SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ナイト・ミュージアム2」

2009年08月28日 | 映画(ナ行)

 夏休みに家族で楽しむには最適の映画だろう。娯楽に徹しているが、キチンと作られており、好感が持てる。

 博物館の展示物が魔法で動き出す、という基本設定は変わらないが、前作で夜警だったベン・スティラーが今は・・・。という新しい設定で、どう展開させるかに脚本の工夫がある。

 博物館も客足を伸ばすために展示を目新しくしておく必要があり、その展示替えに絡む顛末が描かれる。

 画面後ろの焦点が合わずボケた展示物もちゃんと動いており、手を抜いていないことが分かる。

 面白いのは絵画や写真の展示で、額縁が窓枠のようになり、そこから出入りができる。古い写真の中に主人公が飛び込むと、一種のタイムトリップ状態になるのだ。

 過去に置き去りにされたあるエピソードがラストのクレジットになって解決するが、現代文明が過去の歴史を変えたことになる。

映画 「ダイアナの選択」

2009年08月26日 | 映画(タ行)

 トリッキーな作品だ。ゆえに大きな余韻が心に残される。

 高校の銃乱射事件で生き残ってしまったヒロインの日常に落とされた影を描く。高校時代のエヴァン・レイチェル・ウッドと大人になってのユマ・サーマンがダブル・キャストでダイアナを演じている。

 二人の命のどちらを選ぶか、という究極の選択は「ソフィーの選択」でも描かれた。ソフィーは二人の子供のどちらを選ぶかを迫られたが、ダイアナの場合は自分か親友かを選択しなければならなかった。

 映画は過去と現在が交互に描かれていくが、ラスト近くになってそれが混線してくる。これが「衝撃のラスト」への伏線となる。

 人は死が迫った瞬間に、これまでの人生が走馬灯のように頭を巡るというが、この作品もその刹那の物語であったことがわかる。ただし頭を巡ったものは・・・。

 原題「THE LIFE BEFORE HER EYES」に、鑑賞後なるほどとうなずく事になる。

映画 「宇宙(そら)へ」

2009年08月25日 | 映画(サ行)

 50年に及ぶアメリカ宇宙開発の歴史を追うドキュメンタリー作品。初日、2日目は500円均一と言う異例の料金設定で鑑賞できた。

 宇宙という未開のフロンティアがどう開拓されていったかが良く分かる。不思議なのは月面着陸が何度も試みられ成功を収めているのに、それ以降月面開拓はまったく興味の範疇から外れてしまったかのように対象外となっていることだ。

 宇宙開発は旧ソ連とアメリカの先陣争いの場であったから、ソビエト陣営もライカ犬を搭乗させたり、「地球は青かった」「私はカモメ」など有名な言葉を残しているが、こちらは今回はまったく出てこない。あくまでアメリカの開発に限った話なのだ。宇宙開発の残りの半面が出てきて初めて、本当の意味での全貌は分かることとなる。

 開発は常に事故と隣り合わせだ。初めて民間から登用された高校教師の女性は9人の難関を突破し、「私の肉体に9人分の意志を乗せて飛び立つ」と涙ながらに喜びを語っていたが、発進時の事故で帰らぬ人となる。ここではむしろ選考からもれた人に幸運があったということか?

 昔の記録フィルムの編集部分は画調も粗いが、現代に近づくにつれ地球の素顔がクリアに捉えられ、地球の存在そのものが「宇宙の奇跡」であるという意味がクッキリと見えてくる。

映画 「セントアンナの奇跡」

2009年08月21日 | 映画(サ行)

 スパイク・リーの最新作で豊かな物語世界が堪能できる。

 いつものトンガリ感がなく、タヴィアーニ兄弟の作品を見ているような気になったのは、舞台が戦時中のイタリアだからだろうか?

 4人の黒人兵を主役に据えたあたりはまさにスパイク・リーだが、そのうちの一人が、故国を離れてはじめて、差別がなく一人の人間として扱ってもらえる皮肉を語っている。
 映画の語り口のマイルドさもその台詞と無縁ではないように思える。

 冒頭は現代アメリカの郵便局で、切手を買いに来た客の男性を黒人職員がいきなりま正面から射殺する。
 事件を担当するジョン・タトゥーロの刑事と駆け出しの新聞記者が登場し、彼らが軸に物語が展開すると思いきや、その次に、ある陽光溢れるカフェで良い身なりの男性のテーブルに事件を報道した新聞が天から降ってくるエピソードが入って、映画は一気に戦時中の話に飛ぶ。

 冒頭のエピソードはラストにつながり、事の成り行きが整理される。が、物語の大半は丁寧に綴られた過去のエピソードで、その不思議なファンタジーが混在する物語の魅力に完全にノックアウトされる。

映画 「コネクテッド」

2009年08月19日 | 映画(カ行)

