SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「群青 愛が沈んだ海の色」

2009年06月29日 | 映画(カ行)

 日曜夜8時のNHK大河「天地人」のあと、TBSで「ぼくの妹」(6月28日が最終回)を見る生活が2ヶ月あまり続いて、どちらにも出ている長澤まさみが、それぞれにとても良いので目を見張っていた。

 その彼女が主演というので見に行ったのが映画「群青 愛が沈んだ海の色」。

 テレビの方がよほど良い、というのが素直な感想である。テレビは無料、映画有料だ。そう思うだけでも、金を取る以上、少なくとも料金に見合う見せられる商品にしてから出して欲しい。

 長いカットは役者には酷だ。見る方も辛い。切り刻んでうまく繋いで見せてくれるのが映画職人だと思う。話も紙芝居のようにメリハリなく進行する。
 20世紀フォックス配給で海外にも行くのか?大丈夫か?という不安が一杯だ。

 ただし、海中撮影の美しさは見事だ。

 都合2回の潜水シーンが用意されている。2度目は回想だと思い、なぜここで回想が入るのか不思議に思っていたら、そうでないことが分かった。誰が潜っているのか分からない観客が悪いのか?

映画 「ウォーロード 男たちの誓い」

2009年06月24日 | 映画(ア行)

 中国歴史劇の映画化。「レッドクリフ(=三国志)」に比べるとずっと現代寄りの話だ。西太后が出てくるので「ラスト・エンペラー」の少し前という時代か。

 ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武の主役三人が見応えあるドラマを支える。「レッド・クリフ」の知的な戦略家・諸葛孔明とはまったく雰囲気の違う金城武がここにいる。戦闘シーンは生々しい迫力でリアルだ。

 義兄弟の契りを結ぶ三人が歴史のうねりに翻弄され、それぞれ苦渋の選択を強いられる。裏切りというのではなく考え方の違いが悲劇を生む。
 その彼ら三人も、したたかな長老たちの掌上で弄ばれているにすぎないのだが。

 非情な歴史上の判断・・・その延長上に現在の中国があるのだ。

映画 「路上のソリスト」

2009年06月22日 | 映画(ラ行、ワ行)

 精神的な安定を欠く天才音楽家の復活劇、といえば「シャイン」を思い出すが、テイストはまったく違う。誰もが望む幸福な結末はやってこない。本作の場合、果たして復活したとも言い切れないし・・・。

 時々挿入される空撮によるロスの街が神の視点のようで、主人公たちに感情移入することのないクールな作品のスタンスを象徴している。

 人が人を助けるということがそれほど簡単なことではないことが分かる。むしろそう思ったロバート・ダウニー・JR.の記者の方が、逆に救われているかのようだ。

 でも、そんな誰かが傍にいてくれるというだけで、救われていることがあるのかも知れない。大感動というより、ジワッと感動作だ。

 音や映像など作家性に裏付けられた技巧が表立たない形で知的な印象を与えている。

映画 「マン・オン・ワイヤー」

2009年06月17日 | 映画(マ行)

 美しい詩的な印象のドキュメンタリー作品。

 関係者のインタヴューと当時のフィルム、スチル写真および役者による再現映像で構成されている。

 フィリップ・プティという綱渡りの大道芸人の壮大な夢とその実現が描かれる。

 強い一念は現実のものとなる、というが、彼の夢は「今は無き」ワールド・トレード・センターの建設計画を見た時に始まる。この地上420mのツイン・タワー間に張ったワイヤーを渡るという夢だ。その時点ではWTCは「まだ無い」わけだが。

 「強い一念」のせいか、WTCが着工する。この、9.11の標的となって崩壊する映像を何度となく目にしたそのビルが、どのように建てられたのかを観客は見る事が出来るのだ!!
 ビルが建たないことにはフィリップの夢も実現しない。WTCは彼の希望であり、夢の実現のための必要条件なのだ。

 大道芸は写真や映像には残っても形として残らない。後には、彼らがそれを実現したと言う事実が残るだけだ。
 一方、芸人が希望を託した「建築家の夢の塔」は現実の形として残る・・・はずだったのに、そのWTCも今はもうない。

映画 「インスタント沼」

2009年06月16日 | 映画(ア行)

 三木聡監督作品、麻生久美子のパワー全開モードの映画だ。

 趣から言えば「図鑑に載ってない動物」といったところか。松坂慶子、風間杜夫、加瀬亮、宮藤官九郎、相田翔子など豪華な面々がおかしな人々を演じる。

 今回は骨董がモチーフになっているが、こんなの何処が良いの?という価値観はこの三木作品を見る・見ないにつながる。好きな人にとっては徹底的に好きな作品となるだろう。

 テレビのトレンディ・ドラマとは対極の世界観、こんなの絶対ありえない。とはいえ、とにかくおかしい。

 愛すべき人たちを見ていると、こんな知合いがいるのも悪くないと思えてくる。

 粉末のミロを溶くように、砂に水を注いで沼が出来てしまう。確かにインスタントだ。

映画 「天使と悪魔」

2009年06月10日 | 映画(タ行)

