新藤兼人監督99歳にしておそらく最後の作品。自身の体験をベースに脚本を書いている。
こんなひどい話があって良いのか、というほどの不幸が戦争によってもたらされたある一人の女性を、ユーモアさえ湛えながら描き出す、巨匠円熟の味わいがある。
最後の作品での最後の叫び。実際、登場人物はそれぞれに、どこかのシーンで悲痛な叫び声をあげる。それは戦争の理不尽に向けられている。
100人のオジサン部隊が召集され、生き残った6人の中に監督は入っていた。運命は上官が引いたクジによって決められたのだ。
クジによって運命が決められるということ自体が理不尽であり、それで生き残ってしまったことがさらに自分を苦しめることになる。せめてそれを後世に伝えることが、自分の義務であり、くじで亡くなった同僚への供養でもある。監督としてはどうしても生きているうちに撮りたかったテーマなのだ。
豊川悦司、大竹しのぶが主演。一応悪役に当たる大杉漣も、悪い人どころかとても良い人である。
いま生きている人は自分の命をしっかり生きなくてはいけない、という希望が湧いた。