SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「エスター」

2009年10月29日 | 映画(ア行)
 女の子版の「オーメン」といった趣だが、良く出来ている。最近のハリウッド作品は鳴り物入りの大作より、地味に公開される小品の方になかなかの作品がある。

 心理的なサスペンスにホラー風味がまぶされているものオカルト色は皆無だ。三人目が死産だったとはいえ、すでに二人の可愛い子供に恵まれていてなぜ養子を迎えるのか、というような理由まできっちり描写されており、綿密な伏線で恐怖がジワジワと盛り上がる。

 R-15の制限付だが物語の中心になる家族の子供たちは幼く、血みどろの惨劇を撮影する現場が心の傷にならないのかと、そちらの方が気にかかる。

映画 「私の中のあなた」

2009年10月27日 | 映画(ラ行、ワ行)

 もっとも現代的なテーマを扱った意欲作で、家族愛のあり方を考えさせられる。

 難病の長女が必要とする理想的なドナーとして計画的に出産された次女、という驚くべき存在の主人公をアビゲイル・ブレスリンが演じる。母親がキャメロン・ディアス。

 ドナーとして切り刻まれる肉体を運命的に背負っているわけだ。その苦痛に対して反旗を翻し、幼い少女が弁護士を立てて親を告発する。

 どう決着するのか想像もつかずに見ていると、その背後の「深い理由」が見えてくる。

 「死」に直面した時、それを受け入れることが出来るか? それが自分の「死」である場合も、家族の「死」である場合も・・・という重い映画だが、家族の愛のあり方がなんとも美しく哀しい。

映画 「悪夢のエレベーター」

2009年10月22日 | 映画(ア行)

 内野聖陽、佐津川愛美、モト冬樹、斎藤工の4人が故障したエレベーターに閉じ込められてしまう。

 しばらくは面白く見ているものの、このまま話が続くのかと思い出す頃、物語がうねり始める。乗客の一人がある疑問に気付くことがターニングポイントとなるが、感の良い観客は既にその疑問を持っており、これは何かあるなとは思っている。

 コメディーかと思って見始めた映画がミステリーやホラーの様相を帯びてくる。クリスティーの密室ミステリーファンのサイコ娘が紡ぎだす妄想ですべてが成り立っている。

 確かに面白いのだが、映画的な何か鮮やかな手際が不足しているように感じる・・・と言ったら贅沢だろうか?

映画 「ATOM」

2009年10月14日 | 映画(ア行)

 慣れ親しんできた「鉄腕アトム」がアメリカ映画としてフルCGで甦った。

 日本語吹替え版を見たが、逆に英語版で見るほうが違和感があるかもしれないと思った。「アトム」を日本語で楽しむのは日本人にとってはあたりまえの光景なのだ。タイトルにはそうそうたる俳優陣の名前が出てくるが吹替え版では意味をなさない。

 ロボットのアトムが活躍する数々のエピソードは知っていても、そもそもの誕生秘話は未知の領域であった。今回はそのビギニングを教えてくれる。が、手塚治虫の原作のどの部分なのか、あるいはオリジナルなのかは分からない。

 とんでもない危機に見舞われた主人公を必死に応援するという悲壮感はなく、「鉄腕」だから何とかなるだろうと、家族ずれで子供が一緒でも安心して見ていられる。

 ロボット対ロボットの格闘シーンには「スターウォーズ」や「ドゥームズデイ」にも出てきた古代ローマのコロセウムのような設定が用意されている。

 後は実写版が製作されるのを待つのみだが、テレビ放送の黎明期、昭和30年代にはすでにそれがあった。

誰かいる・・・?

2009年10月13日 | 日常生活・事件

朝の早い時間、
方向によっては地下鉄もほぼみんな座れる。

後ろの方で大きな声で話している。
日本語ではない。中国語のようだ。

見ると、相手と隣り合って座れなかったのか
通路スペースをはさんで向かい合って話しているようだ。

降車駅で後方扉に向かうと、
まだしゃべっているが、その向い側には誰もいない {{{{(゜∀゜;)}}}}。

なれない国で暮らすストレスなのか、
あるいは他の人には見えない誰かがそこにはいたのか?

