SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「傷だらけの男たち」

2009年04月30日 | 映画(カ行)

 「レッドクリフ」の前にトニー・レオンと金城武が競演したクライム・アクション。

 二人は警察の上司と部下の関係。それぞれに抱える闇の部分があり、それが切ない。

 一つの殺人事件をめぐるミステリーだが、犯人の少年時代に遡る因縁が犯行の動機であり、その話せば長い話が2時間に収まっているところに多少の無理があるようだ。

 金城武の恋人の死と、事件に絡んで脅しをかけてくる謎の男のエピソードが主筋にまとわりついて混線気味の様相を呈し、DVDで何度も見るとそういうことかと理解できる。

 ハリウッドでリメイクされるそうだから、そちらの方を期待したい。

映画 「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」

2009年04月28日 | 映画(ア行)
 シリーズの脇役・米沢守に初めてスポットが当たる。これは俳優・六角精児にとっても言えること。

 主役としては弱いが、温かな人柄を感じる癒し系のキャラクターを中心に、取り囲んだ豪華脇役で見せるという構成だ。

 キャラがキャラだから冷静緻密な推理とは一味違う。外しまくりながら、偶然に事件が解決してしまうという趣向である。

 相棒は萩原聖人。それぞれの分かれた女房が同じ名前でしかも瓜二つ、という設定が始発点になる。

 他の脇役は市川染五郎、伊武雅刀、片桐はいりという異色かつ豪華な面々。本来の相棒・水谷豊と寺脇康文もゲスト的に顔を見せてくれる。

 本編エンドクレジットの後に、新たな相棒誕生の予告ミニ・エピソードが付く。

映画 「ウォッチメン」

2009年04月27日 | 映画(ア行)

 「ダークナイト」「ハンコック」とヒーローものながら、「ヒーローとは何か?」という自問で、単純なヒーローものとは一線を画した作品の系列に連なる。

 素顔を晒さないから可能な超法規的な悪の制裁を目的とした、かつてのヒーロー軍団の引退後の物語だ。仲間の一人が殺害されるところからミステリーとしてスタートする。

 懐かしのヒーロー達はそれぞれがバットマンやスパイダーマン並みのキャラクターで、かつての彼ら一人一人を主人公にした映画が作れそうだ。その複数の過去と現在を描いていくからやたらと内容は濃い。

 それがニクソン時代のアメリカとソ連の冷戦をバックに、世界平和があっと驚く方法で実現してしまう複雑かつ皮肉な結末を描く。

 ビジュアルの美しさは目を見張るが、原作を読んでいないと付いて行くのがやっとだ。物語は分かるが、他に目を配る余裕が無い。「レッドクリフ」並みに配給元で冒頭に解説でも入れてくれるとありがたい、と思った。

映画 「ラースと、その彼女」

2009年04月23日 | 映画(ラ行、ワ行)

 引きこもりという訳ではないけれど、社会とのコミュニケーションから一歩引いたところにいる青年が、その一歩を踏み出すまでの物語。

 気持ちのやさしい青年で、小さな街の人々が皆、彼のことを気にかけていることが良く分かる。ようやく彼女が出来たというので会ってみると・・・というあたりが面白い。

 ビアンカと名付けられたリアルドールをラース本人はマジに本物と思い込んでいるようなのが厄介だが、街の人たちもそのウソに真面目に付き合い、ビアンカの存在そのものがある種の象徴的リアリティーを帯びていく。

 いつ、どういうタイミングでラースがリアルな世界と折り合いをつけるのか、スリリングで、ハートフルな愛すべき作品だ。

 一歩間違うと「サイコ」だが、世の中ロボット犬やお話人形が売れているということは、そこに癒しを求める人が多いということであり、本作はファンタジーを超えたリアルなテーマを含んでいるともいえる。

映画 「画家と庭師とカンパーニュ」

2009年04月22日 | 映画(カ行)

 人生も後半にかかった幼馴染の男二人の偶然の出会いが田園風景の中で描かれる。

 都市の混んだ通勤電車に揺られることが「生活」と思い込んでいる身にとって、生活の実感とは本来このようなものではないかと思い出させてくれる。

 画家が庭師に作品をあげようというが、そのような家ではないからと辞退する。

 田舎のあばら家を想像していたら、後段で出てくる庭師の家は、東京都心のマンションよりはよほど余裕のありそうな「文化的な」集合住宅であった。
 確かに老後の楽しみに庭師をやっている元国鉄マンだけのことはあるな、と変な感心をしてしまう。

