SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

バッド・エデュケーション

2005年04月28日 | 映画(ハ行)
 アルモドバル監督は「オール・アバウト・マイ・マザー」、「トーク・トゥー・ハー」で女性ファンを捕え、アカデミー賞獲得で一挙にメジャーの仲間入りを果たした。それ以前の個性的作品群から一貫して鮮やかな原色の映像美が特徴である。本作のテーマは87年公開の「欲望の法則」に近いが、少年期が描かれており印象はまったく違う。劇中劇と回想が複雑な入れ子構造になった巧みな話術の中で、ラストの後日談まで目が離せない。

コンスタンティン

2005年04月27日 | 映画(カ行)
 30年前に「エクソシスト」で少女に取り付いた悪魔が、本作では冒頭ほんの数分で退治される。主人公の存在意義は余命がいくらもないことからきている。がその問題をあっけなく解決してくれるのが悪魔であるというのはこれまでない価値感であり、天使=善、悪魔=悪という単純な2極化では割り切れない複雑さに現実が反映されているようだ。ただしベースにある「死んだら天国に行きたい」という願望はいつの世も変わらないようだ。

幽霊船

2005年04月26日 | 音楽・演劇・美術・文学
 劇団サーカス劇場の「幽霊船」を見た。「火」と「灰」をキーワードにプロメテウス神話と第5福竜丸の帰還を重層的に描いた力作である。登場人物が謎に満ちており明快な説明があるわけではないが、大きな劇場でも通用する台詞回しが小空間で明瞭にむしろガンガンと響いてくる感じだった。作・演出の清末浩平はやや観念的な作風が好みを分けるが言葉の美しさを大切にしているようだ。ビジュアル、音楽は蜷川的と形容できるかも。

アビエイター

2005年04月25日 | 映画(ア行)
 大富豪の伝記映画と聞き、予告を見て、冒険とロマンの物語を想像する限り、期待は大きく裏切られる。しかし、ただの娯楽作ではない「深み」がさすがアカデミー賞ノミネート作であるし、そこにこそ監督は創造意欲をそそられ、俳優は挑戦したくもなるのだろう。それが技術と資本に裏付けられて豪華な映像として再現されれば最高である。華やかさの反面、神経症的に閉じた世界の、濃密な重い映画なので誰にでも薦められるわけではない。

海を飛ぶ夢 2

2005年04月22日 | 映画(ア行)
 ペンギンは氷の上を歩く姿をみることが多いが、水中の動作を見ると紛れもなく彼らが鳥であることを思い出させてくれる。一般の鳥が「空を飛ぶ」ようにペンギンは「海を飛ぶ」のだ。

 劇中、主人公の視点で飛行する夢のシーンが三度登場する。二度目までは窓を抜け出て宙に踊り出た視界が飛翔し、緑を抜けて海にたどり着く。「海を飛ぶ」ではなく「海へ飛ぶ」ではないかと思うが、三度目の最後の飛行は確かに海を飛んでいるものの、もし正確に表現しようとすれば「海の上を飛ぶ夢」か?
 二度目と三度目の間に、何が起こるのか。

 事故で海中を漂うシーンがまどろむように甘美で、どこまでもそれが続くと永遠の安らぎにたどり着くのに、いきなり出現する手が辛い現実の世界へ彼を引き戻し、この世を再び生きることを強いてしまうのだ。二度目の生を彼は生きなければならなくなる。
 甘美な生まれる前の世界への回帰を阻止された彼が、自らの意思でそれを選び取る物語。死を直視するカメラはクールに感情を廃している。
 肉体は死んで永遠の海へ回帰し、もはやそれを妨げる手も出現しない。海中の無重力状態を飛ぶというよりは浮遊する肉体と、永遠の安らぎを得て一陣の風となり海の上を吹きぬけていく彼の意思(魂)。

海を飛ぶ夢

2005年04月21日 | 映画(ア行)
 日本語では「海」の中に「母」の字があり、フランス語では逆に母(mere)の中に海(mer)がある。
 映画の中で海中を漂う人が、胎内の羊水に浮いているように見えてくる。死後が天国だ地獄だと語られたりするが、主人公は「死んだ後は生まれる前と同じ、何もない」と言う。
 羊水から取り上げられた人間が再び母の胎内(海)へ帰っていく「それが死だ」というのがこの映画のテーマである、と思った。
 米アカデミー外国語映画賞受賞作であるが、昨年の受賞作カナダ/フランス合作映画「みなさん、さようなら」も死がテーマになっている。(個人的には「たそがれ清兵衛」の方が良く出来ていたと思うが。)ハリウッドではこのようなテーマの映画はもはや作られないということか。
 スペイン語の作品で英語タイトルは the SEA INSIDE 。ちなみに本ブログは SEA side 。

バンジ-ジャンプする?

