SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「アナと雪の女王」

2014年06月26日 | 映画(ア行)
 ようやく鑑賞できた話題作。日本語吹き替え版での鑑賞となったが、ミュージカルナンバーも含めて全く違和感はない。

 姫君と邪悪な魔女に白馬の王子、で成立するディズニーの定番と言えば「白雪姫」「眠れる森の美女」である。それに、闇の世界が再び光に包まれるという「ライオンキング」のミュージカルエッセンスを加味して、ヒット間違いなしの愛すべき作品が生まれた。

 ただし、今の時代らしいひねりがある。まず、邪悪な魔女は出てこない。善悪の対立がここでは姉妹の葛藤に置き換わり、コントロールするすべを知らないために暴走してしまう超能力を身に付けてしまった姉の哀しみとして描かれる。

 白馬の王子は一応登場するが、実は・・・・という趣向になっている。最後の栄光は愛によってもたらされるが、それは男女の愛というよりは姉妹の間の家族愛である。という具合に、ディズニーの変奏が奏でられる。

 フルCGで描かれる氷や雪の質感と色彩の美しさには目を見張る。さらに楽しい楽曲も加わって至福の時を味わうことができる。

「永遠の0」・・・・映画と原作

2014年01月09日 | 映画(ア行)
 読んでから見るか、見てから読むかが問題であるが、結局、原作を2/3程読んだところで映画を鑑賞、残りをその後に読むこととなった。これが大正解であった。

 まず、原作の空中戦の描写がスピード感+スリル満載で大スクリーン上に展開され、読書中の頭の中の映像がリアルな視覚体験として出現することに興奮してしまった。

 次に、犯人探しの推理小説ではないが、生きることに執着した主人公がなぜ生存率ゼロの特攻を志願したかがミステリー仕立てになっており、あわせて巧妙に伏せられていたある真実が最後に明かされる構成なので、その部分に関してはやはり映画で先に体験したい。読んで、見て、さらに続きを読むことでここもパスできた。

 映画は現代を生きる孫が祖父を知る人々にインタヴゅーして、その内容が映像的に再現されるという構成になっている。文字では語り部の語る物語の背景までは表現できないが、映像ではその時周りに誰がいたかまでも映ってしまう。
 したがって、ある語りの中では脇役だった人が、次の語り部となり、異なった視点からひとつの物語が多面的に紡がれる面白さが映画では堪能できる。

 一方小説では、個々の戦闘の具体的な描写、大戦の中での位置づけ、日米の装備の比較、兵士に対する軍の扱いの差、戦局の中で兵士たちは何を考えていたかなど、克明に描いている。
 映画は限られた時間の中で、幾人かの語り部を統合させたりしながら、枝を剪定して樹形をより鮮明に整えるような脚色を施しており、その技もまた楽しむことができる。

 見るだけ、読むだけでも十分な満足感が保証されるが、両方を体験するとさらに高次の魅力が輝き出す作品である。ただし、これからという方は原作と映画の順番を十分に考慮したほうが良い。

映画 「明日の空の向こうに」

2013年01月18日 | 映画(ア行)
 ストリート・チルドレンの旅を描いたロードムービーだが、行先も目的も分からない。中盤でそれが明らかになり、その前とその後で構成されている。

 過酷な現実の中でも、子供たちは自分の世界を持っており、生きていくための処世の術を身に付けている。
 まず食べなくては生きていけないが、全編を通して彼らがどう食べているかが克明に描かれている。だからリアルなドキュメンタリータッチかというと画面を支配するのはむしろ詩情であり、カメラの「映像力」がそこにはある。

 「ダイハード」シリーズやTVシリーズ「24」のヒーローたちは、いつどこで腹を満たしているのか・・・と聞くのも野暮だが、大いなる疑問である。

 旅の途上でかかわりを持つ大人たちが、点描的に印象を残してラストに向かう。

 子供たちの処遇が託された警察署で彼らの運命が決まる。この時、署内に不思議な赤い服の少女が現われる。これがストーリーにどうかかわって来るのか、変に期待してしまうのはハリウッド作劇に毒されているからだろうか?