 画家にとっては一時のリフレッシュ休暇のようなものだったが、見事な成果を得て作品群を生む。

 懐かしさの中に人生の黄昏時の深い味わいが漂うフランス映画だ。

映画 「オーストラリア」

2009年04月21日 | 映画(ア行)

 西部劇と戦争映画と、2本分の内容とボリュームが堪能できるお得度の高い作品。

 しかも、ニコル・キッドマン+ヒュー・ジャックマンの美男美女が主演とあれば、これこそが映画の醍醐味というところ。

 冒頭のスピーディな展開はバズ・ラーマン監督ならではの語り口。ここで落伍することなく先に進めれば豊かで波乱万丈なストーリー世界が待ち受けており、時間のたつのを忘れられるという趣向だ。

 善玉と悪玉の対立とその行方、親と子の因果、アボリジニの神秘的な精神世界と子供の成長、自立の物語。理屈抜きでその面白さを堪能すべし。

映画 「ダウト/あるカトリック学校で」

2009年04月20日 | 映画(タ行)

 舞台劇のような迫力、と思ったら原作は戯曲、しかも2005年のトニー賞、ピュリッツァー賞ダブル受賞作で、作者のジョン・パトリック・シャンリー自らがメガホンを取っている。が、映画の脚本は多く書いており「月の輝く夜に (1987)」ではアカデミー賞(脚本賞)受賞という経歴の持ち主だ。

 メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンが、カトリック神学校を舞台に、ある疑惑をめぐって対立する、その二人の芝居が圧巻。メリル・ストリープは「プラダを着た悪魔」と同じくらいキツイ女を演じる。が、今度は神学校の女校長で、真実を追究するためなら神をも欺こうという凄まじさである。

 結局、真相は曖昧なままだが、犯人探しのミステリーと違って、人の心を覆っていく猜疑心の恐ろしさを描く心理劇として見逃せない一級の作品だ。

 物語の核となる少年の、母親を演じるヴィオラ・デイヴィスとメリルの対話場面も見所の一つ。

映画 「ブレス」

2009年04月14日 | 映画(ハ行)

 キム・ギドク監督作品。

 台湾の俳優チャン・チェンが主役の死刑囚を演じている。

 死刑を待つ身でありながら自殺願望があり、未遂事件を何度も起こしている。それも咽喉を突くものだから発声できなくなっており、台詞は一切ないという難しい役どころだ。

 夫婦生活に悩む主婦がたまたまニュースで知り、昔の恋人と偽って面会に訪れるという異様な設定が基調となる。

 面会の中身がまずあり得ない。それをすべてモニターしている監督官がすべてをコントロールしている設定もあり得ない。という無い無い尽くしだがそこに何らかの寓意が込められているのだろう。

 しかし、それを一般の観客に理解させるというには、やや突き放した描写で面食らってしまった。

 が、キム・ギドクという監督がただものではなく、今後も目を離せないという事実には変わりが無い。

映画 「ぐるりのこと。」

2009年04月13日 | 映画(カ行)

 10年に及ぶ法廷画家の夫婦生活を描いている。

 一見、頼もしさとは対極あるようなリリー・フランキーの夫だが、真の包容力とはこんなものかなぁと思わせる。

 夫婦それぞれの職場、その実家も描かれるが、驚くほどの豪華な出演陣で味がある。

 法廷シーンは、世の中を騒がせたいくつかの事件がピックアップされており、それが10年の時間軸を示すインデックスのような役割を果たしてもいる。

 周辺の音や光、天候の変化、主人公二人がそれぞれに描く絵も含めて、静かな物語が雄弁に語られる。


映画 「フローズン・タイム」

2009年04月08日 | Weblog

 拳銃を向けて「フリーズ」と言うが、これはその過去完了形。

 時間が止まってしまう、その不思議な時間軸の中で主人公だけが動ける。そのとき彼は何をやったか・・・と書くとシリアスな作品に聞こえるが、イギリス映画らしいロマンチックなコメディ作品に仕上がっている。

 監督は写真家らしく、物語の主人公は画家としての独り立ちを夢見ているし、画面のビジュアルも美しい。

 失恋して不眠に陥った主人公が、時間を持て余して仕方ないので24時間営業のスーパーでアルバイトを始める。ここの超個性的な従業員の面々や主人公の幼少期のエピソードなど、映画の魅力が満載の愛すべき作品である。

 何日も眠れない状況を真面目に撮ったら「マシニスト」のようなホラーになってしまうけどね。