車内が空いて来たので、付近にいた人も避けるように
他の席に移動していた。

映画 「あの日、欲望の大地で」

2009年10月09日 | 映画(ア行)
 シャーリーズ・セロンと久々のキム・ベイシンガーが主演。しかし、同時に画面に出ることはないので共演とはいえないかも。

 現在と過去が何の説明もなく平行的に描かれる。しかも過去はある事件をはさんでその前後の時制が登場するので、3つの時間帯の話が進んでいることをまず理解しないといけない。

 見ているうちにこれがこの人の若い頃か、というような設定が分かってくる。親子2代にわたる典型的なメロドラマが凝った構成で展開する。

 が、分かりにくくするだけの、そんな必要があったのかと思ってしまう。語り口(構成)の謎解きを楽しむことで物語自体が面白かったと錯覚してしまいそうな気になる。

 監督のギジェルモ・アリアガは「アモーレス・ペロス」「21グラム」「バベル」の脚本家でいずれも凝った構成が持ち味だ。今回は自身が監督デビューも果たしているが「普通の映画」にした方が良い場合もある。

映画 「愛のむきだし」

2009年10月07日 | 映画(ア行)

 最近珍しい、途中休憩のある4時間の大作。

 しかも主演の西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラはいずれも知らない。安藤サクラは奥田瑛二の娘だそうだ。

 「愛の神話」とも言うべき壮大な話が盗撮、カルト宗教などのきわどい現代風俗とスプラッター描写の衣装をまといながら、一大エンターテインメント作品として成立している。

 飽きることなく一気に見せてしまう力技だが文句なく面白い。監督の園子温が前作「紀子の食卓」でも見せた「家族の崩壊と再生」をテーマにまたまた魅力的な作品を放ってくれた。

 梶芽衣子の「女囚さそり」が隠し味になっている。

映画 「子供の情景」

2009年10月05日 | 映画(カ行)

 アフガンの子供たちの日常を描くハナ・マフマルバフ監督19歳時の作品だそうだ。そら恐ろしい作品に仕上がっている。

 子供の無邪気な世界が描かれるのかと思っていたら、さにあらず。子供の世界は大人社会と表裏一体だ。主人公の女の子の涙ぐましいまでの努力の一日に戦争が影を落とす。

 学校に行きたいと思いつめた女の子が学用品を買うために、自宅でニワトリが産んだ卵を売りに行く。簡単には売れないし、半分は割れてしまう。

 ノートを買ってたもののたどり着いたのは男子校で、女子校は川向こうと言われてしまう。途中で戦争ゴッコをする子供たちに捕らわれ、ようやく着いた学校では・・・。

 子供たちは可愛いというより不気味だ。その理由は彼ら、彼女らの眼差しにある。基本的にその眼差しは「無関心」である。他人の痛みを理解しない、刺すような眼差しの中で子供たちは生きているのだ。

映画 「ドゥームズデイ」

2009年10月02日 | 映画(タ行)

 イギリスを舞台に、ウィルス感染から物語が始まるが「28日後...」「28週後...」のホラー系には走らない。

 感染地区が封鎖されて27年、生存者がいるらしいことが分かる。壁の外にもウィルス感染者が出たため、封鎖地区にワクチンを求めて潜入する部隊の物語だ。

 無法地帯と化した封鎖地区でのサバイバル・アクションの展開が見所となる。壁の中を率いるのがまるでパンク・ロック集団で、生贄集会はロックショーの趣だ。全体にジョン・カーペンター風、マッドマックス風かと思うと中世騎士が現れて古代ローマのコロセウム風死の闘技が繰りひろげられたりする。

 この混沌とした様式、既視感の奔流の中で凄まじいパワーのアクションが炸裂する。しかも主人公が女性、というところにエイリアンやターミネーターからの流れも合わさる。

 ファンにはたまらないカルト作品となるだろう。

映画 「重力ピエロ」

2009年10月01日 | 映画(サ行)

 伊坂幸太郎原作の同名小説の映画化で加瀬亮と岡田将生が主演。

 極めて高度なコミュニケーションが描かれる。発信する方も受信する方も相当に頭が良くなくては成り立たない。それに犯罪の味付けがあり、なぜそのような犯行が行われるのかというミステリー色が濃厚だ。

 しかしそこまで持って回ったやり方をしなくても、と一度思ってしまうとミステリーのためのミステリーの技巧が鼻に付くかも知れない。が、そう目くじらを立てずに素直に謎解きを楽しもう。これは兄弟愛、家族愛の物語なのだから。

 兄が泉水(いずみ)、弟が春、英語ならどちらも spring で、さらにハンサムな弟のストーカー女が春を追いかけるので夏子、といういかにも文学的な趣向だ。

 冒頭の加瀬亮のナレーションも原作の味わいを伝えていて物語世界に誘い込まれる。