 また明日があるさ、と単純には割り切れない切なさの余韻を残す。

 同じストリート・チルドレンを描いていても、ブラジル映画「ビショット(1988公開)」とは対極の作品だ。

映画「アルゴ」

2012年12月30日 | 映画(ア行)
 カウントダウン・ムービー第3作(最後から2番目)。

 アメリカの歴史秘話が封印を解かれて映画化された。ベン・アフレックの監督・主演作品。

 CIAの人質救出のプロが、イラクで起こったアメリカ大使館人質事件で、カナダ大使私邸に逃げ込んだ6名の脱出作戦を実行する。

 奇想天外の作戦は一種のギャンブルでもある。架空のSF映画「アルゴ」のロケハン・スタッフになりすまして脱出を図るという珍案は、電話で話した息子がその時テレビで見ていた映画「最後の猿の惑星」からひらめいたアイデアである。

 この映画の特殊メイクアーチスト、ジョン・チェンバースが作戦に加担することになる。脱出までのサスペンスも見所だが、映画ファンにも見逃せない。

映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」

2012年12月10日 | 映画(ア行)

 テレビシリーズは知らず、新劇場版になってから初めてこの世界観に接して、「序」も「破」も鑑賞したものの、数年を経ての続編は復習もなければ全くの新作も同じ。

 いきなり、壮烈なバトル・シーンからスタートして、いったいどことどこが何のために戦っているのかも分からないまま、しかし、やたらと美しい画面に見とれていたら、延々と続いたバトルも終わり、ようやくタイトルが画面に現れた。

 何でも物語上では前作から14年が経過しているらしく、その間意識のなかった主人公も、何がどうなっているのか分からないようなのだ。14年の間に「サード・インパクト」と呼ばれる事象によって人類は滅亡し、その原因を作ったのが主人公であるらしい。

 それを修復するために新たに出会った少年と再びバトルの場に・・・、というタイトル後のストーリーと世界観にはすっかり魅せられてしまった。

 本編の前にスタジオジブリ制作の「巨神兵東京に現わる 劇場版」という10分ほどの短編が上映されるが、これが本編中の「サード・インパクト」とリンクしているようなのだ。この短編で破壊しつくされる東京の映像には震え上がった。
 大きな災害を象徴しているようにも思える巨神兵の虚ろな邪悪に人類はなすすべもない。

 実はこの短編の方を見たいがために劇場に足を運んだのだが、本編もなかなか良かった。

映画 「アナザー プラネット」

2012年10月31日 | 映画(ア行)

 日本では未公開ながら、良質のSF的作品。原題は「ANOTHER EARTH」で、もう一つの地球。

 空に地球が浮かんでいる何とも幻想的な光景を、毎日眺めることになる世界の物語だ。青い輝きがある夜、突然発見される。それに見とれた10代の女性ドライバーが引き起こした事故の犠牲者に対する贖罪が描かれる。

 SF的な光景を背景に置いたヒューマンドラマである。

 もう一つの地球は一種のパラレルワールドで、地上と全く同じく物事が進行している。それが「発見」を機に、微妙にずれ始めたらしいことが物語に影を落としてくる。

 新しい世界に最初のメッセンジャーを送り込む計画に一般人から広く参画を募り、ヒロインはそれに応募する。

 地球が浮かんだ美しい空の他にはSFらしい出来事は何も起こらないが、最後の最後にサプライズが用意されている。美しく、切ない見事な作品だ。

映画「アヴェンジャーズ」

2012年09月07日 | 映画(ア行)

 ヒーロー大集合の豪華大作。怪獣ものならば対決企画映画になるところ、いずれも正義のヒーローなのでチームを組んで地球を守ろう、という方向になる。

 それぞれに主役を張ってきたヒーローたちなので、時代劇とモンスターとロボットを一緒にどうまとめ上げていくかが見どころの一つ。

 特に面白かったのは「ハルク」で、平常時の学者としての能力を買われての参加であり、怒りによって変身してしまうと敵味方の区別なくパワーが暴走してしまう。前半はとんでもないところで変身が起こってしまい、誰がこんなやつを連れてきたんだと言いたくなるが、後半はなぜかチームの一員になりきっている。

 キャプテン・アメリカは身を張ってのアクションだから、ロボットスーツのアイアンマンとの能力差は明らかながら、軍を仕切った統率力でヒーローたちを動かすところはさすが。

 最後の長い長いクレジットで、大半の客が帰った後に、本作一番の見せ場と思われるヒーローたちの食卓シーンが登場して笑える。くれぐれもお見逃しなく。

映画 「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」

2011年11月02日 | 映画(ア行)

