一人の男がリアルな世界との関係を切り結んでいくプロセスを描いた作品。ネット掲示板の世界を映画化したわけで、仮想空間がリアリティを獲得して行くコメディを楽しめる。男が「マトリックス」のファンだというのも象徴的。
エルメスおよび電車男の応援団に関しては多少なりとも周囲との関係性が描かれているが、電車男に関する限り部屋が映し出されるだけで、どういう家族構成で、何から収入を得ているのかまったく状況が説明されない。さながらネット上の仮想人格そのものである。その存在についての真偽が議論される状況をそのまま、映画はあえて(?)宙ぶらりんに描いているのか。
エンドクレジットの前後に短いエピソードが挿入される。一つは電車男とエルメスが実は以前、間接的に出会っていたと言う微笑ましい挿話。
クレジットの後のもう一つの挿話はTV会社が製作しただけに、TV版「電車男」へのつなぎの、いわばPR。しかし、これは時期を選ぶので、すでにテレビ放映さえ終了した時点で映画を見たり、今後DVDやビデオ化された時点でこれを見ても必然性のないエピソードになってしまう。
今や昔のパソコン通信時代には森田芳光監督の「ハル」があり、これはシリアスな作品。