 「ダ・ヴィンチ・コード」の続編というよりはトム・ハンクス演じる“ロバート・ラングドン”シリーズ第2弾で、独立して楽しめる作品。

 前作との関連で言えば、そのためにヴァチカンとの仲があまりよろしくない状態になっているというのが前提としてある程度の話だ。

 例によって謎解き部分は時間の制約もあってサクサクと進行してしまう。が、今回はミステリーとしての犯人探しにかなりの比重があり、配役の豪華さもあって前半よりもむしろ後半が面白く最後まで楽しめる。

 タイトルが人間の二面性を象徴しているようで、怪しげな人が実はそうでない、あるいはその逆のミスリードを二重三重に張り巡らせただけでなく、四人の枢機卿の誘拐事件の前にもっと大きな事件が隠されていた事が分かり、ラストのドンデン返しに繋がる。

 ロン・ハワード監督は前作の不評を見事に挽回、職人芸で映画本来の娯楽性を堪能させてくれる。

 進歩的な老人と頑固で保守的な若者の確執という、これも逆転の構図だ。

映画 「スター・トレック」

2009年06月08日 | 映画(サ行)
 これまでTVシリーズがあり映画化もされてきており、熱心なトレッキーでなくてもそれらを実際に見ている。

 今回の作品について何の予備知識もなく見ると、まずこれまでの作品群との位置関係を理解する必要がある。

 冒頭の非常事態で命を落とす父とその息子が共にカークと名のるので、素晴らしい特撮に目を奪われてぼんやり見ていると、これまでのカーク船長の世代交代、その息子の話になったのかと錯覚する。

 しかし、エンタープライズ号が新型艦として就航する話なので、これまで見聞きしてきたカーク船長がいかにしてそうなったのかを時間を遡って描いている「ビギニング」ジャンルの作品であることが分かる。

 悪役をエリック・バナが演じているが、分厚いメイクながら、なるほど彼の目だ。しかし、彼の積もる怨みが引き起こすこの壮大な物語の発端は「単なる誤解」にすぎないのだ。

 タイムスリップの話が根底にあるのでタイムパラドックスをどう処理するかは、SF作品として大事なポイントなのだが、その辺はなにやら曖昧だ。カークは親子だが、スポックは同一人物である。考えるほど良く分からなくなってくる。

 理屈通りではないことも含めて「宇宙の神秘」なのか?

映画 「ブッシュ」

2009年06月05日 | 映画(ハ行)

 オリヴァー・ストーン最新作でジョシュ・ブローリン主演、というので強烈なパワーで前大統領の狂気をあばきたてるのかと思ったら、むしろおとなしく、誠実に描かれている。

 マイケル・ムーアのドキュメンタリーが馬鹿さかげんを強調したのとは対照的だ。

 「ブッシュ家」という家の重み、優秀な父、父の期待を集める弟、と周囲の重圧に翻弄される中で、やはり大統領になるだけの人物なのだから、人を惹き付ける魅力も巧みさも持っている。

 「大統領の仕事」は執務室の集団作業だということが分かる。しかし、その結果に対して全責任を負うのは大統領個人なのだ。

 石油採掘のアルバイトでは嫌ならハシゴを降りることが出来た。でも大統領にはそれが出来ない。上ったところでハシゴを外されたら・・・。イラク失政はまさにそれだ。

 所々で挿入される野球場の場面が象徴的だ。大きなフライを取ろうと構えているのにいくら待ってもボールが落ちてこない。途方もない困惑・・・、がラストシーンだ。

 それにしても原題の「W.」一文字で、アメリカ人はすぐにブッシュの事だと分かるのだろうか?

映画 「PARIS パリ」

2009年06月04日 | 映画(ハ行)

 セドリック・クラピッシュ監督作品で、パリに暮らす人々の人生模様を描く群像劇。

 ジュリエット・ビノシュとロマン・デュリスの姉弟が主軸となる。姉の家族が心臓病で余命いくらもない弟と同居を始める。外出も出来ない弟がアパートのベランダから眺めるパリの人々の生活が描かれる。

 つまらない日常の一コマも、生きたいと願う、死に行く者の目にはたまらなく愛おしく美しいものに映る、その視点を観客も共有する。

 エッフェル塔の下にたたずむパリの景観が憂愁の気配を見せる。

映画 「永遠のこどもたち」

2009年06月03日 | 映画(ア行)
 一人だけ大人になってしまったウェンディとネバーランドの子供たちを、怪奇幻想の味付けで見るような作品。

 古い孤児院で障害児ケア施設を営もうとする女性の子供が失踪する。その事件に、昔その孤児院の建物で死んだ子供たちの謎が絡む。

 失踪した子供は霊感が強く、過去の出来事によって建物についた孤児たちの霊と交流しているようだ。それに取り合わなかった母親が結局取り返しのつかない悲劇を生むことになる。

 しかし皆死んでしまえば過去の怨みも痛みも解消してしまうのか、同じ霊仲間の集う一種の理想郷が出現する。