2005年04月15日 | 旅行
 バンジージャンプ発祥の地はニュージーランドと言われるが、そもそもは南太平洋の島国、バヌアツ共和国の成人への通過儀礼であったとか。これが商売になると思ったハケットという企業家が、南島のクイーンズタウン近郊のカウラウ橋から43mのジャンプを始めた、「営業としてのバンジ-ジャンプ」発祥の地がニュージーランドなのである。
 いろいろなバリエーションが出ているが、南半球最高の高さを誇る、オークランドにあるスカイタワー(328m)にスカイジャンプというのがある。このタワーはメインの展望フロアーが地上186m、さらに追加料金3nz$で地上220mのスカイデッキまで上がることが出来る。(メインフロアまで階段だと1029段約24分、最速記録5分7秒というが公的なイベント時以外、階段は開放されていない。)
 スカイジャンプはその中間、地上192mから時速75km、16秒間の体験である。バンジ-ジャンプと違い足を吊って頭から落下するわけではなく、またバウンドがない。着地時はスローダウンするようワイヤーで制御されているようである。
 メインの展望フロア-は床の一部がガラス張りになっている。恐々乗っている人もいるが厚さ38mmのガラスで「コンクリートと同じくらいの強度がある」とコメントしてある。上部フロア-のスカイデッキから、さらにその上のマスト部にあるcrow’s nest(カラスの巣)と呼ばれる(手すりだけでガラスのない)外部デッキまでマスト内部のタラップを使って15分ほどで上れるようになっており、これが地上273mである。
 メインフロアの上階にはレストランがあり、ここを利用する人や上に書いたデッキに登るツアーに参加する人には無料の専用エレベータが用意されている。
 タワーのあるスカイシティから出ると、町の真中に「逆バンジー」の鉄骨がそびえているが、滞在中いずれのバンジーも「現場」を見ることはなかった。列を作ってやるものではないらしい。

ニュージーランドの出来事

2005年04月13日 | 旅行
 ニュージーランド南島のクライストチャーチからテカポ湖、マウントクックへ向かう途中にジェラルディンという町があって、小休止を取った。カフェを中心に店舗が並ぶ小さいけれども魅力的な町である。そのカフェに隣接してギャラリーがあり、ニュージーランドの自然やマオリの伝統的なモチーフをモチーフにした品などを、通常の土産店で見かけるものよりずっと上質な素材と仕上げで製作し並べている。
 オーナーらしき男性はヒゲをたくわえ、貫禄があっていかにもギャラリーオーナーらしい「品」を感じさせるたたずまいである。短い時間の中で2つの品を選び日本の代表的なクレジットカードを受け付けてもらえるか尋ねた。発音が悪かったのか、一度聞きなおされたがOKが出てカードを読取器にかけたが、あいにく拒否反応が出ているという。表に出るとATMがあるし、あるいはアメリカン・エススプレスは持っていないかと聞かれたが、大きな額ではなかったので現金で支払いを済ませた。
 この旅行中はじめてクレジットカードを使おうとしたときの出来事である。実はグループ旅行の代金をまとめて私のクレジットから引落したため、限度額がいっぱいで、出発前に慌てて限度引き上げを依頼してきたところであった。多分そのプロセスがうまく処理されていなかったためと思われた。したがってそれ以降、買物のたびに不信な顔をされるのもいやで、現金払いに頼って旅の最後の都市、オークランドにやってきた。
 ここはニュージーランド最大の都市でもあり、クレジット会社も現地デスクを置いている。あと1日で帰るというときではあったが、一応デスクに事情を話しに行きチェックをお願いした。
 ところがカードは正常に機能するのである。
 こうなると考えられることはただ一つ。あのギャラリーは、このクレジットカードの取扱店ではなかったということである。クレジットカードも各種提携カードなど見た目は非常にバラエティにとんでおり、オーナーにしてみれば、まあ受け付けるかどうか試してみよう、というほどのことであったのかもしれない。日本では考えられないことだが、それが平然と起こるところにこの国のおおらかな魅力がないともいえない気がした出来事であった。
 

マオリ・ソングズ

2005年04月12日 | 音楽・演劇・美術・文学
 オペラ歌手のキリ・テ・カナワがマオリの音楽を歌ったアルバムを見かけた。ジャケットにはあえてKIRIとアーティスト名を記している。名前からも分かるように彼女はマオリの出身者としてはもっとも知名度の高い一人である。
 一時間足らずの時間の中でさまざまな曲想を歌い分けているが、マオリの声や音と彼女のクラシカルなやさしさに満ちた響きが混ざり合い、懐かしいような、心癒される優しさで空間を流れてくるのが良い。
 ニュージーランドでは新譜のような並び方をしていたが、1999年の録音である。日本でも「マオリを歌う」というアルバム名で発売されていたようであるが、すでに生産が中止されている。ニュージーランドのCD価格がどのように決まるのかは知らないが、いろいろなショップで見た限りでは28nz$から44nz$までの開きがあった。amazon.comでは17us$くらいで入手できる(+送料)。

「ベン」のテーマ

2005年04月11日 | 映画(ハ行)
 昨夜、春の新番組「あいくるしい」を見ていたら懐かしい曲が流れてきた。それが「ベン」のテーマ。ドラマ冒頭でトイレに関するくさいエピソードが描かれており、だから「ベン」なのか・・・というのはちょっと考えすぎか。
 「ベン」というのは30年以上前の映画のタイトルで「ウィラード」という映画の続編として製作された。「ウィラード」は主人公の名前で「ベン」はもう一匹の「ソクラテス」とともに主人公と心を通わすネズミの名前。
 当時はパニック映画が一つのトレンドであったが火災、地震などの災害系作品の後、猫、ネズミ、鮫などの動物系パニックあるいはサスペンスの作品群がはやった。
 細かい内容はもう霧の彼方だが「ベン」の主題曲は今でもはっきりと頭に残っており、懐かしさが蘇って来た。歌手が誰か忘れていたのがラストのクレジットでマイケル・ジャクソンだった事がわかった。こちらも今、別の話題で渦中の人だ。この辺のあざとさ?も脚本家の好みか。