 今月中有効のチケットがなかったらパスしていただろう。ハリウッド作品をリメイクした香港映画で、有名スターは出ていない。拡大公開でもないし、夏の話題作の谷間でひっそりと公開されている。

 しかし面白い。かなり、というより、大変面白いのだ。おそらく見ない人の方が多い。もったいない話だ。ここ数年のアクション映画ではもっとも面白いのではないかと思うほどなのに。

 市井の身近な人が実はヒーローであったという一種のヒーロー論にもなっている。主人公は街の金融会社の取り立て屋だ。事件の後、一緒に戦った刑事からバットマンに転職したらどうだ、とジョークを飛ばされている。

 冒頭のカーアクションから最後まで目を離せない、なかなかのストーリーテリングだ。キーアイテムとなる携帯が、コミカルな場面でも実にうまくストーリーに組み込まれている。

 目で追えないカット割りがスピード感なのだと言わんばかりの作品が多いが、この作品のアクションは目で追える。だからこそ、その面白さがよく見える。

映画 「山形スクリーム」

2009年08月08日 | 映画(ヤ行)
 竹中直人の監督作品。

 監督デビュー以来の竹中作品は抑制された禁欲的な表現が特徴だったが、今回はそれをかなぐり捨てた竹中ワールド全開の怪作に仕上がった。

 役者としての竹中の異常性は他が正常な時にこそ、そのおかしさが際立つのだが、今回はすべての役者が竹中調の濃いキャラクターを持つ異常な世界だ。徹底した演出というべきか?

 落ち武者の怨霊+ゾンビ系のホラー映画だが、むしろホラー風味のコメディと呼ぶべきだろう。落ち武者伝説をネタに観光客誘致を計画する村で、歴史研究に訪れた女子高生グループが遭遇する怪しげな体験が描かれる。

 屋台の親父に4つ注文すると「二つで十分ですよ」と返される、「ブレードランナー」ネタなどパロディも・・・。

 成海璃子、沢村一樹、EXILEのAKIRA、由紀さおりなど出演は豪華だし、三浦春馬などのカメオ出演もあるが、「怪作」ゆえ好き嫌いはあるだろう。

 カルト作品になるか?

映画 「雲南の花嫁」

2009年08月07日 | 映画(ア行)

 見知らぬ土地の見知らぬ風習が目を引く。

 雲南は中国の西南部で南はラオス、東はミャンマーと接する地域だ。イ族という少数民族の村が舞台だが登場人物の顔立ちはまるで日本人だ。

 「帰家」という結婚制度にまつわる話だ。式を挙げても花婿花嫁は三年間同居を許されない。その三年後の花嫁の新居入りを「帰家」と呼んでいる。婚約期間が3年あるようなものだがその間まったく会えないというのも・・・。

 花嫁は美人だがとても活発で、しきたりを守ろうとする古い体質を徐々に変えていくだけのバイタリティがある。あきれるばかりの元気さが頼もしい。

 龍舞という長崎の「おくんち」に出てくるような龍踊りの全国大会を雲南の娘龍舞隊がめざす。

映画 「ファーストフード・ネイション」

2009年08月06日 | 映画(ハ行)

 ハンバーガー・チェーンの食肉汚染に関する群像劇だ。

 コストをいかに安くするかで、相当な無理をしているという話だ。結局人件費の削減に尽きるので労働力の安いメキシコからの不法労働者をそれと知りながら雇い入れるという構図になっている。

 国境地帯はかなり危うい場所のようで、映画にはしばしば取り上げられている。

 その労働者、バーガーチェーン本社、学生の環境保護グループらが絡み合う群像を構成する。

 ゲストスターが豪華でブルース・ウィリス、イーサン・ホーク、クリス・クリストファーソンらがチラッと顔を見せる。

 日本のバーガー店は大丈夫なのかと見ていて心配になってくる。

映画 「いのちの食べかた」

2009年08月05日 | 映画(ア行)
 純度の高いドキュメンタリー作品。台詞は一切なく映像のみで「食」を支える舞台裏を見せる。

 自然界にある弱肉強食の食物連鎖ではなく、産業としての人為的な「食」がどう成り立っているのかが理解できる。

 愛情を持って植物を育てるとか、命をいただくことに対する敬虔さ、などは微塵もない、巨大な胃袋を満たすために物量を消化するだけのクールな世界だ。

 ニワトリも豚も牛も鮭も、人間の食欲のために大量に殺戮され続けているのだ。

 どこの国でも同じ光景が存在するはずだが、たまたまこの映画はドイツ映画で、平然と「殺戮」しているのはドイツ人だ。ホロコーストを連想してしまった。

 WOWOWで放映された劇映画の「ファーストフード・ネイション」と合わせて録画を2本立て鑑賞できた。