SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画「冷たい熱帯魚」

2011年02月21日 | 映画(タ行)

 おそらく誰にも勧めることはないが、見なければ良かったとは思わない異様な力作。新宿の上映館は平日も満席だ。

 前作「愛のむきだし」で厳格な牧師を父親に持つ若者を西島隆弘が好演したが、その息子が別の形で成長したら本作の怪優でんでん演じる熱帯魚屋になっていたのかも知れない、と思わせる園子温ワールドだ。

 人間を解体、燃焼させて「透明」にしてしまうことに何の躊躇いもない、異常な夫婦の暴走に、為す術も無く取り込まれて蟻地獄に落ちるかのように家族が崩壊していく。凄惨ながらブラックなユーモアにまぶされて不思議な輝きを放っている。

 崩壊家族の父親を演じる吹越満は、こちらも近隣で小さな熱帯魚屋を営んでいる。

 でんでんの大熱帯魚屋従業員の女性たちは園作品に頻出するカルト教団風の怪しさを持っているが、今回はそちらの描写は殆ど無い。彼女たちを中心に据えたスピンアウト企画も期待できそうだ。

映画 「ウォール・ストリート」

2011年02月09日 | 映画(ア行)

 1988年に公開された「ウォール街」の続編。原題は、第1作が「WALL STREET」で、今回の続編にはサブタイトル「MONEY NEVER SLEEPS」が付いている。

 マイケル・ダグラスはさすがの貫禄で存在感を示す。第1作の証券マン役チャーリー・シーンがチラリと顔を出すが、こちらは陰が薄い。プライベートが影響しているのか?

 マイケル扮するゴードン・ゲッコーの出所シーンから始まるが、入所時に預けた当時の携帯電話の巨大さが年月を象徴する。

 今回の主演はシャイア・ラブーフで、マネーゲームの犠牲になった社主の復讐劇にゴードンの娘との結婚話が絡む。

 オリヴァー・ストーン監督作品としては珍しいハッピー・エンディングで、らしくはないが、後味が良い。

 高層ビル群の稜線を株価の上下に見立てたり、ラスト・クレジットのデザインも含めて、映像も楽しげに凝っている。

映画 「ウッドストックがやってくる!」

2011年02月04日 | 映画(ア行)

 他の多くの国では2009年に公開されている。その作品がようやく日本にやってきた!

 瓢箪から駒、のようなウッドストック・フェスティバルの誘致劇だ。町おこしのために無い知恵を絞っている寂れた郊外タウンが、一本の電話で史上最大の人を集めることとなる。

 転がりだしたエネルギーは止まらない。どこで何がどうなっているのか主催者側も正確には理解出来ていないだろうと思わせる。

 ミュージシャンのステージは一切出てこない。というよりそこには近づくことも出来ない人、人、人だ。愛を叫ぶヒッピーの群れにドラッグが混ざり、青春の熱気も手伝って夢のような陶酔と混沌の数日が過ぎ去る。

 ドキュメンタリーではなく、劇映画でよくこれが再現できたとアン・リー監督に脱帽。撮りたくて撮った雰囲気が楽しめる。

 60年代の青春が甦る。

映画 「愛する人」

2011年02月02日 | 映画(ア行)

 14歳で出産した母とすぐに養子に出された娘の、お互いに行方を知らない37年後が描かれる。

 生物学的に、共に過ごすべき時期を過ごせなかったことがそれぞれの心に歪な影を落としている。どちらも有能で美しく魅力的な女性なのに、対人関係となると尋常ではない扱いにくさを抱えている。

 アネット・ベニングとナオミ・ワッツの母娘が演技の火花を散らして圧巻だ。

 しかし、父親の影は薄い。というか、無いも同然だ。母娘が同性だから、というよりは10ヶ月を胎内で共有した絆のゆえだと思う。いくら男女同権が叫ばれても、これだけは男が持ち得ない、女性のみの特権である。

 お互いを心の奥底で想い続けたその事実が涙を誘う秀作。群像劇風にいくつかの母と娘の物語が語られ、絡みあう語り口も見事に決まっている。