SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ダブル・ミッション」

2010年06月29日 | 映画(タ行)

 この邦題ではどう見てもハードなアクションという感じだ。ところがどっこい、原題は「隣のお姉さん」ならぬ、「隣のスパイ」だ。

 ジャンルで言えばスパイ・アクションというよりはファミリー・コメディに分類すべきであろう。そのお隣のおじさんが実はスパイなんだよ、という味付けになっている。

 ジャッキー・チェンのハリウッド進出30周年記念を銘打った作品だが、大作というわけではない。ジャッキーのコミカルな面が良い味を出したホノボノ系アクションの趣だ。

 3人の子役もなかなか良くて安心して見られるファミリー・ムーヴィーといえるだろう。ジャッキーのこれ以降の方向性は・・・、次回作を見ないとわかりません。

映画 「マイブラザー」

2010年06月16日 | 映画(マ行)
 デンマーク映画「ある愛の風景」のハリウッドリメイク版。戦争後遺症ものだが、今やベトナムではなく、これはアフガン戦争のお話。

 トビー・マグワイアとナタリー・ポートマンの夫婦に弟のジェイク・ギレンホール、父親のサム・シェパードという豪華な配役だ。

 兵士の訃報を、家族がようやく受け入れることができるだけの時間が経過した後、誤報であったことが判明し、壮絶な体験で心を病んだ一家の主が帰還する。

 トビー・マグワイアが減量、鬼気迫る演技で圧巻。ヒリヒリする心の痛みが伝わってくる。だけど、この家族がいれば大丈夫と、思わせる微かな希望の光を灯しての幕切れとなる。

 オリジナル版「ある愛の風景」はこちら ↓
 http://blog.goo.ne.jp/machindows/e/a4ea6697a34a2b5b6db729bad177e839

映画 「告白」

2010年06月15日 | 映画(カ行)
 2009年の本屋大賞を受賞した湊かなえの小説が原作。中島哲也監督の重量級力作だ。

 ほぼ原作どおり、複数の登場人物の「告白」によって構成されている。ただ原作とまったく印象が違うのは、クラスの騒々しさだ。

 教師・松たか子の告白を、生徒たちはシーンとした雰囲気で聞いているとばかり思っていた。映画では教室を喧騒が支配している。クラス全体が壊れている。これが現実に近い「リアル」というものだろう。

 主要な登場人物がすべて、どこかで微妙に人格のバランスを崩している。この小説が描く誇張された世界観だ。それをエンターテインメントで一気に見せてくれる。

 ただ一人「正常」かと思われるのが、余命いくばくもない教師の元夫で物語のキーとなる。

 中島監督の過剰感が今回は鳴りを潜め、時々挿入される冬雲が哀しい。

映画 「パーマネント野ばら」

2010年06月11日 | 映画(ハ行)
 バツイチ女性が子供を連れて故郷の母親の元で暮らし始める。その日常をほのぼのと綴った映画、と思うと見事に裏切られる。

 まず、ほのぼのとは言い難い。美容室に集まるオバさんたちは生命力にあふれ、ある意味では男以上に精力的で、下ネタ話に花を咲かせている。それにしか興味がないという風情だ。

 そんな中でヒロイン菅野美穂のロマンスが人知れずに進んでいく、・・・かのようだ。ところがストーリーがどこかで変調をきたし、何かが少しずつずれていくような違和感に満たされる。

 そこから物語はまったく別の輝きを持ち出し、この港町の人々の暖かさと、ヒロインの運命の切なさが胸に染み出す。

 この、物語の変調、すでにどこかにあった。と思ったら今年になって見た「今度は愛妻家」がまさにこのトーンの映画だった。どちらもいい。どちらも切ない。

 江口洋介もなかなか良いです。

映画 「ヒーローショー」

2010年06月01日 | 映画(ハ行)

 暴走してしまった暴力の、あまりの結果に立ち尽くしてしまう青春群像が描かれる。

 凄惨な行為の顛末がリアルで、彼らの日常と対峙させた時、そうなってしまったことへの後悔がヒリヒリと観客にも伝わってくる。

 どうしようもない極道だから暴力の対象になっても良いのか?という疑問を突きつけられる。それほどの容赦ない暴力行為なのだ。

 しかし、その極道の「ゴキブリのような生命力」はあきれるばかりで、それがこの映画を単なる凄惨な暴力映画ではないものにしているのも面白い。

 若手芸人・ジャルジャルを初めて知ったが、お笑いの世界の住人はこの映画に限らずシリアスな作品でよい味を見せてくれる。

 暴力行為の描き方で誰にでも勧められる作品ではないが、日本映画の力作であることは間違いない。