SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「リンカーン」

2013年05月21日 | 映画(ラ行、ワ行)
 スピルバーグ監督の話題作「リンカーン」をようやく鑑賞することが出来ました。上院で可決された奴隷制度廃止の修正法案を下院で可決するために、数の勝負の駆け引きがどう進められたかを描く真面目な映画ではありますが、面白いかと問われると、これまでのスピルバーグ映画とは違う、としか言いようがありません。
 ヒューマンなエピソードをちりばめて、各登場人物の個性がくっきりと浮かび上がるという場面がありませんでした。長男役の若手実力派ジョセフ・ゴードン・レヴィットも見せ場なしでお気の毒でした。法案成立の後に、背後関係など説明もないまま大統領暗殺事件が唐突に付け加わって幕、となります。
 個人的評価にはともかく、いろんな賞をたくさん受賞した作品です。アカデミー賞では12部門ノミネートされ主演男優賞と美術賞を受賞しました。
 リンカーンのまだ幼い末息子が、売りに出ている奴隷のチラシを面白がって見ていますが、それをおかしいと思わなかった時代の怖さがあります。

映画「LOOPER ルーパー」

2013年01月21日 | 映画(ラ行、ワ行)

 2044年の現在に30年後2074年の自分がやって来て、さて、どうなる?のお話。

 タイムトラベル要素の、良く出来たSF映画。劇場予告もテレビスポットも見ているので、本筋に関しては理解の上で鑑賞に望んだが隠し味が効いている。

 かつてブライアン・デ・パルマ監督がよく描いていた特殊な能力の持ち主が本作でも重要なパートを占めるのだが、それに関しては全く知らされていないので、期待以上の収穫といえる。

 未来の自分と現在の自分が同時に存在して影響を及ぼしあう、タイムマシンもののタブーとされている領域がテーマになっている。

 そのため主役のジョセフ・ゴードン・レヴィットはもう一人の主役ブルース・ウィリスに似せてメイクしており、今までと微妙に違った精悍さが前面に出た顔立ちになっているが、こっちの顔もなかなか良い。
 
 今年最初の見て良かった映画。

映画「レ・ミゼラブル」

2012年12月31日 | 映画(ラ行、ワ行)
 カウントダウン・ムービー第4作(今年最後の鑑賞作品)。

 中学か高校かは忘れたが国語の教科書に収録されていた。銀器を盗んだジャン・バルジャンが司教の心に触れ人生を修正する決意を抱く場面である。が、これはこの大河的物語のほんの一部分にすぎない。

 犯罪者としてのジャン・バルジャンを執拗に追い詰める警官ジャヴェールは「逃亡者」のジェラード警部を思わせる。

 全編、セリフがほとんど歌になっている。海中のシーンからスタートしてダイナミックなカメラワークによる場面転換が映画ならではの感興で迫る。

 物語のクライマックスは学生たちの蜂起する革命シーンだが、これは不発に終わってしまう。とすると、ラストで高らかに歌い上げられる新しい明日への希望は、死者たちの夢物語に過ぎないことになる。

 革命闘争で一人生き残ったマリウスが、裕福な祖父のもとに帰り、幸せなブルジョワ家庭を築くかに見えるのも気になった。

映画 「わが母の記」

2012年02月07日 | 映画(ラ行、ワ行)
 母が子を思う、その思いの深さに打たれた。

 作家・井上靖の自伝的作品からの映画化で、作家の家庭事情が豪華キャストで描かれる。作家の父親が死に、その後母親が他界するまでの10年余り、時代的には1960年代を中心にした「日本の家族」の物語である。

 映画の中の作家は強烈な個性の持ち主であり、それを寛容的に受け止める取り巻きは彼の妹たち、妻と三姉妹という布陣である。息子さんもおられた実際とは違うこの映画的変更は効いている。

 作劇の中心となるなる出来事は、「壊れた」と劇中でも表現される作家の母親の認知症である。介護が社会的制度化する以前、家族がそれとどう対処してきたか?きわめて現代的なテーマとして鑑賞することも可能だ。

 本作の母と息子の関係はやや屈折しており、それが物語全体の通奏低音として響いている。それは作家の生い立ち、幼少期に遡る出来事によるものだ。その事情は冒頭でコンパクトに提示されるが、井上靖の「しろばんば」を知っていればより深い味わいが増すことは確かだ。

 続編が制作される時、オリジナルの前日談に当たるビギニングが語られることが多くなってきた。
 本作にも登場する湯ヶ島、沼津は井上靖が幼少から中学時代までを過ごした地で、その時代の井上自身を主人公にした「しろばんば」「夏草冬濤」は1962年に「しろばんば」が映画化されたきりである。

 本作のクオリティで原田眞人監督次回作となれば、映画ファン、井上ファンとしてはこの上ない喜びとなるだろう。

 公開はゴールデンウィーク。しばし待たれよ!!

