SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ミッション:8ミニッツ」

2011年11月29日 | 映画(マ行)

 ダンカン・ジョーンズ監督の第2作。デビュー作「月に囚われた男」も秀作だったが、本作も劣らぬ高クォリティである。デヴィッド・ボウイの息子という肩書きはまったく必要無い。

 あえて分類するならタイムマシン系のパラレル・ワールドを描くSFであるが、内容は犯人探しのミステリー、鑑賞後は人間存在の意味に迫る重たさと、どんな状況でも人を思うことの切なさが胸に迫る。

 列車が爆破された。テロの次の標的はシカゴ都心である。それを阻止するために一人の軍人が選ばれた。過去の人物の意識の中に8分間だけ入り込むことが出来る革新的な技術をこの事件に応用しようというプロジェクトなのだ。

 あらゆる条件が適合する、列車に乗り合わせた一人の男の意識の中へ軍人が送り込まれ犯人捜査が始まる。8分で解決するわけが無い。したがって爆破までの8分間への旅が何回も繰り返され、少しずつ事実が解明されて・・・。

 過去を変えてはいけないというタイムマシンの法則を犯してしまおうというわけだ。その8分間が行くたびに微妙に違う、パラレルワールドが楽しめる。

 「ジョニーは戦場へ行った」「アバター」などと見比べるのも一興だろう。

映画 「マネーボール」

2011年11月18日 | 映画(マ行)

 ブラッド・ピット主演の最新作。

 弱小球団オークランド・アスレチックスが栄光の連勝記録を達成するまでが描かれる。がそのサクセスというよりGM(ジェネラル・マネージャ)としてそれに関わった男の生き方に焦点がある。

 チームを強くするためには強い選手集めが肝心だ。ベテラン・スカウトの感に頼る従来手法を、数値データによる科学的手法が覆す。どこも見向きもしない選手を、データが示すなら安く手に入れることが出来る。

 それでも、すべてのチームがその手法の有効性に気付いて採用すれば、そこから先はやはり個々の選手の技量差の勝負となる。

 ブラピGMがやった功績は、その手法の有効性に気付いたことと、そのデータ分析を実際に行っていた優秀な男を射止めたことにある。脇役的だがこのバディの存在は大きい。

 GM自身の、有望視された選手時代とその挫折から転身という前歴が物語を深くしている。

映画 「スマグラー おまえの未来を運べ」

2011年11月04日 | 映画(サ行)

 コミックが原作らしく登場人物も劇画調に、衣装も演技も過剰気味でコミカル。ではあるけれど、中身はなかなかにハードだ。

 タイトルは密輸業者の意味で、裏社会の訳あり物を運ぶ闇の業者の話だ。例えば人間の首無し死体とか・・・。一方の首の方は別に宅配で送り届けられるのだから物騒だ。

 タイトルロールの運び屋は永瀬正敏が演じている。これがはまってカッコいい。主役の妻夫木聡は役者志望のフリーターで借金で困り果てたすえ、この稼業でのバイトを斡旋される。

 劇中、延々と続けられる拷問シーンがあり、これに耐えられるかどうかが評価の決め手だ。これに並ぶ拷問シーンはメル・ギブソンのキリスト受難映画「パッション」くらいしか知らない。

 一応めでたく任務は遂行され、話は完結する。もしシリーズ化するとすれば永瀬の運び屋が次は何を運ぶか?、あるいはフリーター妻夫木が次はどんな困ったシチュエーションで役者魂を見せるか?、二つの路線が考えられる。タイトルから言えば前者だが。

映画 「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」

2011年11月02日 | 映画(ア行)

 第1作でチャールトン・ヘストンを乗せた宇宙船が飛び立って、再び帰還するまでの間に本作で描かれた「事件」が起こったことになる。1作を見る限りでは、その間に人間が核戦争を引き起こし、都市は壊滅、放射能の影響で異常な発達を遂げた猿が地上を支配したと思われたが、違った。

 アルツハイマーの新薬開発が物語の引き金という、現代的なテーマ性を盛り込んである。1作の俳優に施されたメイク技術も凄かったが、時代は遥かに進んでしまった。その映像リアリティを楽しめる。

 1匹の高度に知能が発達したチンパンジーが群れを率いることになるが、それがまるでわが国の、知将と呼ばれた戦国の武将・毛利元就なのだ。皆で団結することの大切さを「三本の矢」の例えで仲間に伝える。そういえば地の利を生かした対人間戦も、知将ぶりが発揮される。脚本家はよほどの日本通なのか?

 アメリカ西部の一都市での出来事なのだが、それがどう地球規模に拡大するかはラストのクレジットで明かされるので、終わったと思って席を立たないこと。

 徹底的にコケにされる隣の叔父さんがキーパーソンだったとは・・・。