おそらく誰にも勧めることはないが、見なければ良かったとは思わない異様な力作。新宿の上映館は平日も満席だ。
前作「愛のむきだし」で厳格な牧師を父親に持つ若者を西島隆弘が好演したが、その息子が別の形で成長したら本作の怪優でんでん演じる熱帯魚屋になっていたのかも知れない、と思わせる園子温ワールドだ。
人間を解体、燃焼させて「透明」にしてしまうことに何の躊躇いもない、異常な夫婦の暴走に、為す術も無く取り込まれて蟻地獄に落ちるかのように家族が崩壊していく。凄惨ながらブラックなユーモアにまぶされて不思議な輝きを放っている。
崩壊家族の父親を演じる吹越満は、こちらも近隣で小さな熱帯魚屋を営んでいる。
でんでんの大熱帯魚屋従業員の女性たちは園作品に頻出するカルト教団風の怪しさを持っているが、今回はそちらの描写は殆ど無い。彼女たちを中心に据えたスピンアウト企画も期待できそうだ。