 第1作でチャールトン・ヘストンを乗せた宇宙船が飛び立って、再び帰還するまでの間に本作で描かれた「事件」が起こったことになる。1作を見る限りでは、その間に人間が核戦争を引き起こし、都市は壊滅、放射能の影響で異常な発達を遂げた猿が地上を支配したと思われたが、違った。

 アルツハイマーの新薬開発が物語の引き金という、現代的なテーマ性を盛り込んである。1作の俳優に施されたメイク技術も凄かったが、時代は遥かに進んでしまった。その映像リアリティを楽しめる。

 1匹の高度に知能が発達したチンパンジーが群れを率いることになるが、それがまるでわが国の、知将と呼ばれた戦国の武将・毛利元就なのだ。皆で団結することの大切さを「三本の矢」の例えで仲間に伝える。そういえば地の利を生かした対人間戦も、知将ぶりが発揮される。脚本家はよほどの日本通なのか?

 アメリカ西部の一都市での出来事なのだが、それがどう地球規模に拡大するかはラストのクレジットで明かされるので、終わったと思って席を立たないこと。

 徹底的にコケにされる隣の叔父さんがキーパーソンだったとは・・・。

映画「一枚のハガキ」

2011年08月31日 | 映画(ア行)

 新藤兼人監督99歳にしておそらく最後の作品。自身の体験をベースに脚本を書いている。

 こんなひどい話があって良いのか、というほどの不幸が戦争によってもたらされたある一人の女性を、ユーモアさえ湛えながら描き出す、巨匠円熟の味わいがある。

 最後の作品での最後の叫び。実際、登場人物はそれぞれに、どこかのシーンで悲痛な叫び声をあげる。それは戦争の理不尽に向けられている。

 100人のオジサン部隊が召集され、生き残った6人の中に監督は入っていた。運命は上官が引いたクジによって決められたのだ。

 クジによって運命が決められるということ自体が理不尽であり、それで生き残ってしまったことがさらに自分を苦しめることになる。せめてそれを後世に伝えることが、自分の義務であり、くじで亡くなった同僚への供養でもある。監督としてはどうしても生きているうちに撮りたかったテーマなのだ。

 豊川悦司、大竹しのぶが主演。一応悪役に当たる大杉漣も、悪い人どころかとても良い人である。

 いま生きている人は自分の命をしっかり生きなくてはいけない、という希望が湧いた。

映画 「小川の辺」

2011年07月22日 | 映画(ア行)

 藤沢周平・原作、少年隊の東山紀之・主演の時代劇。

 脱藩した男を切る、というのが東山に与えられたミッションだ。しかし、男は東山の親友であり、妹が嫁いだ相手でもある、というやりきれない役目なのだ。

 妹も幼い頃から剣術を身につけており、夫を切りに来た相手に刃を抜けば兄妹同士の果し合いとなる。二人には幼少時からともに過ごした弟同然の奉公人の青年(勝地涼)がおり、惨劇を避けるため、彼が兄に同行する。

 中盤まで姿を現さない、気性の激しい妹がキャスティングのキーとなる。菊池凛子がそれを演じる。少女時代の子役がそのまま成長したように見える。同行する青年は彼女に思いを寄せており、この3人がどのような結末を迎えるかを見せる。

 藤沢の時代小説は今の山形県に当たる架空の藩、海坂藩を舞台としており、そこから江戸まで十日かかるという旅がうまく距離感を出しており、山また山の道中は美しく、またたどり着いた先、水郷・行徳宿との対比も効果を生んでいる。

 ただ、東山が切る相手、親友で妹の夫に当たる男がなぜ脱藩したかというと、藩政を思うあまり、領主に意見書を提出したのが原因なのである。その内容に誤りはなく、事実領主はその後、それをすべて実践に移したにもかかわらず男を厳罰に処す。いわば理不尽な処罰だ。

 もっとも愚かなのはこの領主である。それが分かっていながら、最も藩民のことを考え藩政を憂いて意見した男を切らねばならない主人公の苦悩と葛藤はあまり伝わらない。「上意により征伐する」とあっさりしたものだ。それでいいのか、東山?。

 監督の篠原哲雄と主演の東山紀之は、同じ藤沢の短編を映画化した「山桜」に続くコンビだが、こちらのヒロイン・田中麗奈が本作の妹役を演じていたら、また違う雰囲気で面白かったかもしれない。