映画 「ワイルド・スピード MEGA MAX」

2011年10月04日 | 映画(ラ行、ワ行)


 招待券でもなければ行かない映画に招待券があったから行った。が、これを見ない手はない超娯楽作だ。

 シリーズ5作目にして初見。だが、本作が最高という意見も多いようだ。過去作を知っている人はより楽しめるのかもしれないが、初めてでも十分に面白い。

 序盤のエピソードだけでも重量級だが、じゃあ仲間を集めてヤマを狙うかと、そこから始まる気配に興奮を覚えた。

 クライマックスのカーシーンでは2台の車に街が破壊され尽くしてしまう。

 というのも2台である重量物をワイヤーで引きずって高速走行するからなのだが、まっすぐ走るわけではないのでカーブするたびに曲がりきれない重量物が、道路際にある標識、樹木は言うに及ばず、建物まで破壊しまくる。

 傾向的には「オーシャンズ11」シリーズに近いチーム窃盗団のイメージだが、ど迫力で130分を一気に見せてくれるお得度大の作品だ。

 最後に、これはプロが撮影のために封鎖した道路で行ったものだから絶対にマネするなと字幕が出る。やりたくてもこれは無理だ、出来ない・・・。

映画 「ライフ いのちをつなぐ物語」

2011年09月06日 | 映画(ラ行、ワ行)

 「アース」、「オーシャンズ」と、この手のドキュメンタリーを見てきたが、環境など、ある視点から教訓を述べられ始めると、とたんに胡散臭くなってくる。それを言わんがための編集の存在を疑ってしまうからだ。

 今回はそういう意味ではとても素直に楽しめる。ドキュメンタリーの傑作に入るのではないだろうか。多くの生物のワンエピソード集だが、これを撮るためにどれだけの時間を要したことかと考えてしまう。

 カメラは、入ったからといって撮れるかどうかも分からない巣穴の奥まで入って、見事に決定的シーンを納めている。

 食べる、入浴する、子供を守るなど人間の行為に引き寄せて、あらゆる生物の諸相を脅威のカメラが大画面に描き出してくれる。

 ネイチャー・ファンにはどこかで見た映像が多いかもしれないが、それでも今回は楽しめるはずだ。

映画 「ロスト・アイズ」

2011年06月22日 | 映画(ラ行、ワ行)

 ホラー映画と思っていたら、ホラー・テイストのミステリーであった。

 存在感の薄い人間が自分の存在意義をどこに見つけるか、という自己啓発的テーマがこういう出来事にもなりうる。という意味で面白く見ることができた。

 ヒロインは双子で、共に先天的な病気のために徐々に視力を失う運命にある。先に視力を失った姉の自殺が物語の発端である。本当に自殺なのか、そうでないのか?そこに犯人らしき男の影がちらつくのだが、影の薄い人間は誰にも意識されない。

 見えない人間とヒロインの失われていく視力が絡み合った複雑な事件の真相が、徐々に解きほぐされていく。

 「サイコ」や「暗くなるまで待って」のテイストが溶け合った上質のスペイン産ミステリーだ。製作者であるギレルモ・デル・トロの名前を前面に出したプロモーションで、彼のファン層にアピールしている。

映画 「わたしを離さないで」

2011年04月04日 | 映画(ラ行、ワ行)

 何かとんでもない秘密が明らかになる、という予告編だが、本編では冒頭でいきなりその秘密が明かされる。

 したがって、「秘密」を明らかしていくミステリー要素はなく、非道で過酷な運命を背負った子供たちが、その後どういう運命をたどるかを描くドラマになっている。

 時代設定は1900年代の終り頃なので、戦争中のナチスなどの話ではない、ついこの頃の話だ。こんなことがあったら大スキャンダルである。

 クローンの人間性をテーマにした近未来SF、という設定にもなりうる話だが、肉体的には再生できても、心がどうなっているのか実験している側も計りかねているようで、「彼らも人間なのか」と問うのは重い。

 近作では「私の中のあなた」が同テーマ。こちらはそのために自分の子をもう一人設けようというのだから、さらに複雑な思いになる。

映画 「ルンバ!」

2011年01月17日 | 映画(ラ行、ワ行)

 夫婦が運転する車の前に飛び出した自殺志願の男によって、夫婦の人生は一変。悲惨この上ない地獄のような日々が訪れる。

 が、これが脳天気なコメディとして面白おかしく描かれる。

 アベル&ゴードンの道化師カップルが監督・主演で、日本では2010年に、長編デビュー作に当たる「アイスバーグ」と同時公開されている。続けて見ると、またあの二人が出てきた、という感じで、今度は何をやらかすやら見入ってしまう。

 共通しているのは、夫婦が何らかの理由で別離し再会するというパターンで、そのいずれにも運命を変える男が絡んでくる。

 50代のカップルだから若さのキレはないものの、身体アクションをベースにしたコメディ表現のユニークさは見ものである。

映画 「リミット」

2010年11月12日 | 映画(ラ行、ワ行)

 目が覚めたら棺おけに入って土中に埋められていた、という究極のシチュエーションだ。そこからの脱出、果たしてそれが映画になるのか?という発想でスタートしたのだろう。

 実際映画になって公開されてはいる。ただ興趣にとんだ面白い作品になったかというと、残念ながら・・・の感が強い。

 「ワールド・トレードセンター」も生き埋めになった消防士の話だが、経緯や回想、気遣う家族など、現場以外の部分で「映画」になっている。そういう要素が一切なく、棺おけから一歩も出ないことがコンセプトだすれば、それを見せていくアイデアが足りなかったとしか言いようがない。

 セットに関する限り、低予算と言われた「CUBE」どころではない究極のローコストだ。俳優も一人、衣装も一着、結局最もコストがかかったのは冒頭のタイトル・デザインではないだろうか?