SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「アイ・アム・レジェンド」

2007年12月26日 | 映画(ア行)
 ホラー映画だったんだ!

 事前に作品情報を入手する手段には事欠かないが、もし予告編しか見なかったらこの内容は想像できない。しかも予告にはウィル・スミスしか出てこないのだから、孤独を謳った文芸作あるいはサバイバル・アクションか、という程度の認識であった。

 地球最後の男、とか言っているので、そういえば昔チャールトン・ヘストンの「オメガマン」という作品があったな、とか思っているとそのリメイクだとか。実際は「オメガマン」がすでにリメイクで今回は3回目だそうな。

 で、この映画、早い話がゾンビ系のホラー映画なのだ。ただ、モンスターの造形は死者の生き返ったゾンビというよりは「ディセント」の地底系変異人種に近い。実際死んだわけではなくウィルスに感染した「病人」なのだから。

 廃墟となったニューヨークが舞台だがその背景は簡単な回想で描かれ、ラストの生き残りコロニーの出現までロールプレイング・ゲームの画面を見ているようにストーリーが進められる。

 大作の予感がありながら100分にまとめられたB級止まり感が拭えない。
 ただし、人間がいなくなったマンハッタンの映像は見ものだ。

映画 「ヘアスプレー」

2007年12月12日 | 映画(ハ行)
 最初から最後までハイテンションの、愛すべきミュージカル。

 60年代ファッションでタイトルデザインまで統一されている。歌も踊りも美しく楽しい。久々にサントラが欲しくなる作品だ。

 ストーリーや設定のリアルさに関してはやや甘さを残すが、のりのりのミュージカルでそんなことは言っていられない。むしろ人種差別という深刻なテーマを堂々と取り上げていることを評価すべきだろう。
 ただヒロインにとっては、自分がデブでテレビ局に差別されることとそう違わないレベルの問題のようだ。だから逆に、同じ立場の者として憤慨し、積極的な行動に出ているわけだけど。

 主役を若く無名の新人ニッキー・ブロンスキーに譲って、豪華共演陣が脇を固め、喉も披露してくれる。

それにしても本作最大の功績はジョン・トラボルタを母親に配役したことにあるだろう。思いついた人は偉い。敬意を表したい。

 もっとも、舞台が先にあった本作は88年にはジョン・ウォーターズ脚本・監督で一度映画化されており、その時の母親役ディヴァイン(男優)のイメージを下敷きに、かつそれに対向できるという条件で配役がイメージされたと思われる。

 ちなみにディヴァインは88年のインディペンデント・スピリット賞で助演男優賞にノミネートされているが、本作のジョン・トラボルタもアカデミー賞レースに期待が持てそうだ。

映画 「マリア」

2007年12月05日 | 映画(マ行)
 敬虔で清らかな作品だ。その分エンタテイメント性は薄い。

 「パッション」がその受難の現場を眼前で見せてくれたように、今度は神の子の誕生の場に観客を立ち合わせてくれる。

 民の期待を一身に集めて、クリスマスの夜イエス・キリストが誕生する物語は誰でも知っているので、処女懐胎に対する身内の批判があっても、救い主誕生の予言に怯えるヘロデ王が幼児虐殺を実行しても、無事聖夜が到来することに疑問の余地は無い。

 映画の中でも、何かあったら必ず神の使いが出てきて導いてくれる。そのため、虐殺隊がやってきても特にサスペンス演出は無く、淡々と追っ手を逃れてイエスは誕生する。

 主役のマリアはニュージーランド映画「鯨の島の少女」でマオリ族の少女を演じたケイシャ・キャッスル=ヒューズだ。どこかかつてのオリヴィア・ハッセーに似ている。
 そういえばオリヴィアもフランコ・ゼフィレッリ監督の「ナザレのイエス」でマリアを演じている。

 救世主の誕生を予感し現場を訪れる3賢人はコミカル・パートを受け持っている。
 身ごもったマリアが「生まれてきたら自分で救世主だと言うのかしら?」と言っているのもおかしい。

 カラー映像は色調が押さえられ、ほとんどモノクロームに近い。クリスマスを目前に少し純な気持ちになってみたい人にはお奨めだ。