北欧でも他国に対する偏見があるらしいことが分かる。厳しい社会、あるいは世界の現実と少年たちは向き合っている。暴力が支配する恐怖の中で毅然と生きるには、それを恐れていないことを相手に分からせないといけない。
 その時の態度のあり方が問題となる。

 物語はある悟りへと到るが、そのためにはあまりに重い代償が必要だったのだ。

映画「蜂蜜」

2011年07月20日 | 映画(マ行)

 珍しいトルコ映画。山岳地帯に住む一家を訪れる悲劇が淡々とした描写で綴られる。

 最近は映画鑑賞時のマナーについてよくアナウンスされるが、今回は上映中の観客同士のおしゃべりについて、大変静かな作品なので特に注意するよう、休憩中に放送されたのが印象的だった。

 それは本当だった。台詞は少なく、音楽もない。山の深い緑の中で、時折鳥のさえずりとせせらぎの音が聞こえ、蜜蜂の羽音が空間をよぎって行く。

 巣箱を山において蜂蜜を採取する、というのが父親の仕事だ。これも養蜂という概念で捉えられるのだろうか。蜂を求めて山奥に入って行かなければならない。巣箱は高い木の上に設置される。

 それがどれだけ危険な仕事であるかが映画の冒頭で示される。それが悲劇の伏線でもあるのだが、逆にそれが父親に起こった悲劇であり、ここから時間がさかのぼって物語られる、と解釈することもできる。が、作品中では一切説明がない。

 一家の幼い息子は吃音で教科書がうまく読めない。教師は生徒の良い行いを見つけてはご褒美のバッチをくれる。息子は何とかうまく読んでバッチを手に入れたいのだが、終盤近く、やはりうまく読めない。でも、教師はバッチをくれる。

 この男の子がどう成長していくのか。3部作で、第1部の壮年期を描いた「卵」、第2部の青年期を描いた「ミルク」でが追って公開になるようだ。日本では製作とは逆に成長を追う形での公開となる。

映画「まほろ駅前 多田便利軒」

2011年05月13日 | 映画(マ行)

 町田を思わせる「まほろ」駅前の便利屋が舞台となる。

 瑛太の便利屋と中学時代の同級生だった松田龍平の偶然の出会いから、奇妙な同居が始まる1年間が暦のように描かれる。

 2,3カ月おきに示される「○月」のタイトルで章立てされ短編小説のような味わいになっているが、各パートの登場人物が全体として響きあい、一つの流れをつくっている。

 脇の配役がなかなかに豪華だし、ボケと突っ込みというわけではない主演二人の、絶妙というわけでもないコンビぶりが味わい深い。

 便利屋への依頼をこなしていく中で、それぞれが心に抱えた痛みがジワッと伝わってきて、観客も彼らへの愛着が深まり、愛おしくなってくる。

映画 「マザーウォーター」

2010年11月02日 | 映画(マ行)
 冬の陽だまりが今日も温かい。ここでお弁当でも食べようか・・・という風情の、何も特別のことは起こらないが、それはそれで退屈もしない・・・という意味での癒し系作品。

 最近、川の流れるこの町にやってきたらしい二人の女性がカウンターバーとカフェを開いている。それに豆腐屋をやっている若い女性や風呂屋を経営している男がいる。みんな水に絡んだ仕事だ。

 小林聡美のやっているバーはウィスキーしか出さない。何故なのか?この町だから?というような会話がある。バーで出るのはサントリーの「山崎」だ。山崎工場は京都・大阪の境界にあり、近くを宇治川、桂川が流れている。
 その辺のお話のようだ。

 胎児は母の胎内で羊水に浮かんでいる。何やらそのあたりに由来するかのような、これは女性の生理から生まれた作品だ。

 裏では何かが起こっているようなのだが、肝心なものは画面には出てこない。日常をひたすら、ただありのままに生きる、これは生粋の女性映画だ。

映画 「マイブラザー」

2010年06月16日 | 映画(マ行)
 デンマーク映画「ある愛の風景」のハリウッドリメイク版。戦争後遺症ものだが、今やベトナムではなく、これはアフガン戦争のお話。

 トビー・マグワイアとナタリー・ポートマンの夫婦に弟のジェイク・ギレンホール、父親のサム・シェパードという豪華な配役だ。

 兵士の訃報を、家族がようやく受け入れることができるだけの時間が経過した後、誤報であったことが判明し、壮絶な体験で心を病んだ一家の主が帰還する。

 トビー・マグワイアが減量、鬼気迫る演技で圧巻。ヒリヒリする心の痛みが伝わってくる。だけど、この家族がいれば大丈夫と、思わせる微かな希望の光を灯しての幕切れとなる。

 オリジナル版「ある愛の風景」はこちら ↓
 http://blog.goo.ne.jp/machindows/e/a4ea6697a34a2b5b6db729bad177e839