SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「クリスマスのその夜に」

2011年12月19日 | 映画(カ行)

 北欧発の群像劇で、皆ハッピーになりましたというハリウッド流の陽気さはない。ジワッと来るしみじみ感の佳作だ。巧みな語り口で、ある町の聖夜の情景が綴られる。

 この作品に15歳以上の年齢制限が付いている。
 ある一つのエピソードの描写によるためだが、仮にそれがなくても、15歳未満の子供たちに、ドンパチのないこの静けさをしみじみと鑑賞できるかどうかは分からない。

 人生のあり方、命の連環が北欧の夜空に出現するオーロラで象徴され、すべてが浄化されていくようだ。ラストにクリスマスプレゼントのような、ちょっとした映像トリックが用意されている。

映画 「ピザボーイ 史上最凶のご注文」

2011年12月13日 | 映画(ハ行)

 アカデミー賞ノミネート作品「ソーシャル・ネットワーク」で主演男優賞にノミネートされたジェシー・アイゼンバーグが主演。

 敵も味方も2人組のダブル・バーディームービー。B級テイストのクライム・コメディながら、なかなかの傑作だ。

 親の財産を狙った息子が殺し屋を雇う。その依頼金調達のために、見ず知らずの人間に銀行強盗をさせようというとんでもないストーリーだ。

 たまたまやってきたピザの配達員が時限爆弾を装着され、銀行強盗を強要される。果たして・・・。

 敵、味方に殺し屋が絡んで三つ巴の揺れ動く力関係と、二組のバディの微妙な心情のあや、誰もどこかズレている尋常ではない人物造形、とストーリーも見せ場も満載の面白ムーヴィーなのだ。

 正月映画大作群の中では地味だが、ブランド品「・・・の冒険」より良いかも・・・。

映画 「恋の罪」

2011年12月09日 | 映画(カ行)

 秋葉原のメイド喫茶が流行るのは非日常の世界を提供してくれるからだ。

 本作のヒロインは流行作家の妻で、日常世界がまるでメイド喫茶の世界なのだ。では、彼女は非日常の楽しみをどこに求めればよいのか?

 そこに登場するのがある大学の助教授をやっている女性で、彼女がヒロインの性の指南役をつとめることになる。舞台となるのは渋谷円山町のラブホテル街にある廃墟のアパートだ。

 全体の構成はこの廃墟で起こった猟奇的な殺人事件を推理するミステリーの体裁になっており、水野美紀扮する女性刑事が事件を追う。

 実際に起こった東電OL殺人事件にインスパイアーされた作品であるが、三面記事ネタが文学的に昇華され、3人の女性が自分の欲望を解放する過程で事件が起こる様が描かれる。

 非日常が日常の向こう側にあるのではなく、両者は地続きであることがラストシーンで象徴される。

 今、日本で最もパワフルに作品を作っている園子温の監督作品。今年は「冷たい熱帯魚」に続いて本作が公開され、さらに「ヒミズ」が控えている。いずれも圧倒なパワーで迫ってくる。その世界に浸ると、日常的な常識や良識の存在があやふやになってくる。