SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「桐島、部活やめるってよ」

2012年08月30日 | 映画(カ行)

 おいしいドーナツのような映画だ。タイトルロールの桐島は、そのドーナツの中心。主役は不在なのだ。彼をめぐる、その周りの友人たちが紡ぎ出す群像劇になっている。

 桐島が部活をやめる、というのは噂だ。その理由も、真偽も本当のところは誰も知らない。その話が拡げる波紋を描く形になっている。

 桐島に最も近いのが彼の親友とガールフレンドである。何でも知っている、分かりあっていると思っていたが、実は彼らすら何も知ってはいなかった、というところに現代の人間関係の希薄感が漂っている。

 関係性的には薄い映画部の友人たちの活動がもう一つの核になっており、彼らが撮ろうとしているゾンビ映画の撮影がクライマックスになっている。

 この夏、ヒーローもの洋画に負けない作品の一つになっているが、映画オタク、特にホラー・ファンは、さらに面白く見ることができるだろう。青春時代のある特別の熱気が見事に表現されている。